ビールがおいしい季節、真っ只中。
実家や親戚のおうちに帰ったり、夏休みに友だちと海外旅行に行ったり、ビアガーデンでわいわいしたり。本来であればビールがおいしいシチュエーション盛りだくさんの季節ですが、去年と同様今年も「夏×ビール」のポテンシャルを100%楽しみ切ることはできなさそうです。
であれば、ほかの方法でビールをおいしくさせようじゃありませんか。
夏だ!ビールだ!サマーリーディングだ!
こんにちは。
Mukai Craft Brewingの髙羽 開です。
新米ビール職人のコラム「拝啓、ビール職人になりました。」、第10回のテーマは「新米ビール職人のサマーリーディング・リスト」です。
サマーリーディングは、その名のとおり、夏に本を読もうって習慣です。日本では読書=秋というイメージがあるかもしれませんが、欧米ではサマーリーディングが文化として根付いていて、夏も立派な読書の季節です。毎年、オバマ元大統領やビル・ゲイツといった著名人や企業のトップ、さまざまなメディアがこの夏読むべき「サマーリーディング・リスト」を発表しています。
最近では、日本の本屋さんや雑誌でもサマーリーディングの特集が組まれるのを目にする機会も増えました。
「ビールと読みもの」でいうと、ポップカルチャーの総合雑誌『BRUTUS』や『Discover Japan』をはじめ、最近いろんな媒体でビールをテーマに特集が組まれることが多くなりました。
『BRUTUS』の表紙にも書いていますが、ビールって改めて語ることがたくさんあるよなぁと思いましたし、雑誌を見てこれまで知らなかったビールの魅力に触れ、ただでさえ好きなビールが最近もっと好きになりました。
そんな気づきをもとに、今日はこのコラムを読んでくださっている方がもっとビールを好きになる、もっとビールがおいしくなる「サマーリーディング・リスト」をつくってみました。
ブルワー(ビール職人)になって半年、これまで読んだ約50冊のビール関連本の中からおすすめの10冊をピックアップしています。方向性は、クラフトビールに興味を持ち始めた方が読んで楽しめる本として選びました。
それでは、紹介していきます!
『ビールは楽しい!』/ギレック・オベール
1冊目からこんなこと言うのもどうかと思いますが、これさえ読めばOKです。「絵で読むビール教本」の副題通り、わかりやすい絵とともに、ビールの選び方や歴史、味わい方、ビアスタイルや産地、食材との組み合わせなどなど、これさえ知っておけば数倍ビールが楽しくなる、というくらいビールの魅力が幅広く網羅されています。ちょっと大きい本のサイズも相まって、歴史の資料集を読んでるような懐かしい気持ちも感じられます。ビールの入門書として持ってて損はなし!という一冊です。
『大日本麦酒の誕生』/端田 晶
大日本麦酒(サッポロビールやアサヒビールなどの前身)で社長を務め、「日本のビール王」とも呼ばれた馬越恭平さんの逸話を軸に、明治中期から昭和初期のビール産業史を紹介している一冊。僕たちが当たり前のように飲む(日本の大企業の)ビールの背景には、一度は聞いたことがあるような名だたる財界の大物たちの戦いや協力といったドラマがあることを知ることができます。著者が、サッポロビールで長年ビール文化の語り部として活躍された端田さんということもあり、紙芝居や落語を聞いているような読み心地でどんどん読めちゃいます。
『図説 ビール』/キリンビール
豊富な史料や図、写真と一緒にビールの種類や製造方法、歴史などなど、幅広くビールについて学べる一冊。エジプトやメソポタミアでのビール誕生から、欧米でのビール文化の発展、日本とビールの出会いから国民酒へと広がる過程が、めちゃくちゃわかりやすく記されています。個人的には、6章からなる本文の間にある「コレクション」コーナーがおすすめです。明治以降のラベルや広告(ポスター)、ノベルティ、世界のビアマグなどのコレクションが紹介されていて、「かわいい」と「おしゃれ」と「すてき」の連発です(語彙力)。
『日本ビール缶大全』/長谷川 正人
ビール缶を9000缶も保有する日本有数のコレクターによる、最初から最後まで「ビール缶」という偏愛に溢れた一冊。1958年にはじめて国内で缶ビールが販売されて以降約60年の間に販売された缶が、年代順に約800種類も紹介されています。読まれる方の年齢によっては、懐かしさが止まらなるかもしれません。ビール缶を通じたタイムマシンの旅のような一冊で、コレクション欲があまりない僕でも終始わくわくが止まらない読書体験でした。
『ビールでブルックリンを変えた男』/スティーブ・ヒンディ
アメリカのクラフトビール市場をリードし続けるニューヨークの『ブルックリン・ブルワリー』共同創業者であるスティーブ・ヒンディによる自伝的起業本。世界有数の都市・ニューヨークにありながらも当時荒廃したエリアだったブルックリンにブルワリー(醸造所)をつくり、ビールを通じて街に活気を取り戻した奇跡のような物語です。ブルワーになることを心に決めて初めて読んだビール関連本がこの本だったのですが、著者のビールや経営に対する哲学や、ビールが持つ人や地域を変えうるその可能性に心を動かされました。
『ビール語事典』/リース 恵実
ビールにまつわるさまざまな言葉が可愛らしいイラストと豆知識とともに50音順で紹介されている辞典的一冊。読み終わって気づいたんですが、『ビール女子』の元編集長でもある瀬尾裕樹子さんが本の監修をなさっています。ビアスタイルや文化、歴史に関する用語はもちろん、アインシュタイン、オバマ大統領、ゲーテなど人とビールのエピソードや、ビールにまつわる雑学まで、幅広く紹介されています。ちょっとした移動時間や待ち時間に少しずつ読み進められるのも個人的に嬉しいポイントでした。
『アンソロジー ビール』/PARCO出版
「いろいろな詩人・作家の詩や文をある基準で選び集めた本」という意味の言葉「アンソロジー」の名の通り、総勢41名の作家が書いたビールに関するエッセイや漫画を集めた一冊。ビールのまわりにある人やモノ、生活、情景を描く名文家たちの文章に触れると、これまでとは少し違った感性を持ってこの夏のビールが楽しめるかもしれません。あと、読むと100%ビールが飲みたくなります。
『ビールの歴史』/ギャビン・D・スミス
1万年前の誕生以来、ビールと人類の関わりを描いたボリュームたっぷりの一冊。個人的には第7章の「ビールと文化」が特におすすめです。シェイクスピアやエリザベス一世などなど、歴史上の作家や詩人、世界の指導者たちのビールに対する愛の言葉を、時代を超えて味わう追体験がとても楽しかったです。ビールの地域性や人間社会とのつながりの強さを知ることができるとともに、ビールの多様性が開花した今の時代に生まれたことを改めて嬉しく思う一冊です。
『世界お酒MAPS イラストでめぐる80杯の図鑑』/ジュール・ゴーベル=テュルパン、アドリアン・グラン・シュミット・ビアンキ
ビール以外のお酒もちょっと知りたいなぁというほんの浮気心で買ってみたら、予想をはるかに超える大満足感が得られた一冊。「この世には、まだまだ知らない、すばらしいお酒がこんなにたくさんあるのか...!」って絶対になります。小さいころに昆虫図鑑を読んだときに感じたあの純粋無垢な知的好奇心と高揚感が、お酒という全く異なる対象に感じていることに気づき、28歳になっても子供心がくすぐられるって楽しいな、と思いました。ビールも9種類載ってます。
『発酵文化人類学』/小倉ヒラク
世界中で育まれる発酵文化の魅力を伝える「発酵デザイナー」の小倉ヒラクさんが「発酵」を文化的に紐解いてその魅力を伝える一冊。ビールに関する記述は多くありませんが、発酵食品のひとつであるビールをビールたらしめている「微生物」と人との関わりや、人類が長年培ってきた発酵とともにある暮らしの奥深さに感動しました。発酵を知れば知るほど、ビールの世界もより楽しくなること間違いなしです。
以上、新米ビール職人が選ぶおすすめビール本10選でした。
ビールを楽しむのに難しい知識は必要ありませんが、知ればビールがもっとおいしくなる、そんな魅力をビールはたくさん持っています。
冷蔵庫に冷やしたビールがさらにおいしくなれば、きっと、この夏がもっともっと楽しくなるはずです。
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ここまで読んでくださってありがとうございました。
今週もみなさんがおいしくビールが飲めることを願っています!
それでは、また次回。
Cheers(乾杯)!