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【レビュー】平穏な日常を奪われた男が自らの尊厳の限りを尽くして立ち上がる―『ランボー ラスト・ブラッド』


ベトナム帰還兵が引きずる深刻な心の病と、世間からの冷たい差別を描いた1作目から37年の時を経て作られたシリーズ5作目。


ここにきて5作目を出す意味は何なのか?そもそもランボーはもうお爺ちゃんじゃないのか?


そんな高齢で戦えるのか?そもそも今さら何と戦うのか?


そんなあらゆる疑問は、全てランボーが仕掛けた爆弾が木っ端微塵に吹き飛ばしてくれる。



初めて家族と呼べる心の拠り所となる存在を得たランボーが大切な人のために立ち上がる。


確かに物語が少し進むと、誘拐された娘を奪回しようとする元工作員を描いたリーアム・ニーソン主演の『96時間』にも内容がやや重なる気がしたが、そんな思いも束の間、やはりランボーはランボーでしかなかった。


他者の理解を得ながら幸福に生きることには不器用なのに、皮肉にも人を殺めることにかけては誰よりも器用な男、ランボー。


シルヴェスター・スタローンはそんな不器用な男がハマりにハマる。



スタローンを一躍有名にした『ロッキー』シリーズでも、不器用なボクサーの生き方と哀愁が世界中の涙を誘った。


もっとも、ロッキーが続編が作られるたびにスターとしての存在感を強めていき当初の不器用さが薄れていったのと同様に、ランボーも2以降は当初の差別の被害者としての側面は薄れていき、場所こそ移しながらも最強の傭兵として大活躍していく。


そんな流れの中で作られた5作目にあたる本作、ベトナム戦争が当時の人々に色濃く落とした暗い影という社会性あるテーマからは当然に乖離しており、批評家たちはこぞって低い評価を寄せたという。




しかし!声を大きくして言いたいのは、この映画の監督は、あるいはスタローンは、観客が何を見たいのかを完全に分かっているということ。


そもそもランボー5作目を観たい人間、観ようとする人間の多くは、映画というよりランボーその人を見たいのだ。


そういう意味で、本作は高齢になったとはいえそのランボーすぎるほどのランボーを確実に味わうことのできる極上の映画に仕上がっている。


これは正直言って予想外だったのだけど、実際劇中のあるシーンとエンドクレジットで合計2回泣いてしまった。


そしてまた、その合間に展開する久々に見るランボーの怒涛の”狩り”は、「プレデターの一人称視点か!」とツッコミたくなるほどの獰猛さに溢れていて、少し前に流したばかりの涙を乾かしてしまうほどに身体の温度を上げてくれる。


 


『ランボー ラスト・ブラッド』 あらすじ


いまだベトナム戦争の悪夢にさいなまれる元グリーンベレー、ジョン・ランボー。孤独な戦いを経て、祖国アメリカへと戻ったランボーは、故郷アリゾナの牧場で、古い友人のマリアとその孫娘ガブリエラと共に、“家族”として穏やかな生活を送っていた。しかしガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致され、事態は急転する。愛する“娘”を救出するため、ランボーは元グリーンベレーのスキルを総動員し、想像を絶する戦闘準備を始めるのだった――。


■監督:エイドリアン・グランバーグ

■脚本:マット・サーアルニック&シルベスター・スタローン

■キャスト:シルベスター・スタローン、パス・ベガ、セルヒオ・ペリス=メンチェータ 他

■提供:ギャガ、ポニーキャニオン

■配給:ギャガ


© 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.


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