茨城県は29日、同県大子町の「豊田りんご園」で試食用に提供されたリンゴを食べた12人が、腸管出血性大腸菌O157による食中毒に感染したと発表。
トレンドニュースキャスター取材班は、担当課から詳しい話を聞いた。
カッターで16等分
茨城県生活衛生課によると、今月5日(日)に豊田りんご園を訪れた12人は、リンゴ狩りの前に、試食用のリンゴを食べた。
リンゴは、ツル割れや形が不揃いなどのいわゆるB級品で、カッターで16等分にカットされていたという。
このリンゴを食べた3~80歳代の男女12人が、腹痛や下痢の症状を訴えたため、保健所が検査したところ、腸管出血性大腸菌O157による食中毒と断定。
2人が集中治療室
現在3人が入院しており、6歳の男児と70代女性が、集中治療室(ICU)で治療を行っている。
生活衛生課の担当者は、トレンドニュースキャスターの取材に「試食させる作業工程で、何らかの形で汚染があったと考えられる」と話す。
リンゴをカットするカッターについては、毎日消毒を行っているという。
行政指導を実施
保健所は15日、同園に対して試食の停止や、施設の消毒の徹底などの行政指導を実施。
現在も、試食は再開されていない。
なお、りんご園などの一般的な観光農園は「採取業」にあたるため、保健所の営業許可はいらないそうだ。
ただし、アップルパイなどの加工品を提供する場合は、営業許可が必要。
感染力の強い菌
腸管出血性大腸菌O157は、毒力の強いベロ毒素を産生する大腸菌の一種で、激しい下痢や腹痛などを引き起こす。
抵抗力の弱い乳幼児や小児・高齢者が感染すると、腎機能や神経学的障害などの後遺症を残す可能性のある溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発するなど、重症となる場合もある。
また、O157は感染力の強い菌だ。
多くの食中毒は、感染のために100万個以上の菌が体内に侵入する必要があるのに比べ、O157はたった50~100個、体内に侵入するだけで感染が成立するといわれている。
予防策としては、衛生的な食材の取り扱いと十分な加熱調理、手洗い・消毒を徹底することが重要だ。