普段何気なく飲んでいる「薬」だが、実は驚くほど長い期間や多くの費用をかけて開発していることを知っているだろうか。
今回は、病院で処方される薬が、販売されるまでについて解説する。
まずは化合物を製作
薬を新しく作るとなると、まずは疾患や症状に対して効果がある化合物を作ろうとする。
これまで薬にするために、膨大な数の化合物が作られてきた。
そのデータを元に、次にどのような化合物を作るのかを決めるのだ。
化合物ができれば、安全性を確かめるためにさまざまな研究をする。
そしていよいよ、安全性と効果がありそうと分かれば、人に投与し始めるのだ。
ちなみに新たな化合物を作っても、9割以上はこの段階でドロップアウトしてしまう。
安全性の確認
次に、健康な人に薬を投与する試験を行う。
この段階では、薬の副作用や安全性に問題がないかを確認する。
しかし、少人数の健常な人に試すだけなので、副作用のデータとしては限りがある。
この試験の目的は、大きな副作用がないかどうかを確認することなのだ。
少人数の患者に投与
大きな安全性に問題がなければ、次は、効果が出るだろうと予想される患者に投与する試験を行う。
ここでもまだ、少人数の患者に限る。
また、ある程度元気な患者にしか投与しない。
この段階では、お薬の投与量や副作用、効果などを検証する。
通常の場合、プラセボと呼ばれるまったく効果がないお薬を飲んだ患者や、現時点ですでに販売されている同じ効果のお薬を飲んだ患者と、開発したお薬を飲んだ患者とを比較して研究を行う。
この段階でさらに多くのお薬が、ドロップアウトしてしまう。
特に、現在すでに使われているお薬よりも効果がある、ということをクリアするのが難しいのだ。
患者に投与(大人数、長期間)
以上の試験で、効果がありかつ安全性にも問題がなさそうであれば、次の試験にうつる。
大人数の患者にお薬を投与し、数年間かけて同じように比較するのだ。
効果がすでにあるお薬よりも高く、安全性も問題なければ、お薬を国に申請して許可が下りてやっと販売となる。
このようにひとつのお薬が開発され販売されるまでは、長い時間と労力がかかっている。
開発者の思いを少し感じながら、お薬を飲んでほしい。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。