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【不朽の名作】南極ロケなど空前のスケールで作られた「復活の日」


 先日、インフルエンザに苦しめられている時にふと、1980年公開の『復活の日』の存在を思い出した。という訳で今回はこの作品を紹介する。

 同作は日本SF小説界の大家である小松左京が64年に発表した小説を原作とする作品である。当時から既にハイリスクなものとなっていた、海外ロケを含む、巨額の費用を投じた邦画の大作で、角川春樹事務所とTBSが共同製作。東宝が配給を担当し、深作欣二監督がメガホンをとっている。

 ジャンル的にはウイルスパニック系の映画で、この作品では、MM-88という生物兵器により変異したインフルエンザウイルス「イタリアかぜ」が人類を存亡の危機に追い込む事になる。このインフルエンザウイルスがかなり強力なものとなっており、感染すると短期間で肺炎に発展し、人体を死に至らしめるという、おそろしい伝染病。さらに、劇中の描写では人畜共通の伝染病のようで、あらゆる哺乳類に加え、鳥類も感染しているような描写も見られる。

 しかし、このウイルスにも弱点があった。極寒地だとウイルスの活動が極端に落ちると言う点だ。という訳でこの作品はウイルスの難を偶然逃れた、各国の南極観測隊が物語の中心になる。

 なんとこの作品では、後の『南極物語』でも断念した南極ロケを敢行している。また作中に登場する潜水艦も、旧式ではあったが、チリ海軍の協力により本物を使用しているなど、色々とスケールがでかい。人類が死に絶えた街の演出などもこだわっており、さすが角川春樹氏が一番勢いのあった時に企画した作品だ…。

 さて、邦画で海外ロケをすると必ず問題となるのが、ただ行って現地の絵を撮っただけという、大味な大作になってしまう点だ。どの作品とは言わないが、とあるイタリアの港湾都市を扱ったアレとか、意味もわからず突然万里の長城に行くアレとかだ。この作品は、そこはちゃんと意味あるシーンになっているものが多い。特に南極ロケの風景はかなりいい。ラストのマチュピチュは必要だったかどうかは定かではないけど…。

 また、とりあえず外国人俳優を登場させて多国籍感を出そうというのも、邦画の大作では残念なものになってしまうことが多いが、その部分でも、この作品はかなり頑張っている。各国の観測隊が設立した、南極連合会議の会議風景などで、英語、ロシア語、スペイン語などが飛び交うシーンはかなり良い雰囲気だ、まあ外国人俳優もジョージ・ケネディやオリヴィア・ハッセーなど有名どころ起用しているので、その辺の力が大きいのだろうが。

他にも山積みの死体を焼却処分するシーンや、5歳の子供が他の家族が全滅した後に、拳銃自殺することを無線で伝えるシーンなど、パンデミックに関連するショッキングなシーンもあり、他の伝染病系作品よりも危機感が伝わる描写も多い。

 しかし惜しい部分も多いのもこの作品の特徴だ。後半こそ、草刈正雄演じる、南極観測隊員の吉住周三を中心としてストーリー展開になるのだが、前半は各国がパンデミックで崩壊していく様が描かれる群像劇のようなものとなっており、どの話に集中していいのか、時系列も前後するので混乱することが多い。また、世界が崩壊直前になるまで、南極観測隊の存在をアメリカ大統領ですらすっかり忘れている部分などもツッコミどころとなっている。あと、色々短気を起こしがちな部分も気になる、南極にしか人類がいなくなったかもしれないからといって、わずか8人の女性スタッフに種の保存のために、男女比が100:1のような状態で、計画出産をやらせるのはどうなのだろう。南極の食料事情を考えれば、他の極地に生存している人類の可能性を信じて、数年くらい待った方がいいのでは? まあ、普通の作品では隠しがちな部分にあえて言及している部分を評価すべきか。

 さらにこの作品は、人類が南極で生存してめでたし、めでたしでは終わらない。「バードミサイルをぶち込んでやる!」と年中言っているガッチャマンのコンドルのジョーのようなノリで、核ミサイルをぶっ放したがっていた、アメリカ本土のガーランド将軍が、ソ連に向けて「ARSシステム」という核兵器の相互確証破壊システムを起動してしまうのだ。このシステムはよく米ソ冷戦時代の創作物に使われた設定だが、相手国から核攻撃を受けた場合、中央機関の機能が麻痺していても、振動などを感知して、報復の核ミサイルを飽和発射するという設備だ。

 このシステムがホワイトハウスの地下にあり、吉住がアメリカのカーター少佐とシステムを止めに行くことになる。ここでも、全く地震が起きないワシントンDCにたまたま大地震が起きて、ARSシステムが誤作動を起こす可能性が出てきたり、ソ連も同様のシステムを起動させており、アメリカの南極基地までその攻撃目標に入っているなど、強引すぎる部分が気になると言えば気になる。まあ、それでも俳優の演技で強引さを感じないほど緊迫したシーンにはなっている。

 このラストに向けたシーンで初めて「イタリアかぜ」のワクチンが登場するのだが、その製造方法の説明で、最後のオチでワクチンじゃないものに地球の「イタリアかぜ」が除菌されたことが暗に示唆されている。まあオチはどうなるかは観て確かめてもらいたい。個人的には、この世界はその除菌により、その後は、生き残った南極以外の人類が、モヒカン姿で「ヒャッハー!」する世界になるんではないかと思っている。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

【記事提供:リアルライブ】
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