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【不朽の名作】とんねるず出演のギャグテイストなウルトラマン「ウルトラマンゼアス」


 1996年、長らく新作が公開されていなかったウルトラマンシリーズに新しい動きがあった。ひとつは96年6月から翌年の8月までテレビ放送された『ウルトラマンティガ』。もうひとつが96年3月に劇場公開された『ウルトラマンゼアス』だった。今回はこの作品を紹介する。

 本作の大きな特徴は、シリーズ史上初の企業タイアップ型のウルトラマンであるという点だ。元々は出光興産のガソリンブランド名「ゼアス」の名を冠したCMキャラクターとして誕生したウルトラマンである。当初はCMでの登場のみだったが、その後新規のシリーズとして劇場作品化がされることに。これは、『ウルトラマン80』以来16年ぶりの国内制作の新作のウルトラマンとなった。

 キャストは当時、出光がとんねるずの番組『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)でスポンサーをしていたことと、同番組で「仮面ノリダー」のようにパロディーキャラクターでゼアスを登場させようという計画もあったということで、大河内神平隊長役を石橋貴明が、小中井仏吉副隊長役を木梨憲武が演じるなど、主要キャラにとんねるずの2人が配役されているのが特徴だ。さらに、主役であるウルトラマンゼアスの人間体・朝日勝人は、とんねるずのマネージャーである関口正晴が演じている。マネージャーとはいっても、ズブの素人という訳ではなく、アマチュアを積極的に名物キャラにしていく、当時のとんねるずの番組方針により、みなさんのおかげですでの番組露出は結構多かった。

 作品の特徴としては、制作が始まった当初に正統派シリーズとして制作計画のあった『ウルトラマンネオス』との差別化を図るため、コメディー色が非常に強いものとなっている。約50分間続く長尺のコントという感じだ。はっきり言って作品としての出来は、映画とテレビドラマという制作形態の違いを考慮しても、SFの賞として権威のある星雲賞の映画演劇部門・メディア部門を、特撮として初めて受賞した同時期の新作『ウルトラマンティガ』と比べると、遥かに見劣りするものではある。特に、とんねるずのコントを意識した過剰な演技は所々イラっとくる人もいるだろう。しかし、それまでのウルトラマンでは描くことのなかった、ダメダメな主人公像というのを強調している点では見所がある。

 ゼアスはキレイ好き、というか潔癖症のヒーローということになっており、変身アイテムも電動歯ブラシで歯をキレイにしてからではないと変身できなない。しかも、技の習得も不十分で、満足には戦えないということで、時々個人的に修行などもしている。だが、その光線技の修行中に体が汚れただけで修行を中断してしまうほどのダメっぷりだ。その潔癖症を敵である鹿賀丈史演じるベンゼン星人につけこまれて苦戦するのだが、そこから立ち直るのも、気になる女の子、星見透隊員にはげまされてという単純ぶり。それまでシリーズのウルトラマンがもっと壮大なテーマで苦悩や葛藤をしていたのと比較すると、とんでもなく小さい物事で一喜一憂しているのだ。このヒーローとしてはダメとも思える半人前の要素が、より親近感の沸くキャラクター像を作り上げている。

 また、今回のこの作品の秘密基地の設定もなかなか良いかと。ウルトラマンシリーズでヒーローを補佐する立場の防衛隊はそれぞれ政府や国際機関の特務組織となっており、基地もその組織専用の施設がある。しかし、この作品の組織「超宇宙防衛機構Mydo」では、スポンサーの都合上、出光のガソリンスタンドに偽装している。なんでキレイ好きのゼアスが、油を扱うガソスタに勤務しているのかという疑問はさておき、この設定は、仮面ライダーシリーズに登場していた「親父さん」こと立花藤兵衛が作り上げた少年ライダー隊に通じるものがあるのではないだろうか。シリーズ中、少年ライダー隊の施設は喫茶店やスポーツ用品店など、様々な店舗に偽装していた。この、なにかに偽装した秘密基地という設定は、メインユーザーである子供の興味を引くには十分な要素だろう。

 加えて敵に残忍性があまりないこともコメディー作らしい部分だろう。鹿賀丈史がノリノリで変なキャラを演じている。ゼアスが人間の姿・朝日として勤めているガソリンスタンドに吸殻をぶちまけにきたり、朝日の顔に油を塗りたくるなど、ちょいちょい嫌がらせをして帰って行くシーンがなかなか面白い。

 他の注目すべき点としては、初代ウルトラマン演じた黒部進を始め、小林昭二や二瓶正也、毒蝮三太夫、桜井浩子など『ウルトラマン』の主要キャストがカメオ出演しているところだ。特に毒蝮は、怪獣のせいで干上がった湖を「カラカラに干上がった、ババァみてぇな湖」と評し、ついでにMydoまでも口汚く罵るレポーター役として登場しており、『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBSラジオ)で発揮している毒舌キャラまで網羅するというサービスぶり。登場は一瞬ながら爆笑シーンを提供している。

 ちなみに、ゼアスは『ウルトラマンゼアス2 超人大戦 光と影』という2作目の作品が翌年に公開されており、この作品では所々で、過去シリーズとの連続性が示唆されている。このままシリーズが続けば過去のシリーズのウルトラマンとの共闘や修行のシーンなども用意されたのかもしれない。残念ながら、その後続編は作られず、そういったシーンを実現したのは2006年4月から翌年の3月までテレビ放送された『ウルトラマンメビウス』だったが。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

【記事提供:リアルライブ】
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