【バラエティ黄金時代】全723回の平均視聴率21.4%! 驚異的な数字を叩き出した『なるほど!ザ・ワールド』
今年2月28日付けで、フジテレビの益田由美アナウンサーが定年退社した。同局で女性アナウンサーが定年したのは初めてだ。早稲田大学出身、エリートアナウンサーだった益田さんのその名を広めたのは、『なるほど!ザ・ワールド』(フジ系)。1981年に、愛川欽也&楠田枝里子の絶妙な司会者でスタートした、クイズバラエティ番組だ。
世界中の話題を、現地に派遣されたリポーターがクイズ形式で紹介。海外クイズ番組のパイオニアと呼ぶにふさわしかったが、同時に、愛川と楠田によるスタジオ展開、ENGカメラ(フィルムを伴わない、ビデオカメラとレコーダーの一体型)を使った高性能で最先端な映像、レポーターの体当たり取材も魅力だった。先の益田アナが“ひょうきんアナ”の愛称で親しまれたのも、物おじしないレポートが共感を呼んだからだ。
家族団らんで見られる番組だけあって、およそ15年、全723回の平均視聴率は21.4%という驚異的な数字。初回こそ1ケタだったが、第9回目で早くも20%超えを果たした。最高視聴率は、83年12月に叩き出した36.4%。その前月から18週連続で30%台を突破している。
国民で知らない人はいないというほどのおばけ番組だったため、流行語も生まれた。そもそも、愛川が「な〜るほどザ」と発したあとに、楠田が「ワールド」と続けるタイトルコールからして、当時は誰もが知っていた。また、やや高めの声で「楠田枝里子です!」と自己紹介するものまねも、お笑い芸人を中心にはやった。
番組オンエア期間中にはじまった『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)で、愛川が広めたと思われがちな挨拶「おまっとさん」も、“なるほど”のほうが先。また、解答者チームが不正解を出すと、愛川が解答机を叩きながら「はい、消えた」と口にするのも、お決まりだった。
先の益田アナしかり、多くのスターを輩出したのも大きな特徴だ。意外なのは、明石家さんま。全国的知名度が浸透しだしたころ、当時のアイドルだった高田みづえをパートナーにして、準レギュラー出演していた。さんまは、みずえが大人気力士の若島津(当時)と交際しているのを知っていたが黙っていると、さんまとみづえの熱愛報道が出た。真実を明かせないさんまは、若島津から冷ややかな視線を浴びながら、悶々としていたという。
国内外のレポーターには、いかりや長介(故人)や安達祐実、泉ピン子や堺正章、松坂慶子、デーモン小暮、八代亜紀など、ジャンルにとらわれない面々が挑んだ。みのもんたにいたっては、国内取材の常連で、番組ナレーターも担当していた。
そのナレーションも、豪華だった。平常時は、アニメ『ドラゴンボール』の孫悟空の声優・野沢雅子が務めていた。特番では、国民的アニメ『サザエさん』のサザエ役・加藤みどりが担当して、交代でおこなうこともあった。
一般人として出演していたのは、藤原紀香。同番組は途中から旭化成の1社提供になったが、視聴者からのハガキ募集を告知する際、数秒だけキャンペーンガールがアップになった。このうちのひとりが、藤原だった。当時、旭化成とアサヒビールのイメージガールも兼任していたが、売れるために必死だった。
番組史上もっとも悲しいオンエアとなったのは、85年。日航ジャンボ機墜落事故がおこった翌日の8月13日は、「200回記念」が放映された。この収録には、同事故に巻き込まれ、番組にほぼレギュラー的に出演していた坂本九が、妻の柏木由紀子と一緒に出演していた。制作側は、安否がつかめない坂本の出演シーンを検討したが、事前収録であるテロップを入れて、あえてそのまま放映した。最後に、放映に踏みきった経緯を文章で説明。「坂本九さんの無事をお祈りします」というコメントを寄せた。その翌日である、坂本の訃報が伝えられたのは…。
時代の変遷とともに、VTR、海外、現地からのおもしろルポが当たり前になり、より新しいものが希求されたことによって、“なるほど”はその使命をまっとう。開始から15年弱で華々しく散り、その後、同枠はドラマ枠に切り替わった。それでもなお、“復活してほしいバラエティランキング”で、上位を占める。愛川が逝去した今、完全再現は不可能だが、昭和から平成にかけて、同番組が燦然と輝いていた記録だけは色あせない。
(伊藤雅奈子=毎週木曜日に掲載)
*画像イメージ
【記事提供:リアルライブ】
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