
花組トップ永久輝せあが、兵庫・宝塚大劇場で、主演ミュージカル「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」に臨んでいる。1992年のウィーン初演以来、世界各国で上演される名作。宝塚では18年月組以来8年ぶり、花組では14年以来12年ぶりの上演で令和では初。エリザベートは、トップ娘役星空美咲。主演の永久輝は開幕前にインタビューに応じ、思いを語った。宝塚公演は10月17日に初日を迎え、11月22日まで、東京宝塚劇場は12月19日~来年2月7日。
◇ ◇ ◇
★念願かない「嬉しい」
念願がかなった。
02年花組、春野寿美礼主演の映像を見た永久輝が宝塚人生を歩むきっかけとなり、「いつか一度は出てみたい」とあこがれた作品。トップとして、死を象徴する黄泉(よみ)の帝王トート役に挑むことを「うれしい」と素直に喜んだ。
もちろん、プレッシャーもあった。しかし、前夜祭でファンの前に姿を見せてから、初日の幕を開けられたことは大きかった。「自分の中で糧にはなったかなと思っております」。過去にトートを演じた一路真輝や明日海りおからのメッセージも受け取った。
★「魔力的な魅力ある」
ファンのエリザベートに対する熱量の強さも「すごく感じました」という。宝塚では1996年、一路のサヨナラ公演として初演。以来、全5組で10回演じられた宝塚を代表する作品のひとつ、その魅力を2点あげた。「まず1つは音楽的なすばらしさ。毎日、音楽の中に身を置いていることに幸せを感じる。私もファン時代、何回も何回も見て、口ずさんだり、夢中になってしまう魔力的な魅力がある」。
11人目のトートを演じるにあたって、歴代のトートを確認。「どの方も魅力、良さがあって、それが生きるお芝居をされてトート像を作られている。トート役に限らず、キャストが変わっても、その人の演じられる個性によって見え方も雰囲気も違う。その面白さがもう1つの魅力かな」と語った。
★星空とウィーン訪問
エリザベートを演じる星空とウィーンを訪問。その際に「今までの歴代の方々がこう演じてたからとか、こういうふうにやるべきものだからととらわれすぎず、『1つの作品として丁寧に作っていきたいよね』という話をした」と明かし、「1つのミュージカルとして取り組んでいくというか、歴史はあるんですけれども、そのプレッシャーを感じすぎず自分たちで生んでいく感覚を大切にしたい」。永久輝、星空コンビだからこそのエリザベートを生み出すつもりだ。
組子の作品に対する熱量も心強く感じており、「すごく前のめりにお稽古しているので、私からあえて言う必要はないなと思いました。私が思うエリザベートにしていこうというよりも、今の花組のエリザベートなので、出演者みんながどうとらえて、どうチャレンジしていくか。私が方向性をガツッと示さなくてもいいのではないか」と俯瞰(ふかん)して見ている。
潤色・演出を手がける小池修一郎氏からは「少し繊細な部分だったり、神秘的なイメージを感じるから、ひんやりした感じとか、少しウェットな感じとかを意識しながら手を使ったり、目線を動かしたり、存在してみたらいいかもしれないね」とアドバイスをもらったといい、“永久輝流”トート像を模索し続ける。
★青みがかった髪意識
ビジュアル面でも、25年の大劇場公演「悪魔城ドラキュラ」で演じたアルカードとは違った少し青みがかった髪を意識しており、「ファンの方には自分の新しい姿を楽しんでいただきたいという思いはいつでもあるものなので、同じじゃつまらない。新しい自分にも出会いたいですし、新しい姿でお客さまの前に立ちたいという気持ちもあるので、同じじゃもったいない」とこだわりを見せた。
これまで宝塚の男役として、ここまで自信に満ち、すべてを見通しているかのような男性像は「私がやってきた役の中ではあまりなかった」と話しながらも、稽古や星空とのウィーン訪問などを通じてトートへの理解を深める中で、トートを“死”という概念ではなく、“キャラクター”として受け止めた。
「できるなら偉大なる愛、セリフの中でも『ウン グランデ アモーレ』というものがあるように、愛なんだなと思っているので、恐ろしい部分ももちろんあるんですけど、その愛の部分。“死”というのが本当は安らぎの場所だったりする温かい場所というところに行き着けたらいいな」と思い描いた。【阪口孝志】
◆永久輝(とわき)せあ8月8日生まれ、東京都世田谷区出身。11年入団。雪組配属。15年「ルパン三世」で新人公演初主演。新人4回主演。19年「PR×PRince」で宝塚バウホール単独初主演。同11月、花組へ。24年5月、柚香光の後任として花組トップ就任。御園座「ドン・ジュアン」で星空美咲とのトップコンビお披露目。身長170センチ。愛称「ひとこ」。
★「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」 96年、一路真輝のサヨナラ公演で初演された劇団代表作のひとつ。以降、全5組で計10回上演。潤色・演出は小池修一郎氏。オーストリア皇后エリザベートになった1人の少女がたどった数奇な運命を描くミュージカル。宝塚版では、死を象徴する黄泉(よみ)の帝王トートを主人公に、エリザベートとの愛を描く。
