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黒木瞳「見たくなかった」日航機事故で犠牲の宝塚同期への思いを観客の前で初告白


【写真】「なら国際映画祭」で監督作品「指飛行機の行方」のワールドプレミアに登壇した黒木瞳(撮影・松浦隆司)

女優黒木瞳(65)が常間地裕氏とともに監督を務めたドキュメンタリー「指飛行機の行方」が21日、「なら国際映画祭2026」でワールドプレミア上映された。奈良・東大寺の金鐘ホールでの上映後、黒木が舞台あいさつに登壇。1985年(昭60)8月12日の日航ジャンボ機墜落事故で犠牲となった宝塚歌劇団の同期で、親友だった北原遥子さん(本名・吉田由美子さん)への思いを、初めて観客の前で語った。

作品の出発点には、黒木が長年胸の内に抱えてきた親友への思いがある。同事故では520人が犠牲となった。黒木は事故から40年となった昨年8月12日、群馬県上野村にある御巣鷹の尾根へ初めて慰霊登山した。

「それまではどうしても登れなくて、見たくなくて、認めたくない自分がいた。でも、40年なんだとなったとき、足腰が動くうちに、1度は訪れなければいけないという思いが強くなった」と振り返った。

親友を失った事実と向き合うことができず、御巣鷹から遠ざかってきた40年。だが、初めて慰霊の地に立ったことで、黒木の中に新たな思いが生まれた。

「何か残しておかなければいけない。事故を風化させてはいけないという思いもあった。犠牲者の方、ご遺族の方々、そういう声なき声をフィルムに残しておきたい」と、映画に託した思いを明かした。

その思いから生まれた「指飛行機の行方」は、1人の若い音楽家が音を探す旅の途中で群馬県の山里を訪れ、沢のせせらぎや自然の音、人々の証言に耳を傾けながら御巣鷹へと向かう25分のドキュメンタリー。現地で拾い集めた「声」や「音」を、音楽として再構築していく姿を描いた。

当初はフィクションとして制作を進めていたが、黒木は「どうもしっくりこなくて」と感じ、ドキュメンタリーを軸とする形に変更。事故を知らない若い女性が御巣鷹を訪れるというフィクションの要素を加え、過去の出来事と現在をつないだ。

常間地監督は、黒木から北原さんや事故への思いを聞き、「何かやるべきだという直感みたいなものが、本当にすぐ働いた」と振り返った。その一方で、多くの命が失われた事故を扱うことへの「向き合う責任感」を抱きながら、黒木と作品を作り上げたという。

エンドロールでは、事故の10日前にレッスンで「ラストダンスは私に」を歌う北原さんの歌声が流れる。

黒木は「ものすごく胸を打たれた」と語り、「カセットテープに残っていて、それが皮肉にも“ラストダンス”…。またミュージカルに出ようってレッスンしていたと思います」と振り返った。

北原さんの最後の歌声と向き合った編集作業では、常間地監督に「私を泣かせて。私が泣かなきゃ完成しない」と求めたという。親友を知る自分の心が揺さぶられなければ、観客にも思いは届かない。その言葉には、黒木の覚悟がにじんだ。

作品を彩るのは、中島みゆきの「命の別名」。黒木は「一人一人の命の大切さ。一人一人の心、1人の人をしのぶことが大勢の人をしのぶことになる。1人の人を愛することが、多くの人を愛することにもなる」と、楽曲に込めた思いを語った。

事故を「風化させてはいけない」という思いがある一方で、悲しみから離れたいという思いもあった。黒木はその間で揺れながら、40年間胸に秘めてきた北原さんへの思いを映画に刻み、初めて観客に向けて言葉にした。

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