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のん、デビュー20周年「年を重ねるごとに自由になっている」 音楽活動のテーマは「怒り」の感情


【写真】輝く瞳に大人の魅力が加わったのん(撮影・中島郁夫)

のん(33)となって10周年、デビュー20周年を迎えた今年、かけがえのない作品と出会った。SUPER EIGHT安田章大(41)が、企画から2年かけ脚本を開発した映画「平行と垂直」(小林聖太郎監督)にダブル主演。安田が演じた自閉スペクトラム症(ASD)の兄を支えつつも自身の結婚に直面し、揺れる妹を演じた。年齢を重ね、演じる役どころが変化していく一方、自ら責任を持ち、決断していく生き方は変わらない。その心に、真っすぐに問いかけてみた。【村上幸将】

★兄支える妹役

のんが演じた日向希は、ASDの兄大貴を支える妹だ。自立した大貴が毎週水曜に自宅で開く食事会にも足を運ぶ中、恋人の田澤雅也(伊島空)からプロポーズを受け兄妹の関係に変化が生じる。中でも大好きなのは、河川敷で希がぶつけた本音に大貴が返すシーンだ。

希 「お荷物やって、ホンマは私が一番大貴のこと、重たい荷物やって思ぉてたことも。それに気づかんふりして心にふたしてええ人ぶって……。私が一番の偽善者やって、あんた、ホンマは全部分かってたんやろ」

大貴 「あいこでしょ…あいこでしょ」

希 「あいこ…私らお荷物同士、おあいこってこと?」

大貴 「おあいこってこと」

25年2月にオファーを受けた。劇団ふくふくや主宰の山野海(60)のオリジナル作品に感銘を受けた安田が専門家に監修を仰ぎ2年、練った脚本を「いとおしくなる作品」と感じた。

「安田さんの懐の深さもあり、やりとりの中でチームの一員になっていく気持ちになれた。自分、やる気になっているじゃないか、ぜひ、お受けしたいと」

同12月の撮影まで徹底して脚本を読み込んだ。

「役柄を知ることを大事にして、どういう感情が生まれるかを頭から順に読み解きます。希は妹ながら、お姉ちゃん気質ですけど、大貴に支えられているんじゃないかと解釈しました」

その上で、提案した。

「大貴が希を支えていることが、明確に分かる描写が欲しいという自分の欲求で、お願いしました」

製作陣は、大貴が食事会の際に卵焼きを正方形に焼く、映画の中でも印象的なシーンを作った。

「大貴が習慣、ルールを大事にしていることを希も大事にしていると思うし(卵焼きは)2人の、お母さんの共通の思い出。皆さんが考えて、なかったシーンを作ってくださった」

★「結婚」への思い

フジテレビ系で放送中の「Tokyo middle 30」(水曜午後10時)で演じる35歳の山地遥も、結婚を考えるアパレル店店長。等身大の役が、めぐってくるようになった。

「すごく、やれることがいっぱいあると実感しています。年を重ねるごとに自由になっている。自分がやってきたことが表現に重なっている部分もあれば、今までになかったものが加わった役がいただけているのは、ワクワクしています」

20代は個性的な役だったり、設定にインパクトがある作品の出演が多かった。

「私自身が面白い、インパクトのある、何か表現をしている役を好んできたのも、あるかもしれないですが…。20年も芸能界にいたから、芸能じゃない世界を知らないと、すごい痛感して。希や遥のように、一般の会社に勤めて人生を生きながら、困難を自分で乗り越える役は興味深く演じています。勉強になります」

同時期の2作で、結婚と向き合う同世代の女性を演じた。結婚について、どう考えているのだろうか。

「結婚について考える機会にはなりますよね。演じる役柄が結婚について、どう思っているかと考える時に自分と照らし合わせて、どうかなと。やっぱり、相手がいないと結婚できないので…これが結婚だと気付く瞬間が、きっとあるんだろうなと感じています。絶対、結婚したいとか思わないですけど、してみたいなとは思います。『平行と垂直』は、すごく良い終わり方だった。家族に祝福され、自分の大事な人と、これからの人生を定めていくのは、すごい素晴らしい、すてきなことだと思います」

★驚きと納得感

10代後半から「どんどんのし上がっていきたい。たくさん主演していけたら」などと明確に言い、自分の世界観を作る意思も時折、語ってきた。一方で、携わる作品、企画が歴史のあるものであれば、リスペクトの念も口にしてきた。

「(過去や歴史を)なかったことにするやり方は、好きじゃないので。自分が今まで見てきたものを、最大限に生かしてビックリさせたい。応援してくれている人、見て面白かったと思った人にインパクトを与えるためには、驚きと一緒に納得感がないといけない。そう(過去や歴史がある)なんですよ、というのを、ちゃんと見せながら衝撃を与えるのが信条です」

17年8月に「KAIWA(RE)CORD」を立ち上げ音楽活動を始め、6月に発表したアニバーサリープロジェクトでは全国ツアーも展開する。根底にあるテーマは「怒り」だ。

「怒りは変わらず、私の中で有効活用できる感情として機能しています。ポジティブに変換できる怒りも、たくさんあって。エネルギーが湧いて、頭がすごく回転してアイデアが生まれたりします。楽しい、喜び、悲しんで泣いていると見られるのは恥ずかしいんですけど、怒るおかげで恥じらいがなくなっていく。使い物にならないような怒りの時は寝たり、おいしいもの食べたりして、ごまかしますけど。問題意識がなくなったら、自分の才能が死ぬと思っているので」

★責任を持って

16年に独立した際、芸名を本名の能年玲奈から、のんと改名し、肩書を「女優・創作あーちすと」にした。24年9月の伊丹十三賞贈呈式では「のんになる時に大事にしていたのは、自分を信じること。持っているものが死なないようにしたい思いが強くて」と口にした。今年3月には、SNSのプロフィルに本名を付記した。今後について聞くと力強い言葉が返ってきた。

「いろいろあるでしょうけど、自分に責任を持って決めていくと思います。そうしたら苦しいこと、大変なことは、自分で決めたことだと乗り越えられる。そういう気持ちで責任を持ってやっていきたい。自分の表現が尽きることがないという思いで、どんどん、どんどん発掘していきたいと思っています。限界知らずで…」

▼安田章大

(のんと事前の打ち合わせは)本当に、していたら良かったと思うくらい何もないんです。僕たち、空気感で存在しあった状態で進んでいったので。(初共演シーンは)映画の中盤くらいのところですけど、のんちゃんが演じる希が、そういう感じだから、僕は勝手にこうなっていくんだな、というのがインストールされた瞬間があったのを明確に覚えていて。だから、勝手に成立していったと思います。

◆のん(本名・能年玲奈=のうねん・れな)

1993年(平5)7月13日、兵庫県生まれ。16年のアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)で主人公すずの声を演じ、ヨコハマ映画祭審査員特別賞、22年には「さかなのこ」(沖田修一監督)で、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。主演のDMM TVオリジナルドラマ「幸せカナコの殺し屋生活2」が9月17日から配信。音楽活動では、25年9月に3枚目のアルバム「Renarrateをリリース。血液型A。

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