
うだるような暑さとなった25年6月21日。“ギャルの聖地”渋谷109の店頭イベントスペースには、この日のためだけに自らデザインして作った衣装に身を包み、新曲「ジモンジトウ」を歌う“シンガー・ソングライター”おかゆ(34)がいた。この日、さまざまな思いが交錯し、目を潤ませた。それを紛らわすように明るく努める姿が印象的だった。このミニライブを“第2章の始まり”と位置付け目を潤ませた、その意味に迫った。【川田和博】
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“流し”が紡いだ縁が、母の夢でもあり、自らの目標にもなった歌手としてのメジャーデビューへとつながった。
そして25年4月末、契約満了をもって、4年間世話になった大手事務所を退社した。
「大きい事務所はたくさん守られていることもあります。でも個人事務所は全部自分の責任。結局大きいところにいると、ひとのせいにしてしまうかなと。自分でどうしようもできないのは他人のせいだと。でも、流しは全部自分のせい。だから、もう1度原点に立ち返って、自分で責任をもって立ち回った方がいいと思ったんです」
こうして、おかゆの第2章は幕を開けた。ある意味“原点回帰”。そして、新曲も同様だった。
「実は『七転び八起き幸せに』は演歌・歌謡曲じゃないんです。言ってしまえば普遍的な曲で、ポップスバラードなんです。だから今『ジモンジトウ』を歌うのも、原点回帰かもしれません。曲調も、デビューしてから初めてこういう作品を作りましたが、この路線が私の原点だったのかもしれないですね」
さまざまな点が全て“現在”につながっている。だからこそ原点回帰にも意味がある。
「結局私の始まりは、母との思い出の歌謡曲だし、自分のこだわりは演歌・歌謡曲でしたが、本来自分が必要とされたり、皆さんの心を動かすことができる可能性を持っていたのは、普遍的な曲だったのかもしれないんです。ようやく気づいたのかもしれません」
メジャーデビュー以降、自らを枠にはめていたのかもしれない。
「実は私、かなり頑固なので、1度こだわると、そこに固執しちゃうタイプなんです。だから、自分自身で身動きをとれなくしていた可能性があるなと、今は思います」
自分がやりたい音楽で売れれば、それに越したことない。だが、自分がやりたいことと世間のニーズにズレが生じた時にどうするか? これは“通過儀礼”ともいえる。おかゆが出した答えは“原点回帰”だった。
そんなさまざまな思いを胸に、新たなる1歩を踏み出したのが25年6月21日、34歳の誕生日に、憧れの地渋谷109店頭イベントスペースで行ったミニライブだった。そして、あの涙の意味だ。
最後に、ファンへ向けメッセージを送った。
「今年は私にとって本当に大きな一生の1ページになると思います。ここからどういう人生になるのかは、ファンの皆さんと一緒に作っていく物語です。だから、みんなと一緒に楽しく、明るく、未来に向かっていきたい。改めてそう思います」
新曲「ジモンジトウ」は背中を押してくれる曲でもあり、一緒に寄り添ってくれる曲となるだろう。(おわり)
◆おかゆ 本名、坂本由佳(さかもと・ゆか)1991年(平3)6月21日、北海道生まれ。19年5月1日、「ヨコハマ・ヘンリー」でビクターからメジャーデビュー。23年5月、5枚目シングル「渋谷のマリア」が発売週のオリコン演歌・歌謡曲ウイークリーランキングで1位を獲得。また、第16回CDショップ大賞2024歌謡曲賞を受賞。167センチ。血液型A。