
一個人が借金までして作り上げた完全なる自主映画ながら、日本アカデミー賞最優秀作品賞、同編集賞の2冠を獲得など24年の日本映画界を席巻した「侍タイムスリッパー」(「侍タイ」)が、漫画化されることが決定した。徳間書店の月刊アニメ誌「アニメージュ」9月号(8月7日発売)から連載を開始する。安田淳一監督(58)率いる映画レーベル「未来映画社」と、徳間書店が8日、発表した。
「侍タイムスリッパー」は、24年8月17日に“インディーズ映画の聖地”と呼ばれる東京・池袋シネマ・ロサ1館で封切られ、全国380館超へと拡大公開し、興行収入10億円を突破。動画配信サービスでの配信に加え、6月4日にはDVD。ブルーレイが発売されたが、封切りから300日を過ぎた今もなお、映画館で上映され続けている。
その中、X上で「侍タイ」のイラストを投稿していたファンに白羽の矢が立ち、安田監督が直々にラブコールを送り、過去に出版経験もある漫画家「こりす」氏が、安田監督の原作を元に作画を手がけ、アニメージュで連載をスタートする。劇中での名言「一生懸命頑張っていれば、どこかで誰かが見ていてくれる」のごとく、ファンの中から書き手を選出するという「侍タイ」らしい夢の企画で連載を始める、こりす氏が描いたキービジュアルも解禁された。10日発売の「アニメージュ」8月号では、安田監督とこりす氏の対談が掲載され、でコミカライズについても語られる。
愛車まで売り払い、2600万円もの製作費を捻出して製作した、安田監督が漫画化に当たりコメントを発表した。
「『侍タイムスリッパー』がコミック化されることになりました。掲載誌は徳間書店のアニメージュです。僕は宮﨑駿さんの『風の谷のナウシカ』が大好きなので、その『ナウシカ』が掲載されていたアニメージュでコミック版の『侍タイ』を連載できるのは、とてもうれしいことです。作画のこりすさんは『侍タイ愛は負けない』とおっしゃっている方で、全てのキャラクターを理解し、愛してくれています。そんなファン代表のこりすさんによって描かれるコミック版の『侍タイ』。いったいどんな作品になるのか、僕自身も楽しみにしています」
18日には、日本テレビ系「金曜ロードショー」での地上波初放送も決定している。全国1館からスタートし、24年末の日刊スポーツ映画大賞で作品賞、安田監督の監督賞、山口馬木也(52)主演男優賞の3冠獲得に続き、ブルーリボン賞でも作品賞、主演男優賞の2冠。そして日本アカデミー賞2冠などを達成した“『侍タイ』の夏”は、今年も、まだまだ続く。