
5月のカンヌ映画祭(フランス)コンペティション部門に出品された映画「ルノワール」(早川千絵監督、20日公開)日本外国特派員協会記者会見が10日、行われた。12歳で主演の鈴木唯は、冒頭で英語であいさつし、劇中でも披露した馬の鳴きマネをして会場を笑わせる一方、大人顔負けのしっかりトークで取材陣と聴衆を沸かせた。
「ルノワール」は、日本がバブル経済真っただ中だった80年代後半の夏が舞台。鈴木が演じた、闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・沖田フキは、マイペースで想像力豊かで、空想にふけりながら、それぞれに事情を抱えた大人たちと触れ合う。子供特有の感情を細やかに描写するとともに、フキが関わる大人たちの人生の、ままならなさや人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出す。
鈴木は司会から、カンヌ映画祭で「カンヌ国際映画祭が選ぶ注目すべき10人の才能」に選ばれたことについて聞かれると「すごくうれしく、心に残り、これからも俳優を頑張ろうという気持ちになりました」と笑みを浮かべた。両親を演じた石田ひかり(53)リリー・フランキー(61)から何かアドバイスを受けた? と聞かれると「そうですね。石田さんからは『何も考えずにやるといいよ』と。先輩の演技を見て、尊敬し、私もそういう演技をやってみたいと思ったこともあったし、見習いたい」と答えた。12歳のため、労働基準法で午後8時以降の労働が禁止されており、鈴木の登壇時間は開始20分限定で、リリーは「あと15分で帰るので、お世辞を言わせるのがもったいない」と言い、場内を笑わせた。
鈴木は、演じたフキと自身の似ているところは? と聞かれると「素直なところとか、思ったことを率直に行動(に移)しちゃうところが似ていると思いました」と答え、場内を笑わせた。馬の鳴きマネが似ていると褒められると「ほとんど、たまたま、できたんですよ。馬みたいな鳴き声が出たんだけど…と思ったら、もう1回できた。羊も。猫は元々、飼っていて声を出していて…今に至る」と答えた。早川監督は「得意なことを聞いたら、動物の鳴き声だと。馬の声を出す人は初めてで、その日のうちに脚本に書きました」と鈴木の馬の鳴きマネを受けて、脚本に加筆したと明かした。
司会から「馬のマネ、やってくれますか?」とリクエストされると「ヒヒーン」と言い、場内を笑わせた。リリーは「さっき、俺が薄く振ったけれど、やってくれなかった」と言い、笑った。
◆「ルノワール」1980年代後半のある夏。11歳の沖田フキ(鈴木唯)は、両親と3人で郊外の家に暮らしている。時には大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性を持ち、得意の想像力を膨らませながら自由気ままに過ごしていた。時々、垣間見る大人の世界は刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父圭司(リリー・フランキー)と仕事に追われる母詩子(石田ひかり)との間には、いつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常もいや応なしに揺らいでいく。フキが出会う大人たちを中島歩(36)、「PLAN 75」に引き続き河合優実(24)、さらに坂東龍汰(27)と、各年代の実力派俳優が演じた。日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールの国際共同製作で、24年7~9月に国内、同11月には海外で撮影が行われた。