
5月のカンヌ映画祭(フランス)コンペティション部門に出品された映画「ルノワール」(早川千絵監督、20日公開)日本外国特派員協会記者会見が10日、行われた。リリー・フランキー(61)は席上で「うちの妻は不倫をしておりますし」とボヤいた。
「ルノワール」は、日本がバブル経済真っただ中だった80年代後半の夏が舞台。12歳で主演の鈴木唯が演じた、闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・沖田フキは、マイペースで想像力豊かで、空想にふけりながら、それぞれに事情を抱えた大人たちと触れ合う。子供特有の感情を細やかに描写するとともに、フキが関わる大人たちの人生の、ままならなさや人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出す。
リリーはフキの闘病中の父圭司、キャリアウーマンの母詩子を石田ひかり(53)が演じた。家族のシーンについて聞かれると、リリーは「意外と、家族3人、そろっているシーンが少なくて。うちの妻は不倫をしておりますし、娘に対する愛情も甚だ薄いと言いますか。私が体を病んでいるのに、おもんぱかる節もない。あまり集まることがなくて」と、劇中の設定を踏まえて語った。さらに「父親は娘への愛情は少なくともあって、娘は(父を)好いている。3人が集まったところが難しい。フキが笑った時、母が『気持ち悪いからやめなさい』と言われたところは、監督に細かく演出を受けた。もうちょっと、はっきり怒りを…と」と撮影を振り返った。
石田は、司会から「悪い人には見えない役をどう作ったか?」と演じた詩子を評されると「悪い人に見えない、というお言葉がうれしくて」と笑みを浮かべた。その上で「全てに悪気がないんだけど、全てが少しずつかみ合わない、うまくいかないストレスの中、生きているのではないだろうかと日々、現場で考えて詩子を生きていました」と撮影を振り返った。役作りについては「とにかく、役のことを、ひたすら考えて、現場でリリーさんと唯ちゃんの声を聞き、空気の中で役を生きるしかないと、今までもやってきた」と語った。
◆「ルノワール」1980年代後半のある夏。11歳の沖田フキ(鈴木唯)は、両親と3人で郊外の家に暮らしている。時には大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性を持ち、得意の想像力を膨らませながら自由気ままに過ごしていた。時々、垣間見る大人の世界は刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父圭司(リリー・フランキー)と仕事に追われる母詩子(石田ひかり)との間には、いつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常もいや応なしに揺らいでいく。フキが出会う大人たちを中島歩(36)、「PLAN 75」に引き続き河合優実(24)、さらに坂東龍汰(27)と、各年代の実力派俳優が演じた。日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールの国際共同製作で、24年7~9月に国内、同11月には海外で撮影が行われた。