
寺尾聰(78)の16年ぶりの主演映画「父と僕の終わらない歌」(小泉徳宏監督)初日舞台あいさつが23日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた。席上に、今作で共演し“芸能界の弟”と位置付け、親交の深い佐藤浩市(64)が駆けつけた。18日に寺尾が78歳の誕生日を迎えたこと、初日を祝してのサプライズ登壇に、寺尾は「腰を抜かしそうなくらい、うれしい。声が出ない」と感激した一方で、昨春は体調が悪く「これで、最後かなと思った」と引退も頭をよぎっていたと明かした。
「父と僕の終わらない歌」は、アルツハイマー型認知症を患いながら、息子のサイモンがYouTubeにアップした1本の動画をきっかけに、16年に80歳でCDデビューを果たし、英国史上最高齢の新人歌手となったテッド・マクダーモットの実話を映画化。寺尾は横須賀で楽器店を営む間宮哲太、佐藤は、病院を受診した哲太にアルツハイマーを告げる専門医を演じた。
佐藤は寺尾に花束を渡すと、熱い抱擁を交わしつつ「何で、きれいな女優さんじゃないんですか? サプライズでしょ? 普段は寺兄、と呼んでるんですけど…今日は寺尾さんと」と笑った。寺尾は「芸能界で血は繋がってないですけど。弟のように生きてきた。おやじ同士も、そういう関係で。共演作は、多くないけれど。彼と出た映画は、潜水艦の間で半分に切り取られたり、向かい合って芝居したことがない。彼と初めて向かい合って、お芝居したのが、うれしくて」と感謝した。
その流れで「ゴルフ、教えてください」と佐藤にリクエスト。佐藤から「飛距離が出てきた」と褒められると、寺尾は「去年春頃、正直、具合が良くなかった」と吐露した。劇中で、松坂桃李(36)が演じた哲太の息子雄太の恋人亮一を演じたディーン・フジオカ(44)に自ら出演オファーをしたが、ディーンに電話した時には「この映画が終わったら、これで最後かなと思った」と吐露。「処置が早かったので、まだ、頑張れるかなと」と語った。
この日は、雄太の幼なじみ志賀聡美を演じた佐藤栞里(34)聡美の夫ダニエルを演じた副島淳(40)哲太の妻で雄太の母律子を演じた松坂慶子(72)も登壇した。
◆「父と僕の終わらない歌」 間宮雄太(松坂桃李)は、幼なじみの志賀聡美(佐藤栞里)の結婚式に、父哲太(寺尾聰)の迎えの車が大幅に遅れ遅刻する。哲太は、式場ではいつも通りに陽気で大胆、自慢の歌声を響かせては妻の律子(松坂慶子)や新婦の聡美と新郎のダニエル(副島淳)らを魅了する一方、自宅の場所が思い出せないでいた。後日、専門医(佐藤浩市)を受診し、アルツハイマーと診断される。雄太は恋人の亮一(ディーン・フジオカ)の勧めで、両親を支えるために横須賀の実家で過ごすことになったが、哲太の行方が分からなくなってしまう。何とか父をつなぎとめたいと、愛した音楽を流すと、哲太は自分を取り戻し歌い始める。その姿を雄太はスマートフォンで撮影し、配信すると瞬く間に拡散され、CDデビューの話が舞い込む。プロの歌手になることは哲太の若き日の夢だった。