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<情報最前線:エンタメ 音楽>
日本が世界に誇るヘビーメタルバンド「ラウドネス」が、全米デビューとなったアルバム「THUNDER IN THE EAST」発売40周年を記念した全国ツアー「THUNDER IN THE EAST 40th Anniversary 完全再現ライブ!」を5月3日の福岡公演を皮切りに、6都市で開催する。高崎晃(64)二井原実(64)が当時を振り返りつつ、ファンへメッセージを送った。【川田和博】
■初録り妥協許されず
1981年(昭56)の結成当時から“世界に通じるバンド”を掲げてきたラウドネス。85年、当時日本のロック系バンドでは初となる米アトランティックレコードと契約するが、その知らせは英国のスタジオで聞いた。
高崎 4枚目(アルバム「DISILLUSION~撃剣霊化」)をレコーディングしている時に、「アメリカのレコード会社から契約をしたいと連絡が来ている」って、日本で大騒ぎになっていた。
当時はまだインターネットもない時代だが、その名は世界に届いていた。日本から売り込んでの契約ではなく、実力が認められての契約だった。
高崎 当時は日本コロムビアに所属していたので、「THUNDER-」の日本盤は日本コロムビアから出ています。でも、アトランティックから連絡があったのは日本のワーナーなんです。だから、レーベルの壁を越えて、でしたね。
同アルバムのレコーディングにはさまざまな逸話がある。プロデューサーのマックス・ノーマン氏は妥協を許さなかった。特に二井原には言葉の壁もあった。
二井原 厳しかったですね。発音に関しては、もちろん彼らが分かるレベルには持っていったけど、どうしても日本人の抜けないアクセントがあるんです。
高崎 それも含めてのラウドネスの魅力だったし、あの時点でのベストは尽くした。でも、ひぐっつぁん(故樋口宗孝氏)は大変だった。何度も何度も録り直しをさせられて、腱鞘(けんしょう)炎になっていた。ひぐっつぁんのドラミングの売りは手数とか、個性的なフィルインだったけど、まあことごとく「まずはシンプルに」でしたね。
アルバム制作のビジョンについて、説明は一切なかったという。
二井原 現場に行ったら「さあ、始めよう」って(笑い)。
高崎 彼の中でも手探りだったと思いますよ。言うこともよく変わっていて、「どっちやねん」みたいな時も結構あった。だから、結果的にあの形にはなったけど、こういう形というのは特になかったと思います。でも、あの頃のアメリカはMTVがすごく盛り上がっていたので、そこに流れやすい楽曲というのは、確かにあったかもしれない。
ぶつかり合いもあったが、言葉が通じなかったのが幸いした。
高崎 通訳が「今のはちょっと無理。訳せないけど、ひどいことを言っている」って。だから、こっちも日本語でね(笑い)。
そうして生まれたアルバムは、当時の日本のバンドとしては初となるビルボード総合チャートで最高位74位にランクインした。
二井原 あれがきっかけで次に進んでいったわけですからね。あのアルバムはラウドネスの名刺みたいなものです。
高崎 お互いに初対面だったので、信じていなかったんですよね。でも1枚作ってからは、バンドの演奏力だったり、歌唱力だったりを信じてくれて、それからは「お前ら好きにやってええで」みたいになった。
発売30周年時には、同アルバム録音前のデモテープを公開した。
高崎 改めて聞き直すと、もちろんドラムのフィルとかシンプルになっているし、いろんな部分でシンプルにはされているんだけど、アレンジが大きく変わったというのはなかったんだなって思いましたね。
■突然声が出なくなり
26年に結成45周年を迎える。2人とも還暦を超えているが、特に体が楽器でもあるボーカルにとっては負担が大きい。実際に24年末、突然声が出なくなり、ライブ当日に中止を発表したこともあった。
二井原 あれは本当にすみませんでした。確かにちょっとつらいですけど、昔よりも確実に声が太くなっていますね。
高崎 ボーカリストとして、この10年でまた成長している。60歳を過ぎてもまだ成長できるって、すごいことですよ。
高崎から見る二井原の成長は「パワー」だ。
高崎 普通の人は2時間あのキーで歌い切れない。女性でも厳しいと思う。一瞬そのキーが出て1曲歌えたとしても、ライブ全体を歌い切るパワーはホントにすごいなと。やったら分かりますよ。
その秘訣(ひけつ)は何だろうか?
二井原 普段から意識していることはあるけど、特別なことはしていない。身体に悪いことはしないとか、よく寝るようにとか。やっぱり、睡眠は大事ですね。あとは、コンスタントに歌うということかな。ライブだけでなく週に3~4日、必ず2時間は歌うようにしています。これは大事かな。歌う機会っていうのは大きいですね。
高崎 あとは、たまにお姉ちゃんを…(笑い)。バンド自体もしっかりツアーをやっている。そうじゃないとライブ感も忘れるし、眠ってくる。だから、どんどんライブは続けた方がいい。野球とかも一緒だと思うけど、いきなり呼ばれてどうぞと言われても結果は出せないですよね。
45周年に向け、通算30作目となるアルバムも制作する。
高崎 曲のアイデアはもうだいぶたまっている。あとはプリプロダクションをやって、バンドで実際に録音していくだけです。
今回のツアーはどんな内容になるのだろうか?
高崎 まだ正式には決まってるわけではないけど「THUNDER-」は全曲やる。それだけだと1時間ぐらいで終わっちゃうので、ラウドネスのベストをまとめてやっていきたいなとは思っています。
その上で、ファンへメッセージを送った。
高崎 やっぱり、世の中に元気を与えていきたい。僕ら世代でも、まだまだ本気になったら頑張れるねんぞっていうのを体感しに来てほしいですね。
二井原 年齢的にはもうリタイアの年齢ですからね。そういう年代なんだけど、全然現役でライブをやっているっていうのを、そういう人がいるというのを1回見に来てください。
高崎 最高の刺激と癒やしを与えていきたいと思います。
◆ラウドネス(LOUDNESS) アイドルバンド「LAZY」の高崎晃、樋口宗孝さんを中心に、二井原実、山下昌良の4人で81年に結成。85年に全米デビュー。その後はメンバーチェンジを繰り返すが、00年にオリジナルメンバーで再集結。08年樋口さんが肝細胞がんで亡くなり、09年からは鈴木政行がドラムを担当。
<ラウドネスツアー日程>
▼5月3日=福岡・Zepp Fukuoka
▼4日=広島・BLUE LIVE 広島
▼6日=大阪・Zepp Namba
▼10日=愛知・Zepp Nagoya
▼18日=東京・Zepp DiverCity Tokyo
▼23日=北海道・Zepp Sapporo