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松任谷正隆氏 妻ユーミンが今秋発売の新アルバムについて語る/コメント全文


松任谷由実が40作目のアルバムをこの秋に発表予定であることが明らかになりました。松任谷正隆氏がアルバム制作の背景を語り、未発表曲の再発見と技術の進化について説明しました。過去の未発表曲を活用する過程で、国立大学のAI研究チームが松任谷由実の若い頃の声をサンプリングし、現代の技術で新たにメロディーとして作り直すプロセスがありました。進化した技術“Synthesizer V”により、過去と現在の声を融合させ、独自のアルバム「Chrono Recording System」が構築されました。これにより、時代を超えた音楽作りが可能になり、最新のAI技術と共存する新しい試みが展開されています。

松任谷正隆氏

歌手松任谷由実(71)が、今秋に40作目のアルバムを発売することが7日、明らかになった。夫でプロデューサーの松任谷正隆氏がコメントを発表した。

◆  ◆  ◆

我々の求めているもの

あれはほんの4-5年前のことでしょうか。スタッフが倉庫から未発表曲の入ったマルチテープを持ってきたことから始まりました。50年も続けていれば未発表曲もそれなりにあります。その曲はどうやら70年代の終わりか、80年代初めのものらしいことが、スタジオのデータとかミュージシャンの声から分かりました。

ところが作曲した由実さんも、編曲した僕自身もほぼ記憶にない。確かに由実さんらしい曲だし、僕らしい音なので、それは間違いないのだけれど、こんな曲あったっけ…なんてみんなで顔を見合わせたのを覚えています。

聴いているうちに、この70年代だか80年代の音が妙に新鮮で、現代では絶対に再現出来ないことが肌で感じられてきました。

しかも「ラララ」で仮歌を歌っている由実さんの声もずいぶん若くて高い。このオケは使いたくてもキーが高くて今では無理、再び倉庫行きか、なんて諦めかけていた頃、某国立大学に、声をサンプリングしてメロディーにする研究をするチームがあることを知りました。AIなどという言葉が今みたいに普通ではない時代だったので(たった数年前のことなのに!)、それがどういうことなのか理解出来ず、でもどうなるのかやってみたい、という気持ちから、昔の由実さんの声をサンプリングして新しいメロディーに作り替えられないか、という打診をし、やってみよう、という返事をもらったのです。

試行錯誤の末に出来上がったものは、まだまだ僕がイメージしたものとはほど遠く、似ていなくもない、程度のものだったでしょうか。でもこれを部分的に使って、昔の自分に会いに行く、というテーマの作品にしました。Call me backという曲です。そう、これが全ての始まりでした。

それからほんの数年後、Dreamtonics社が開発する“Synthesizer V”というソフトウエアの存在を知りました。あの頃某国立大学が挑んでいた研究は、この短い時間でのテクノロジーの発達ゆえか、それとも技術者の才能ゆえか、天文学的な発達を遂げていました。

誰が聴いても昔の由実さんがそこにありました。

僕はもやもやしながらも、これは使える。と、どこかで思ったのです。

技術の発達のスピードはすさまじいものがあります。そしてそれを受け取る我々の方も、そのスピードにある程度慣らされてしまいます。AIがディープラーニングをし、考え、あっという間にポロンとアウトプットしていく。こんな夢みたいなことは今や常識。リポート作成も、作文も作曲も、AIに任せればなんでもできるし、それなりの形にしてしまう。いや、それなりどころではない。傑作が生まれるのも時間の問題でしょう。今はそんな時代。

そして誰もがそれを受け入れている時代。

そんな中で、いま一度“Synthesizer V”の意義について考えました。もしこれを普通に使ったら、由実さんは歌うのを諦めて、イージーにAIで済まそうとしている、などと言われるでしょう。ついに声の出なくなった由実さんはAIに頼った、みたいな。

それはないな…と思いました。この究極的なテクノロジーは、作品作りの初めから生かさないと意味も意義もない、と。

そして、当然のことながら、これまで通りの由実さんの歌がメインにならないとアルバムとしての価値はない、と。

こうしてたどり着いたのがワームホールという考え方でした。実際にあるかどうかも分からないワームホール。でも、もしあるとすれば過去と今を行き来出来ると言われます。この考えを心のどこかに置きながら曲を作り、音を作り、そして詞を作れば、”Synthesizer V”との共存はできるはず。

作った声と今の声とをうまく共存させて面白いアルバムが作れるはず、という確証を持ち、Synthesizer Vと我々の制作プロセスを「Chrono Recording System」と名付けました。時間を超えて音を記録するイメージです。

考えてみれば70年代後半から80年代というのは、生楽器の中に少しずつ、シンセサイザーが楽器として忍び込んでいった時代でした。そして気がつくとテクノサウンドあたりからはシンセサイザーが表舞台に立っていった。

もしもそれをこのAIテクノロジーで例えるなら、ボーカロイドなどが当てはまるのかもしれません。

その後のテクノサウンドはどうなっていったか、と言えば、それは形を変えながら静かに今の音楽にまで染みこんでいった、と言えるでしょう。まるでウイルスのように。

そこには変わらず進化を求める音楽そのものの姿があります。

誰にでもインスタントに音楽が作れる時代。

それだからこそ、最新のテクノロジーと共存するためには、その原点となる発想と共存出来なければ我々には意味がない、というのが僕の、少なくともたった今の結論です。松任谷正隆

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