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<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>
中村勘九郎(43)中村七之助(41)がこのほど、巡業公演「新緑歌舞伎特別公演2025」(5月3~25日、全国16カ所)の合同取材会を行った。
05年に始まった巡業は、22年に47都道府県での実施を達成し、24年に20周年を迎えた。
21年目に突入し、次の目標を聞かれた勘九郎は「まだまだ歌舞伎を見たことがない人がたくさんいるなというのが印象。次のステージというよりも、おもしろく楽しんでご覧いただける演目を毎年のように選んで持っていけたらいいなと思います」と話した。
これまで巡業公演を観劇した中、勘九郎、七之助が毎回、初めて歌舞伎をご覧になる方は? と客席に問いかけているのが印象的だ。たくさんの手が挙がり、初歌舞伎という人もたくさんいる。
七之助も「(巡業を)始めた時に0歳だった人は見ていない可能性もある。毎年やるというのはそういう理由です。体力が続く限り、僕たちの好きな歌舞伎をいろんな方に見てほしいというのが根本です」と語った。頼もしい言葉だった。
今回の巡業は、トークコーナーとミニ歌舞伎塾に始まる。トークコーナーではQ&Aが人気で、勘九郎、七之助が気さくに質問に応じてくれる。会場が温かい雰囲気になる。
最近ではあまりないミニ歌舞伎塾は、歌舞伎の効果音や着物についてのあれこれを分かりやすく解説するそう。勘九郎は「歌舞伎って敷居が高いとか難しいとか、何をやっているのかわからない、何を言っているのかわからないという不安を抱えているお客さまもいらっしゃるので、このトークコーナーとミニ歌舞伎塾で、心の壁を取っ払いたい」とした。
トークコーナーでは、巡業先のおすすめの飲食店を観客に聞くこともある。勘九郎は「どこにご飯食べに行けばいいですかと聞いて、お客さまも教えてくださる。でもそのお店に行かないだろう、と思うかもしれないですが、僕たち本当に行くんですよね。みんなびっくりします」と笑った。本当に心の壁を取っ払っていくんだな、と思った。
昨年は中村勘三郎さん十三回忌追善の年で、巡業も勘三郎さんゆかりの演目が並んだ。今年は今までやったことのない、あまり見たことのない演目が選ばれたのも見どころ。七之助による「高尾懺悔」、勘九郎、中村鶴松らによる「太刀盗人」。七之助によれば「『高尾懺悔』は今までの巡業をやってきた中で一番渋い」そうだし、「太刀盗人」は「コミカルでからっとして、シンプルでおもしろい」(勘九郎)という。いろんな楽しみがある中村屋の巡業になりそうだ。