がん闘病中だった経済アナリスト森永卓郎(もりなが・たくろう)さんが28日午後1時33分、原発不明がんのため、埼玉・所沢市内の自宅で亡くなった。67歳。この日、所属事務所が発表した。
葬儀は近親者のみの家族葬で執り行うという。“モリタク”の愛称で、ラジオやテレビで経済を分かりやすく説明して人気者に。亡くなる前日の27日までラジオ出演し、世論を斬っていた。
◇ ◇ ◇
がん闘病を23年末に公表してから約1年。最期まで発信を続けて、旅立った。発表では「2023年末にがんが判明。その後、闘病生活を続けるなかでも、経済アナリストとして精力的に発信を行ってまいりました」。長男で経済アナリストの康平氏も「闘病中は本当に多くの方から応援のメッセージをいただき、本人だけでなく私たち家族も勇気づけられていました。余命宣告を受けてから、父は病状や体調、治療状況などについて、可能な限り皆さまに共有しようとしていました」とこの1年を振り返りつつ「まだ気持ちの整理ができていません。時間ができた段階で、余命宣告をされてから今日に至るまでの闘病の様子や、父の最期の様子なども、皆さまにご報告させていただければ」とした。
東京出身の森永さんは、1980年(昭55)に東大経済学部を卒業し、日本専売公社に入社。三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどをへて、独協大教授に。03年に出版した著書「年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で『豊かな』ライフ・スタイルを確立する!」は200万部以上のベストセラーになり、“モリタク”の愛称でお茶の間の人気者に。時の政権の経済政策を歯に衣(きぬ)着せず批判することでも知られる一方で、食玩やフィギュア、有名人のサイン入り名刺など収集マニアな一面もあった。
23年11月に人間ドックを受けた際、膵臓(すいぞう)がんが見つかっていた。同12月27日に、レギュラー出演するニッポン放送「垣花正あなたとハッピー!」(月~木曜午前8時)で公表。同日から抗がん剤治療を開始した。治療を続けながらも、電話やネットでラジオ番組に出演して、仕事を続けていた。
生前最後の生出演は27日の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜午後1時)となった。自宅からリモート出演し、大竹まこと(75)らとトーク。「一週間前から急激に体調が悪くなった。根性でいくところまでいくぞ」と話す一方で、持論を話すコーナーでは「社会を分断させてボコボコにすることがいいことか、報復の連鎖が続くと良くない」とフジテレビ問題に見る世相についても言及していた。亡くなったこの日、出演予定だったニッポン放送「あなたとハッピー!」を欠席。康平氏が「かなりキツそうだなっていうのが正直な感想」など、森永さんの様子を伝えていた。
◆森永卓郎(もりなが・たくろう)1957年(昭32)7月12日、東京都出身。80年に東大経済学部卒業後、日本専売公社入社。経済企画庁、三井情報総研、三和総研、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどを経て、06年に独協大経済学部教授。安倍晋三首相(当時)のアベノミクス政策を“弱者切り捨て”と批判。収集マニアとしても知られた。長男は経済アナリストの康平氏。