東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第67回(24年度)ブルーリボン賞が28日までに決定した。授賞式は2月12日に都内で開催する。
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大沢たかお(56)が「キングダム 大将軍の帰還」(佐藤信介監督)で、助演男優賞を受賞した。「プロが厳選して選び、信頼している賞」と、初受賞の喜びを口にした。
19年に第1作が公開された「キングダム」シリーズでは、大将軍王騎を演じるために約20キロ増量し、腹直筋断裂の重傷を負うまで鍛錬し、役作りした。16年から俳優業を2年、休業していた中、出演のオファーを受けたのは「自分でも好きになるようなキャラクター。でも、ものすごく難易度が高いハードル」と感じたからだった。「最後の1本になってもいい」と覚悟を決めて参加した裏には「観客を常に驚かせたい。同じ手は2度、通じない」という強い思いもあった。
20年に全世界が見舞われたコロナ禍で、製作体制も転換を余儀なくされた。「コロナが終わるかもわからない中、諦めずに作り続けるのが難しかった。でも、物作りは諦めちゃいけないと、ジムの機材を家に持ってきてもらった」と当時を振り返った。完成した本編を見て「コロナでも、絶対に『キングダム』は負けたくないと思った。(その思いは)映像に映るんだなと、すごさ、恐ろしさを感じた手を抜いてはいけないと学んだ」と、かみしめるように語った。
王騎を演じるにあたって、常に念頭に置いていたのが、主演の山崎賢人(30)だった。「数年前、初めて会った時は、すごく悩んでいたと思う。アニメの実写化のたびに担ぎ出され、結果を出したかったけれど、1人の努力じゃ無理。才能があって、外見も良くてハートがあるのに苦戦し、魂が小さくなっていた。先輩として申し訳なかった」。山崎が、演じる天下の大将軍を目指す信と、人間としてもオーバーラップすることで「彼が作品を通して俳優として大将軍になる」と考え「そのために、大沢たかおとしても王騎とオーバーラップさせれば」と考え、向き合ったという。
「彼のためというより、自分にとっても1つのよりどころとなる」と考えての向き合いの中、山崎の成長を感じた。「目つき、体つき、現場の居方も、どんどん変わり、日本のトップスターになった。自分が育てたなんて、おこがましいことは言わない。引っ張るというより、変化についていこう、頑張ろうと思った。映画を超えた彼への思いはあった」と刺激を受け、自身の成長にも繋がった。
助演男優賞が最も、ふさわしい作品で受賞できたのでは? と尋ねると「(94年の俳優デビューから)30年、真面目に誠意を持ってやってきた。この作品と出会ったのも映画の神様のご褒美かな」と喜んだ。そして「記者さんからも、よく頑張ったねと言われたようなご褒美。うれしいですよ。ありがたい」と口にした。その顔には、柔らかな笑みが満面に広がっていた。【村上幸将】