俳優小松準弥(31)が、公開中の愛知県幸田町町村合併70周年記念映画「サイボーグ一心太助」に主演している。小説、戯曲、講談でおなじみの江戸の魚売り、一心太助が現代によみがえり、サイボーグの「ワンハート」になってAIで世の支配をたくらむ悪と対決する。“バカ映画の巨匠”河崎実監督(66)が、太助の後ろ盾の徳川三代将軍・家光の“天下のご意見番”大久保彦左衛門の地元でメガホンを取る。「あらよ」「おととい来やがれ」と、粋でいなせな太助を演じる小松に聞いてみた。【小谷野俊哉】
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小松が演じるのは、愛知県幸田町「一心屋鮮魚店」の25代目当主で、超伝工業に勤めるサラリーマンの一心太助。魚売りが主役なのに、スクリーンに魚が出てこない。
「実家の鮮魚店を手伝って、出勤前に発泡スチロールで運んでるだけですね(笑い)。特撮は(21~22年)『仮面ライダーリバイス』で仮面ライダーデモンズをやらせていただいてたので、当時の感覚みたいなものがよみがえってきました。アクションもあったので、気を引き締めて頑張りました」
「いかレスラー」「日本以外全部沈没」「ヅラ刑事」などで知られる、河崎監督の映画は初出演。
「撮影のスピードが、すごく早いという印象でした。スタッフさんから『河崎監督は本当に早いよ』ってお聞きしてたんですけど。本当でした。昨年6月に10日間ぐらいで撮ったんですけど、本当にパワフルでした。でも、現場は温かい雰囲気で、僕にも『仮面ライダーで特撮やってたんだから頼むよ』って信頼してくれました。いつもニコニコされてますし、お酒の場も始まる前と終わってから2回ぐらいあったんですけど、そこでも楽しかったですね。いろいろと楽しい時間を過ごさせてもらいました」
一心太助は徳川幕府の三代将軍、徳川家光に“天下のご意見番”として仕えた旗本、大久保彦左衛門のもとで活躍した、江戸・日本橋の粋でいなせな天秤(てんびん)棒担ぎの魚売り。小説、講談、戯曲、映画、ドラマの主人公として、片岡千恵蔵、大友柳太朗、中村錦之助、松方弘樹、山田太郎、杉良太郎、緒形直人などそうそうたる俳優が演じてきた。
「一心太助の作品は今まで見たことなくて、今回のお話をいただいてからいくつか見させていただきました。令和の時代ですけど、太助は困った人を助けずにはいられない粋な感じで生きている。その良さを生かせるように準備してきたものを、そのままスピードに乗せて出していくのみっていう感覚で演じました」
「てえへんだ」「べらぼうめ」「あらよっ」「おととい来やがれ」と、べらんめえ調でせりふをまくしたてる。
「その口調になじんでいなかったですからね。普段なかなか言うことのないセリフだったので、初めに台本を読ませていただいた時はどういう風に言ったらいいんだろうかと、ちょっと不安がありました。だけど、やっぱり昭和の小粋な、とにかく真っすぐで勢いに乗って、誰に対しても優しい。そういう真っすぐを心に持ってやっていると、自然と解き放たれるといいますか、その勢いでみんなを巻き込んでいくエネルギーを集約させてせりふが入って、出てきました」
愛知県幸田町は西三河南部の大久保彦左衛門がお殿様だった地。「超伝合体ゴッドヒコザ」「突撃!隣のUFO」に次ぐ、幸田町商工会製作の河崎監督の特撮映画第3弾だ。
「今回、初めて行かせていただきました。いや、もうめちゃくちゃ温かい町ですね。エアウィーヴとか、AIBOとか、いろいろな工場があるみたいですね。そういう部分でも活気があふれている。やっぱり人がエネルギッシュだなって思います。町をあげて映画を作ろうという活気は、すごくうらやましい。緑も多くていいですね」
自身の出身は宮城県の石巻。2022年(令3)4月から「いしのまき観光大使」を務めている。
「東京に比べると建物の高さもないですし、自然も豊かです。田んぼがたくさんあったり。同じような場所に行くとすごく落ち着くんですね。3・11、東日本大震災の時は高校2年生。大変でしたね。海の前に家があったんで、やられちゃいました。もう壊滅みたいな。仙台から5日間、自宅に帰れませんでした。家族は幸い無事でした」
(続く)
◆小松準弥(こまつ・じゅんや)1993年(平5)12月23日、宮城県石巻市生まれ。13年に「FINE BOYS専属モデルオーディション」でグランプリ。14年に舞台「ロミオとジュリエット」で俳優デビュー。19年(令元)、CD「A Way of Life/Toxic」で歌手デビュー。21~22年、テレビ朝日系「仮面ライダーリバイス」で仮面ライダーデモンズに変身する門田ヒロミ役。183センチ。血液型A。