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文化放送・齋藤清人社長のホンネ「高齢化社会は…」50~60代マーケットに魅力


文化放送の齋藤清人社長は、成熟した「熟年充実社会」の大人世代に焦点を当てたラジオ番組編成でリスナー層を広げています。「オトナのホンネ」キャンペーンを通じて、50代・60代以上のラジオ回帰を取り込み、平日12時間の番組構成が人気を集めています。「長野智子アップデート」などの番組では、新しいパーソナリティーを迎え、リスナーから「聞きやすい」「あたたかい」との評価を得ています。一方で、若者層へのターゲティングも継続し、ラジオの特有の想像力を刺激するコンテンツ作りを目指しています。齋藤社長は、昭和時代の魅力を継承しつつ現代に合った表現を重視、ラジオの自由な表現を活かした番組作りを推進しています。

笑顔でガッツポーズする文化放送の齋藤清人代表取締役社長(撮影・鈴木みどり)

<情報最前線:エンタメ ラジオ>

コロナ禍以降、復権する音声メディアの中心にいるラジオ。50、60代のエルダー世代のラジオ回帰も顕著な中、文化放送が「オトナのホンネ」にフォーカスした番組編成でリスナーの支持を広げている。コア層(主に13~49歳)重視を加速させるテレビ業界とは正反対の視点。齋藤清人社長(60)は、成熟した「熟年充実社会」のマーケットに魅力を感じているという。【梅田恵子】

★テレビとは正反対の視点

現在60歳の齋藤氏は、元気なエルダー世代そのもの。

「『高齢化社会』というとネガティブに語られがちですが、ひっくり返せば『熟年充実社会』ですよ。50過ぎていったん線を引かれちゃうのは、私自身ちょっとさみしい(笑い)。そういう世代にいま1度ターゲットを向けたいというのが、『オトナのホンネ』キャンペーンです」

80年代「ミスDJリクエストパレード」で人気を集めた長野智子(61)をパーソナリティーに迎えた「長野智子アップデート」(月~金曜午後3時半)は、ミスDJ世代のラジオ回帰そのもの。スタート早々、radiko(ラジコ)の聴取者数が1・5倍に伸びて話題になった。早朝5時の「おはよう寺ちゃん」から「くにまる食堂」「大竹まことゴールデンラジオ!」「長野智子アップデート」まで平日12時間の流れを整え、10月改編でも女性アナウンサーを起用した「おつかれさま」(火~金曜午後5時45分)、「オトナのホンネ」(火・水曜午後7時)などの新番組投入で路線を強化している。

「皆さん言葉選びやコミュニケーション力が抜群で、リスナーの皆さんからは『聞きやすい』『あたたかい』といった声を多くいただきます。デジタルな多メディア時代こそ、アナログな表現力が必要とされているのを実感します」

★もう少し自由だった時代

中でも、伊東四朗(87)のトークの大ファンという(土曜午後3時「伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛」)。「選挙で開票と同時に当確が出るのが納得いかないとか、自転車の“ながらスマホ運転”への罰則強化に『遅ぇよ』とか(笑い)、肩が凝らないオトナのホンネの面白さを、オープニングだけでものぞきにきてほしい」と話す。

オトナ路線で目指しているのは「もう少し自由だった時代」のラジオの継承だ。

「文化放送は06年に移転するまで四谷にあったのですが、当時の古い社屋の話になると皆さん楽しそうなんですよ。私も、会社の夢を見る時は今でも四谷なんですよね。ハサミでチョキチョキして編集したテープをなくして探し回る夢とか(笑い)。アナログ時代の喜怒哀楽の面白さみたいなものを、浜松町に持ってくればいいのにな、って」

ホンネを言うのも気を使う世の中にあって、昭和パワーが令和と“共理解”していく痛快を描いたドラマ「不適切にもほどがある!」には刺激を受けたという。

「引きずっちゃいけない古い価値観は置いていくけれど、バイタリティーみたいないいところはしっかり継承していくのがオトナ世代の役割だと思う。ラジオはまだ少し自由かなと思うので、決して昔話や自慢話でなく、伝える役目というのは担っていかないと」

★ラジオならではの想像力

20年の社長就任直後は、90年代後半に生まれた「Z世代」と呼ばれる若者層の開拓から着手してきた。現在も深夜帯や土日は若者ターゲットを意識した編成を維持しており、「オトナ世代に切り替えたというより、両方ですね」と、さっそくホンネ。「『大人の事情ですから』という事情が人ごとではなく自分ごとになったら、極端な話、20代でもオトナ世代」と大胆に解釈して笑わせた。

刺激したいのは、やはりラジオならではの想像力という。「耳から誰かのホンネが入ってきたり、思いがけず40年前に聞いた曲が飛んできたりという刺激を通して、何かを想像したり、思いをはせたり。そういうラジオの楽しさを受け取ってもらえたら、別に文化放送じゃなくてもいいんです」と、とびきりのホンネで結んでいた。

◆齋藤清人(さいとう・きよと) 1987年3月、早大文学部を卒業し、同4月文化放送入社。編成部次長、制作部長、セントラルミュージック社長などを経て、19年に文化放送取締役、20年12月に社長就任。

◆「オトナのホンネ 文化放送」 50、60代以上の“オトナ世代”の関心や好奇心に応える番組作りキャンペーン。今年4月から展開中。「近藤真彦RADIO GARAGE」の近藤真彦(60)、「林家たい平 たいあん吉日!おかしら付き♪」の林家たい平(59)、「長野智子アップデート」の長野智子(61)、「ますだおかだ岡田圭右とアンタッチャブル柴田英嗣のおかしば」の岡田圭右(56)がアンバサダーを務めている。

■中学で感じた「ワクワクさせる力」

齋藤社長は小学校のころからのラジオリスナー。「最初はプロ野球中継ですよね。テレビの中継時間が終わると『続きはラジオで』という時代で。高校生の時に、他局ですけどビートたけしさんのオールナイトニッポンが始まって衝撃を受けて。音で表現する媒体の魅力を感じました」。

87年に入社し、主に制作畑でキャリアを積んできた。失敗談を聞くと「山ほどあります」と大笑い。「オープンリールのテープの時代ですからね。1本目の番組を収録したテープに2本目を上書きしてしまい、あす納品の番組が消えてしまった地獄とか。携帯電話もない時代になんとか出演者と連絡をとって夜中に集まっていただいたり」。

ついでに先輩アナウンサーの失敗談も。「『打った、同点ホームラン、3対1、1点差!』って、全部違ってる(笑い)。話題になりましたが大きなおしかりはなく、リスナーの方が大人というのもラジオの良さだと思います」。

ラジオの魅力は、入社早々に体感した。「中学のころ、『全日本歌謡選抜』という音楽番組があって、リクエストを集計する文化放送1階“情報コントロールセンター”の近未来的な音にわくわくしたのですが、入社したら、そんな部屋はなかったと分かった(笑い)。1スタに効果音をつけていただけだったんですけど、うれしかったですね。コンピューターを想起させる音とネーミングだけで人をわくわくさせる力がラジオにはあるんだと」。

■ライオンズ日本一の放送を

80年代から「文化放送ライオンズナイター」を放送する同局だけに、西武ライオンズがパ・リーグ最下位に終わった今シーズンに齋藤社長も悔しそう。「球界の盟主といわれて、それこそオトナ世代には常勝軍団の時代のイメージがある。やっぱりライオンズは強くないと」。また「26年ぶり日本一に輝いた横浜DeNAの頑張りに刺激を受けたはず。ぜひ来年巻き返していただいて、ぜひ文化放送でライオンズ日本一の放送をしたいです」。

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