黒木華(34)が30日、東京・イイノホールで行われた主演映画「アイミタガイ」(草野翔吾監督、11月1日公開)完成披露試写会に登壇。檀上で、1979年(昭54)にコーラスグループ「パル」の代表曲「夜明けのマイウェイ」をカバーした同名主題歌の歌唱を褒められ、照れた。
黒木は劇中で、ウエディングプランナーとして働く秋村梓を演じた。中村蒼(33)演じる小山澄人の気持ちを知りながら、なかなか結婚を受け入れられない中、藤間爽子(30)演じる親友の写真家・郷田叶海が唐突に命を落としたという知らせを受ける。黒木は、役どころについて「仕事を考えつつ、傷つきながら何とか前に向かって進んでいきたいけれども、進めなかったり、生きている上で悩みは多いけれど…皆さんに共感してもらえるような、すぐ隣にいる役」と評した。さらに「梓の気持ちがよく分かりましたし、人と人とのつながりを感じられる役」と続けた。
「夜明けのマイウェイ」のカバーについて話を向けられ、場内で拍手が巻き起こると、手を振って照れつつ「私、いつ歌います、と言ったか覚えていない。記憶がない」と照れ笑いを浮かべた。中村から「プロデューサーが『カラオケに行かないの?』とか小出しに吹きこんで、誘導したと聞いた」と突っ込まれると「外堀を埋められて…私は歌うんだと」と笑った。
藤間から「すてきな歌なので、得意なのかと」と言われると、黒木は「やめてください…恥ずかしい」と、また照れつつ、レコーディングの裏側を明かした。
「本当に、曲自体、難しい、歌唱指導の先生に入っていただき、1音、1音意識しながら入ろうと言ったんですけど…先生の言い方が優しかった。『黒木さんは役者さんなので、梓の気持ち…歌詞の方を意識したら大丈夫です』と力づけていただき、何とかやり遂げられた」
「アイミタガイ」は、2013年に刊行された中條てい氏の小説「アイミタガイ」の実写映画化作品。連作短編を、1本の映画にまとめた。19年「台風家族」の市井昌秀が脚本の骨組みを作り、11年「ツレがうつになりまして。」で知られる佐々部清監督が魂を注いだ企画だったが、同監督が20年3月に新作準備中の山口県下関市の宿泊先ホテルで、心疾患のため62歳で急逝。その思いを、25年2月7日に「大きな玉ねぎの下で」の公開を控える、草野翔吾監督(40)が、親友同士の梓と叶海、二人の関係を軸に、一期一会の連鎖が大きな輪になっていく群像劇を紡ぎ上げた。
舞台あいさつには、中学生の梓を演じた近藤華(17)と中学生の叶海を演じた白鳥玉季(14)も登壇した。
◆「アイミタガイ」 ウエディングプランナーとして働く梓(黒木華)のもとに、ある日突然届いたのは、親友の叶海(藤間爽子)が命を落としたという知らせだった。交際相手の澄人(中村蒼)との結婚に踏み出せず、生前の叶海と交わしていたトーク画面に、変わらずメッセージを送り続ける。同じ頃、叶海の両親の朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、とある児童養護施設から娘宛てのカードを受け取っていた。そして遺品のスマホには、たまっていたメッセージの存在を知らせる新たな通知も。一方、金婚式を担当することになった梓は、叔母の紹介でピアノ演奏を頼みに行ったこみち(草笛光子)の家で中学時代の記憶を、ふいに思い出す。叶海と2人で聴いたピアノの音色。大事なときに背中を押してくれたのはいつも叶海だった。梓は思わず送る。「叶海がいないと前に進めないよ」。その瞬間、読まれるはずのない送信済みのメッセージに一斉に既読がついて…。