山崎育三郎（38）が、日本のオリジナルミュージカルの創作という宿願を果たすべく、所属事務所・研音の明日海りお（39）と古川雄大（37）に呼びかけ、立ち上げたミュージカル「昭和元禄落語心中」の上演が決定した。企画・制作の梅田芸術劇場と研音が9日、発表した。
演出は「エリザベート」など、あまたの大作を手がけ、山崎、明日海、古川とも縁の深い、宝塚歌劇団所属の演出家、小池修一郎氏（69）が担当。山崎、明日海、古川の、3人そろい踏みでの共演は、今作が初めて。
「昭和元禄落語心中」は、漫画家・雲田はるこ氏の漫画が原作。戦前から平成に至る落語界を舞台に、人々の多彩な生きざまを描き、16、17年にアニメ化、18年にはNHKでドラマ化された。物語の舞台は昭和初期で、落語の世界に入った菊比古（八雲）は、同期入門の天才・初太郎（助六）と固い友情で結ばれる。芸者みよ吉にも支えられ、切磋琢磨（せっさたくま）する二人。だが彼らの関係は、思いもよらない道筋をたどっていく。
天才肌で華のある落語家として注目を集め、豪放磊落（らいらく）な性格で周囲を魅了する初太郎（助六）を、山崎がドラマ版から続投する。ドラマ版では岡田将生（35）が演じた、繊細な性格で初太郎の才能に焦りを感じながらも精進し「昭和最後の大名人」と称される菊比古（八雲）を古川が演じる。ドラマ版では大政絢（33）が演じた、初太郎と菊比古と懇意になり、その人生に大きく関わることとなる芸者みよ吉を明日海が演じる。
山崎はドラマ版と同じ初太郎を演じるだけに、その深化に期待が高まる。また古川とは、帝国劇場でのミュージカル「モーツァルト！」で、主人公のヴォルフガング・モーツァルト役をダブルキャストで務めるなど、実際に切磋琢磨（せっさたくま）する間柄だけに、今作で因縁の2人をどう演じるかにも注目だ。
山崎は、12歳だった1998年（平10）に、シンガー・ソングライター小椋佳（80）が企画・音楽を担当し、87年～08年まで上演されたジュニアミュージカルシリーズ「アルゴミュージカル」の「フラワー」でデビューした。同シリーズは基本、原作のないオリジナル作品を上演してきた経緯があり、山崎は同作への出演という自身のルーツからも、日本ミュージカル界の発展のためにオリジナルミュージカルの創作は不可欠と思い続けてきた。
そして、6年前のドラマ版の撮影中から「ぜひミュージカルにしたい！」と「昭和元禄落語心中」の作品性に魅了され、ミュージカル化を思い立った。そして、4年前に稽古場で小池氏に明日海と古川を交えての企画立ち上げを提案。自ら事務所に掛け合い、明日海と古川に声をかけた。一方で、小池氏も雲田氏に直接、ミュージカル化が可能か話を持ちかけ、快諾されたことで企画が実現した。
山崎は、今年の4月24日にリリースした6年ぶりのオリジナルアルバム「The Handsome」も、劇作家・演出家の根本宗子をプロデューサーに迎え、この世で最もハンサムな結婚詐欺師“ハンサム”の物語を紡ぐ、ミュージカルを見たかのようなアルバムとして完成させた。その制作の根底にも、日本発のオリジナルミュージカルを作りたいという思いが通底していた。経験を積んだ山崎が「今だからできると思った」と語る、渾身（こんしん）の日本発・和物オリジナルミュージカルとなる。
東京公演は25年2～3月まで東急シアターオーブ、大阪公演は同年3～4月までフェスティバルホールで上演。福岡公演も予定されており詳細は後日、発表される。
◆「昭和元禄落語心中」昭和最後の大名人・有楽亭八雲に、押しかけ弟子入り志願した元チンピラ・与太郎。内弟子など一切取らぬはずの八雲が、何のきまぐれか与太郎を受け入れることに…。そこから始まる、夭逝（ようせい）した伝説の天才落語家・助六と、彼の影を追いながら1人、落語界に残された八雲の、知られざる因縁噺とは。「ITAN」（講談社）で10～16年まで連載され、13年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第38回（2014年度）講談社漫画賞一般部門、17年には第21回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。23年には「BE・LOVE」（同）5月号に「昭和元禄落語心中 番外篇～栃木市立美術館展覧会レポ～」が掲載された。
