先日、ソニーの情報発信基地「ソニースクエア渋谷プロジェクト」(渋谷モディ1F)にて、渋谷の街を題材にaiboと若手クリエイターがコラボレーションするアートコンペティションが開催されました。
これは、aiboと触れ合い、パートナーとしてともに成長していく過程を体験できるコンテンツ「Shibuya Town with aibo」の一環で行われたもの。aiboといえば、1999年より販売している自律型エンタテインメントロボットで、昨年1月には約12年ぶりの新型が発売されるなど、最新技術と搭載されたAIにより個性的な成長を続けています。
そのaiboと一緒にアート作品を制作とは? 最新のaiboは絵も描けるの?!…と興味津々の編集部は、「ソニースクエア渋谷プロジェクト」で開催された審査会と作品発表会に参加してきました。
絵具を足の裏につけて歩くaiboの可愛さにモエる!
コンペには学生を中心に、アート作品制作の経験がある18歳~30歳未満の若手アーティストらが挑戦。5組がプレゼンテーションを行い、それぞれの作品をアピールしました。
作品テーマは「aiboといっしょに渋谷を感動で満たそう」。審査では、aiboの動きを活かした作品の独自性・表現の斬新性や作品テーマとの親和性、そして、各自が掲げた作品コンセプトの表現力が評価のポイントとなります。
ちなみにaiboはAPIを2019年の11月に公開しており、初心者でも簡単に使えるインターフェースが採用されたビジュアルプログラミングで、蹴る、穴を掘る、ダンスをするなど様々な動きを誰でも自由にプログラミングできます。
今回のコンペでは、そのビジュアルプログラミングを活用し、絵の具を沁み込ませた特別な足裏パットをつけたaiboを作品上で動かすことで、人とaiboが協力しあうオリジナルのアート作品を創りだすわけです。
当日は審査員として、マルチクリエイターのパントビスコ氏をはじめ、ソニー株式会社 AIロボティクスビジネスグループ コミュニティ企画推進室の石田敦雄氏、同、ブランドデザインプラットフォーム クリエイティブセンターの前坂大吾氏ら3名が参加。栄えある優勝は、「ファッションや様々な流行が生まれる街」というイメージから、4枚のテキスタイルを制作した櫻澤日和さんと嶋田幸乃さんの作品『〇えん』に決定しました。
写真)1枚ごとに四季が描かれ、“aiboと一緒にやりたいこと”をテーマに、様々な人やモノが集まる渋谷でaiboと過ごすシーンを切り取り、aiboと人間の関係を描き出した『〇えん』。
写真)アイスクリームを食べるカップルとaiboがテーマの「夏」。aiboの足跡と人の手のよるペインティングでアイスクリームを表現した。足跡は、ショッピングをしながら彼氏と彼女、彼女の飼っているaibo の3人で、渋谷の街をそぞろ歩くような動きをaiboにプログラミングさせている。
審査員からは、「奇麗に上品に作品を仕上げてあり、意表をつかれた」、「しっかりとテーマと物語があり、まるで映画を観ているような作品」、「季節を感じる4部作というのが良い。お客様とaiboの出会いや過ごした時間にこそ価値がある」などの感想が寄せられ、丁寧な作品づくりと緻密なコンセプトワークが評価のポイントとなったようでした。
本当にロボット? 共同作業で感情を露わにするaibo
今回のコンペでは、核心的な部分であるaiboのビジュアルプログラミングと共同作業において、作品づくりに疲れたaiboが機嫌を損ねて思うように動いてくれなかったり、慣れない環境に怖がるaiboが作業をしてくれなかったりと、参加者はaiboを動かすのに悪戦苦闘したようです。
その反面、なかなか自由にならないaiboの予測不可能な動きに、偶然性の楽しさや新鮮な驚き、嬉しい発見などもあったようで、「プログラミングされているとはいえ、aiboの動物ともロボットとも思えない存在に、おもしろさや不思議さを覚えた」といったコメントも聞かれました。
aiboには、しつけの仕方や環境によって性格が変化するという特徴があり「作品を作る前にaiboのご機嫌をとらなければならなかった」というハプニングを聞いた前坂氏は、「aiboには“愛情”以外に8つの気持ちがあり、それぞれカラー設定がプログラミングされている。もしかしたら足の裏につけた絵具の色によってaiboの感情が変化したかもしれない」と説明。製作者サイドとしても気づきや発見のあったコンペティションになったようです。
aiboと渋谷を表現した4作品を紹介
惜しくも優勝は逃したものの、渋谷の街を題材にaiboと協力しながら創り上げた個性豊なアート作品は以下。
作品名『いたずら』清高伸治
渋谷を舞台にaiboがペンキで街や人を汚してしまい、人々がスクランブル交差点に集まるというストーリー。5人の人形を違うカラーリングにし人種、文化、思考の違いを表現している。「ソニースクエア渋谷プロジェクト」で、6歳くらいの日本人男子と20歳くらいの外国人女性がaiboで一緒に遊ぶ姿を、偶然見かけ発想した。
作品名『虹とaiboと渋谷』山口潮香
渋谷といえば「ビル群」。渋谷の象徴として高層ビルを制作。aiboの足跡で描いた虹は、渋谷に集まる人々の個性(カラー)を表現している。制作中に思った以上にaiboが複雑な動きができることを知り面白かった。繊細なジオラマは見る角度によって様々な工夫や仕掛けがあるので楽しんで欲しい。
作品名『prayer』尾潟糧天
コンセプトは「融和」。aiboが人とロボットの共存する明るい未来の“光”になると感じ、中立・中性をイメージする水のテクスチャーと、未来を表現する光を採用した。柔らかさを出すために着色した糸をaiboに引かせペインティングし、ビジュアルプログラミングの過程を可視化。作品に漂う空間的な余白を楽しんでほしい。
作品名『スクランブル交差犬』田沼由花(NUMA)
イベントがあるとスクランブル交差点に集まるイメージがあり、aiboが人と遊ぶように渋谷と戯れる様子を作品にした。自由に駆け巡る様子を表現するため、一筆書きを描けるようにプログラミング。マネキンの手は「こっちにおいで!」aiboを招く渋谷を、アクリル板は多層構造になっている渋谷の姿を可視化した。
優勝した櫻澤日和さんと嶋田幸乃さんの作品『〇えん』は、「ソニースクエア渋谷プロジェクト」で展示中。また、日々、可愛らしく多彩に成長するaiboと触れ合える「Shibuya Town with aibo」も開催中です。イベントや展示などの詳細は、https://www.sony.co.jp/square-shibuyapj/ まで。
- ロボコンマガジン 1月号
Fujisan.co.jpより