1968~1969年にかけて放送された人気アニメ「妖怪人間ベム」(フジテレビ)が放送50周年を迎えたのを記念し、初回放送分全26話+パイロット版「妖怪人間ベムパートⅡ」を収録したDVDブック「妖怪人間ベム COMPLETE DVD BOOK」が発売される。
第1巻 6月28日
第2巻 7月26日
第3巻 8月30日
(全3巻)
「それは、いつ生まれたのか誰も知らない。暗い音のない世界で一つの細胞が分かれて増えていき、三つの生き物が生まれた。彼らはもちろん人間ではない。また動物でもない。だが、その醜い体の中には正義の血が隠されているのだ。その生き物...それは、人間になれなかった妖怪人間である。」
有名なオープニングナレーションで始まったアニメは、50年の長きに渡り人気が継続している。
初代の「妖怪人間ベム」はこれまで何度も再放送されているが、年月が経つにつれ時代にそぐわない差別表現などが特に多く入っているため、見ている途中でセリフに“ピー音”や無音部分が急に入っていたりしたものだ。
今回のDVDは再放送を自粛している回や配信の出来ない回も全て収録していると聞いて驚いた。
ちなみに第1巻は、1968年10月7日放送の第1話から第9話まで収録されている。
第1話「恐怖の貨物列車」
第2話「階段を這う手首」
第3話「死びとの町」
第4話「人魂 (放送時旧題:せむし男の人魂)」
第5話「マネキン人形の首」
第6話「悪魔のローソク (放送時旧題:悪魔のろうそく)」
第7話「呪いの幽霊船」
第8話「吸血鬼の寺」
第9話「すすり泣く鬼婆」
< vol.1 ブックレット内容>
・TV版1~9話ストーリー &ゲストキャラクター紹介
・変身シーン連続キャプチャ集
・キャラクター紹介1.ベム
・厳選!!絵コンテ集
・イラストギャラリー
・未公開ラフ画稿
・新作「BEM」情報
新作オリジナルアニメ「BEM」7月スタート
1968年に誕生し、アニメ・実写ドラマと様々なリメイクを重ねてきた「妖怪人間ベム」今年、50年の時を経て、強力スタッフ・キャスト陣によって新たに生まれ変わる!完全新作アニメーション「BEM」2019年放送決定!#BEM#妖怪人間ベム
— アニメ「BEM」公式 (@newbem2019) 2019年2月7日
続報は@newbem2019と公式サイトhttps://t.co/UeoCERuwnMにて発表! pic.twitter.com/b6xlARj48i
2019年7月から完全新作アニメーションとして『BEM(ベム)』(テレビ東京系列など)が放送される。
ベム、ベラ、ベロ、3人のビジュアルがかなりカッコよくブラッシュアップされた感じ。番組HPのINTRODUCTIONを読むと未来的な設定を感じるので昭和作とは本当に別物と思って見たほうがいいように思う。でも「“はやく人間になりたい!”」という夢のために展開するコンセプトは変えないでほしい。
どうして50年も人気なの?
「妖怪人間ベム」がどうして50年経っても新作が作られる程に人気なのか? その理由につながるかはわからないが、この作品の“味”なところを少しつまんでみたい。
◯原作が漫画ではなくオリジナル作品である
昭和40年代頃のアニメ・特撮は、“原作の漫画が先でテレビ化は後”という作品が普通だったが、「妖怪人間ベム」は制作会社が考案したオリジナルである。つまり、漫画からの前情報やイメージがなくスタートしたためインパクトが強かった。
◯無国籍的な作風
ベム、ベラ、ベロは妖怪人間なので見た目が普通じゃないとしても、他に出てくる人物も目の色や髪の色が様々で、建物などが北欧のお城風だったり、だけど言葉は日本語…これはどこの国の設定なのかと誰もが違和感を覚えたはず。実はこれが“無国籍アニメ”の先駆け的作品だったと思う。無国籍だったから怖さを半減できて子どもも楽しく見られたのかもしれない。例えば、当時人気だった“怖い系”のアニメや特撮に「ゲゲゲの鬼太郎」「河童の三平」「怪物くん」「怪奇大作戦」等があったが、日本丸出しで怖さにダイレクト感があった。
この作品は世界観が異色だったことも人気の要因だった。
◯なんだかいつもかわいそう
よーく思い返すと、3人は何の確信があって「正義を貫き悪を倒せば人間になれる」と思っていたのか? がよくわからない。おそらく3人も、悪を何体倒せば? 誰に頼めば? その方法は? いつどんなふうにして人間になれるのかわからないままに、ただ日々を生き抜いていたはず。
毎回、悪の魂を持つ妖怪と戦って人間を救うわけだが、たいがい3人は人間に感謝されることもなく気持ち悪がられる。そしてベロが「ひどいよ、オイラたちあんなに頑張ったのに」などと嘆くと、ベムが「いいんだよ、これで」とクールに言い捨て、ベラは呆れたように笑う・・・そんな感じで終わるのだった。
いつもかわいそうで報われない3人を応援したくて子どもは見ていたのかもしれない。
◯さらに最終回がかわいそうすぎる
第26話の最終回「亡者の洞窟」は、虚しくかわいそうな最後で終わる。
人の魂を抜いて食べてしまう姉妹の妖怪が住む屋敷がある。この中に入った人間の夫婦と子供を助けようとベロが屋敷に潜入するが、逆に捕えられ魂を抜かれてしまう。だが、ベロの魂は妖怪の口に合わず、肉体と一緒に捨てられる。捨てられた場所には、魂が抜かれて行き場を失った人間がうごめいていた。
ベムとベラが屋敷に潜入。
この時ベムは、“人間の魂と自分達の魂を入れ替えれば人間になれる”と気づくのだ。子供の体にベロの魂を入れれば人間になれる、とベラは言うが・・・
ベム「だが、この子を殺すことになる。それに自分たちが人間になってしまったら、悪い妖怪を見つけることができなくなってしまう」
犠牲になる人間が必要になるため、彼等は人間になるのを諦めるのだった。
二人が妖怪姉妹を倒すと、食べられた魂は元の人の体に戻っていった。ベロの魂も肉体に還りひと安心と思いきや、妖怪がいるという市民の通報で駆けつけた警察署長の命令で屋敷に火が点けられ瞬く間に炎に包まれる。そして焼け跡からベロの靴、ベムの帽子が見つかるのだった。
最後のナレーションはこうだ
「3匹の姿は消えた。彼らは死んでしまったのだろうか?
いや、彼ら正義の魂が死ぬはずはない。
きっとどこかで生きているはずである。
もし、あなたの周りで怪しい出来事が起こり、それが人知れず解決しているようなことがあったならば、彼ら三匹が活躍してくれたのだと思う。
そして、妖怪人間ベム・ベラ・ベロに感謝をしようではないか」
・・・当時リアルタイムで見ていた子どもは、きっと純粋な心で最終回は3人が人間になってハッピーエンドでおしまい…と思っていたのではないだろうか。しかしその期待を完全に裏切り、こんな悲しい結末で物語は終わったのだった。ただ、唯一救われたのは“妖怪人間ベム・ベラ・ベロに感謝しよう”と言ってくれたことだった。
◯実は幻の第27話が!?
本当は第52話まで制作される予定だったが諸事情で半分の26話で打ち切りが決定した。制作サイドは続編もあると考えて最終回を3人が死んだのかどうか曖昧な完結にしている。
そして第27話を「実は生きていた妖怪人間ベム」として企画し、フジテレビだけでなく他局にも持ち込んだが実現しなかったそうだ。
- 昭和40年男 No.42 (2017年03月11日発売)
Fujisan.co.jpより