『家呑みよりも、気になる町で独り呑み』今回は<港区三田・芝>に繰り出します。
そこは『高輪ゲートウェイ駅』の誕生で激変するエリアのすぐお隣。かつては「江戸開城 西郷・勝 会見之地」となり、落語「芝浜」の舞台にもなった地域です。(駅名公募でも「芝浜」を推す声が多かった)
薩摩藩邸などの武家屋敷から慶応義塾の“城下町”となったこのエリアのおすすめは「慶応仲通り商店街」。
路地が入り組み、雀荘や質店の看板が昭和の風情を醸し出している。
ぜひ目に焼きつけておきたいのが100年の歴史をもつ注文紳士服・学生服の店「佐藤繊維K.K洋服部」さん。この日は運よくガラスの向こうに老店主の姿を見ることができました。
古い建物を再利用した店も多く、懐かしい街並みが残っていますが、よく見ると新しい店もたくさん出来ています。その中の1軒が『日比谷BAR WHISKY-S III』。
<世界5大ウイスキーと自家製燻り惣菜を愉しむお店>の謳い文句通り、世界のウイスキーを飲み比べできる「ウイスキーフライト」が人気のお店。10ミリリットルずつ飲み比べできるセットメニューで、海外では飲み比べを「フライト」と呼ぶことがメニュー名の由来だそうです。
早速、『スコッチフライト(グレンフィディック・マッカラン・ボウモア)』を注文。写真と解説付きのプレートに入ったグラスが運ばれると、バーテンダーさんが呑み比べの順番(グレンフィディック真ん中⇒マッカラン左⇒ボウモア右)を教えてくれます。実はどれも呑んだことのあるウイスキーですが、呑み比べするのは初めてなのでチョット楽しみ。
まずは「グレンフィディック12年」から…確かにトップバッターにふさわしい呑み易さ。(スペイサイドの大地で厳選された原材料の大麦、ハイランド地域の新鮮な空気と小型蒸溜釜でつくられた素晴らしい味わいのモルトだそう)
続いて「ザ・マッカラン12年」は…グレンフィディックより香りが強い。(厳選されたシェリー樽で熟成させた原酒を使用。最もスタンダードなマッカラン)。
最後は「ボウモア12年」だが…やはり最も癖があって香りも強烈。比べて呑むとより一層違いがわかるからおもしろい。(潮の香りを呼吸するスコッチウイスキー。200年以上の間、スコッチの歴史と伝統をつむぐ海のシングルモルトだそう)
ボウモアといえばグルメ漫画『美味しんぼ』に描かれたアイラ島の風景が思い出される。(漫画では「ボウモアは水(常温)と酒を1:1で割って呑むのが良い」とされていた)
呑み比べが終わったら、次は好みの酒を注文。店内には約90種類の酒があるそうですが、迷わず選んだのは「タラモアデュー」。ボウモアを呑んでいたら、村上春樹の名著『もしも僕らのことばがウィスキーであったなら』を思い出したからです。(アイルランドの章で「タラモアデュー」を呑む老紳士が登場する)
そう、「タラモアデュー」はアイリッシュウイスキーを代表する名ブランド。注文するとバーテンダーさんが「ワイングラスでお出ししてもよろしいでしょうか」と尋ねてきます。これは香りを愉しむためのサービスで、氷にもこだわりがあるという。
聞けば「南アルプスの天然水を3日間かけてゆっくり凍らせた氷で溶けにくく、最後の1滴まで美味しく飲める」とのこと。味の特徴はアイリッシュウイスキーらしいフルーティーさと甘さにあるそうです。
お酒のアテにはバーテンダーさんおすすめの「三田名物 チーズべったら」と「塩サバの燻製直火焼き」をチョイス。どちらも香りの強いお酒に引けを取らないほど主張の強い一品。(締めの一品には「海老のカツサンド」がおすすめです)
この日は、貸し切りの予約時間の都合で早めの切り上げることに。滞在時間はわずかでしたが、独り呑みを堪能できました。同店なら気さくなバーテンダーにあれこれ質問しているうちにお酒が進みます。皆さんもいろんな“フライト”を試して、自分好みのウイスキーを見つけてみてはいかがでしょう。
ちなみに客層は周囲に大企業(NEC、森永、長谷工コーポレーションなど)や大使館が点在する為、学生よりも大人が多く、おすすめはゆっくり呑める土日の夜だそうです。
店名:『日比谷BAR WHISKY-S III』
住所:東京都港区芝5-16-7 芝ビル1F
営業時間:17:00~23:30(ラストオーダー23:00)
電話:03-6436-9376
- 東京カレンダー 2019年1月号 (2018年11月21日発売)
Fujisan.co.jpより