二部構成の構造で今年メガヒットしたアイディア映画『カメラを止めるな!』。実は、アメリカ産のアイディア映画が現在、日本で公開されているのをご存知でしょうか?
それが、全編を通してパソコン画面の映像で展開する映画『search/サーチ』。
その斬新な手法が話題になり、2018年のサンダンス映画祭で観客賞に輝いたサスペンス・スリラー。一体、どういう事なんでしょう?
最大の特徴は全編パソコン画面
上記にも記した通り、本作の最大の特徴は全編を通して、パソコン画面ということ。つまり、スクリーンには常にパソコンの画面が写っているという状態なんです。「そんなのが面白いの?」とお思いでしょう?
冒頭から過去の記念写真やホームビデオ映像を再生しているパソコン画面。その映像は、家族の成り立ち。若い男女が出会い、恋に落ち、結婚。娘が生まれ、成長の様子。絵に書いたような幸せ家族と思いきや。奥さんの病気が発覚。闘病の様子。そして、高校生へと成長した娘との記念写真は父と2人だけに。
奥さんの死を示唆する、この冒頭5分で号泣ですよ。物語は、この段階では想像もつかない、まさかの飛んでもない展開に発展!
娘が行方不明
父と娘のテレビ電話。なんだか余所余所しい娘。「友達に会いに行く」と言って切られた電話。その後、連絡のつかない娘。心配のあまり、娘の友達に電話したことで行方不明と発覚。
ここからがパソコン画面の本領発揮なんです
娘のパソコンを覗き見
娘のパソコンで娘の行方を知っていそうな人間を探し出すPC探偵ミッション発動!
メールなどを駆使して、SNSのパスワードを割り出すわ、娘の交流関係をWordでリスト化するわ。複数で開かれたマルチ・ウィンドウにより、PC探偵=パパの捜査が同時進行で進んでいく様はエキサイティング。
追い込まれていく主人公
事件の担当刑事との連携もパソコンベース。そんな全力捜査で解ってくるのは、家では明るい娘の孤独な一面。それは、娘の事を理解しきれていなかったという父の不甲斐なさ。娘不在の状況との哀しみコラボにメンタルをバッキバキにやられてしまう主人公。
どんどん大事件に
パソコンに流れてきたニュース映像により、事件はアメリカ全土を巻き込んだ大事件に発展していく急なスリラー展開。もはやジャンル無双な一本でもあるんです。
斬新な手法に目をとられがちなんですが、サスペンス映画の様々なパターンをミックスさせたような脚本が上手いです。一寸先も闇な先行き不透明な世界へ誘います。
異例の大ヒット
本作の主演は、韓国生まれのアジア系ハリウッド俳優のジョン・チョー。『アメリカン・パイ』シリーズや『スター・トレック』シリーズにも出演している知る人ぞ知る人気者。娘役を演じるのミシェル・ラーも韓国系。そうなんです!!ハリウッド映画には珍しく、アジア系の家族を主人公にしたのが本作なんです。
そんな主人公一家の設定が、昨今のホワイトウォッシング反対運動(どの役も白人にしちゃうキャスティング)とマッチ。そんな後押しもあって、最初は全米9館の劇場で公開されたのが、1207館へ拡大されたんです。サンダンス映画祭でプレミア上映された後、大手ソニー・ピクチャーズが配給権を獲得。
ヒットの理由
愛する娘の知らなかった一面も1台のパソコンが全て露にしてしまう。そんなリアリティは、交流、買い物、銀行口座の管理などなど日常生活の大半をオンライン上で済ませられてしまう現代社会で生きる人々の胸に刺さります。
今に生きるからこそ迫る極上のサスペンスを是非、劇場で体感してみて下さい。
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- ニューズウィーク日本版 Newsweek Japan 2018年11/6号 (2018年10月30日発売)
Fujisan.co.jpより