『家呑みよりも、気になる町で独り呑み』今回は<目黒区自由が丘>に繰り出します。
平日の夜も、自由ケ丘駅周辺は人、人、人。単なる人の多さなら渋谷や新宿の比ではありませんが、その住民比率の高さを考えると「自由ケ丘の人気は凄い」となるのです。(さすがは“住みたい街ランキング”不動の上位)
凄いといえば、自由が丘の「変わらない街並み」。その象徴的な存在が駅前の「自由が丘デパート」です。昔ながらの個人商店が多数入居するレトロな異空間は、館内を歩いて回るだけで楽しくなる貴重な東京遺産です。
今宵はそんな自由が丘がホームグラウンドという某局のプロデューサー(以下P氏)と会食。独り暮らしの彼がすすめる和食の店で2人呑みとなりました。
その店は駅前のロータリーから少し離れたビルの地下。地下へと続く階段を下っていくと「ちそう」と書かれた白い暖簾が現れます。
L字カウンターの隅に陣取り麦焼酎で乾杯。会食の目的は「夏の特番の反省会」でしたが、あっという間に反省は終わり、次の議題は目の前で腕をふるう板さんたちの料理へ。
プロの包丁技は心地よく、ずっと見ていても飽きません。特に秋の和食は盛り付けを見ているだけで楽しくなります。そんなカウンター席ならではの醍醐味を感じつつ、先附、八寸(豆皿五点盛と進みます。
「お造里旬の鮮魚」は鯛と鮪がバックを務め、センターには旬の太刀魚。
続く「焼き物」は「秋刀魚肝だれ焼き」、これがこの日一番の秀作でした。脂の乗った身と肝ダレが絶妙で、思わずお酒がすすみます。次の「鱧柳川小鍋」をフウフウしながら掻っ込んでいると、隣のP氏が肘でツンツン。ん、と横を向くと、いつの間にかカウンター席はほぼ満席。しかも、私たち以外は全てカップル。
どうやらP氏は一組のカップルが妙に気になるらしい。ちょっと派手めの男性と超がつくほど真面目そうな妙齢の女性客。(う~ん、これはたしかに気になる)いったいどんな関係なのか?あれこれ想像してしまうのが人の性というもの。(もちろんご夫婦かもしれないし、単なる仕事仲間かもしれないのですが…)
一度こうなると他のカップルも何やら“訳アリ”に見えてしまうから不思議です。幸いカウンター席なので、カップルさんたちの目は板前さんの手元に集中し、耳は会話に集中していたので、私たちの存在は眼中にないご様子。
こうした人間観察もカウンターの醍醐味のひとつかもしれません。食事は「松茸と新銀杏の土鍋おこわ」に香の物。デザートの甘味もいただきお会計と相成りました。
すっかり人通りも少なくなった自由通りを駅へと向かう途中、P氏がこんなことを言い出しました。もしかしてカウンターのカップルさんたちは、おっさん2人で座っていた私たちを“訳アリ”な2人と思って見ていたのではないか?
言われてみれば、大人のデートにうってつけのステキなお店で、カウンターにおっさん2人が並んで座り、楽しく談笑となれば…。彼らは私たちを気にしていなかったのではなく、見てみぬふりをしていたのではないか…。
人気の自由が丘でおしゃれなカウンターの店に行くなら、2人呑みより独り呑みが良さそうです。
【今回のおすすめポイント】
▶店舗力:★★★★☆
▶商品力:★★★★☆
▶サービス力:★★★★☆
和食や ちそう
東京都目黒区自由が丘1-26-14
03(3725)0078
- 世田谷ライフmagazine 2015-10-26 発売号
Fujisan.co.jpより