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なぜ岡山で140年?“果物の女王”マスカット・オブ・アレキサンドリアを守り継ぐ技と挑戦



華やかな香りと上品な味わいから、“果物の女王”とも称される「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。2026年、岡山県での栽培開始から140周年を迎えた。


9月4日に都内で開催された「おかやまぶどう王国 メディア試食会」では、林ぶどう研究所の林慎悟氏らが登壇。140年にわたり培われた栽培技術や、生産量が減少するなかで岡山のぶどう文化を未来へつなぐ取り組みが紹介された。


さらに、岡山県産マスカットを生かした和菓子作りなど、果実の魅力を広げる取り組みにも注目が集まった。


日本では育てにくかったぶどう。岡山で始まった挑戦



マスカット・オブ・アレキサンドリアは、エジプト原産とされる歴史の古いぶどう。日本には明治初期の1880年頃に導入され、兵庫県の官立「播州葡萄園」で栽培されたが、梅雨があり高温多湿な日本では安定した収穫が難しかったという。


転機となったのは1886年。現在の岡山市北区津高地域の農家がマスカット・オブ・アレキサンドリアを岡山へ持ち帰り、雨を避けるためにガラス温室での栽培に挑戦した。これが成功し、岡山で生産が広がっていった。



100種類以上のぶどうを栽培・育種する林ぶどう研究所の林氏によると、現在も国内のマスカット・オブ・アレキサンドリア生産の90%以上を岡山県が占めているという。


一房に手間を惜しまない。140年で育まれた岡山のぶどう文化



岡山のぶどう作りを支えてきたのは、品種や気候だけではない。林氏が紹介したのが、「一房一房に対する徹底した品質管理」だ。


例えば、枝の長さや葉の枚数、面積を管理し、ぶどうが作る養分を房に集中させる「短梢栽培」。手間がかかる一方、高品質なぶどうを作るために、生産者は長年にわたり栽培方法を磨いてきた。


さらに、生産者だけでなく、JAや大学、研究機関も加わり、品質を高め、安定させるための研究を積み重ねてきたという。マスカット・オブ・アレキサンドリアで培われた「一房を丁寧に仕上げる」という考え方は、現在のさまざまな岡山県産ぶどうにも受け継がれている。


ピオーネは岡山県が国内最大の生産量を誇り、瀬戸ジャイアンツやオーロラブラックも岡山で育成された品種だ。


生産減少が続く「アレキ」。次世代につなぐ新たな挑戦



一方、マスカット・オブ・アレキサンドリアは転換期を迎えている。種がなく皮ごと食べられるシャインマスカットのような品種が人気を集めるなか、種があり栽培にも手間がかかるアレキは、生産者の高齢化や減少も重なって栽培面積が減少傾向にあるという。


林氏は、伝統を守るだけでなく、新しい時代に合ったぶどう作りにも取り組んでいる。その一つが、自ら品種改良した「マスカットジパング」だ。


大粒でジューシーな果肉とマスカットらしい香りを持ち、現在は岡山限定で栽培が進められている。名前には、海外から日本へ伝わったマスカットに対し、「今度は日本から世界へ発信したい」という思いが込められている。


一粒のマスカットを丸ごと和菓子に「陸乃宝珠」



マスカット・オブ・アレキサンドリアの魅力を別の形で伝えているのが、宗家 源 吉兆庵の代表商品「陸乃宝珠」だ。


岡山県産マスカット・オブ・アレキサンドリアを生のまま丸ごと一粒使い、薄い餅生地で包んだ夏の和菓子で、みずみずしさや華やかな香り、爽やかな酸味を楽しめる。



宗家 源 吉兆庵の岡田憲明代表によると、炊き果実は一粒ずつ大きさや形が異なるため、選別から包む工程まで手作業を重視。職人が果実ごとの個性を見ながら力加減を調整して薄く包み込むという。



販売期間は5月から9月。5~6月はキリッとした酸味が際立ち、7~8月になると粒が大きく育ち、糖度やみずみずしさが増していく。季節とともに味わいが変化する点も、生の果実を使うからこその特徴だ。


また、生産量の減少を受け、宗家 源 吉兆庵では2013年に農業生産法人「株式会社源吉兆庵農園」を設立。林氏の指導・協力も受けながら栽培に取り組み、現在では「陸乃宝珠」のシーズン中に使用するマスカットの約4分の1を自社農園で生産しているという。


140年の先へ。岡山のぶどう文化を味わう



140年前、日本では育てにくかったマスカット・オブ・アレキサンドリアを、工夫を重ねながら根付かせた岡山県。そこで培われた品質へのこだわりは、現在の多彩なぶどう作りにも息づいている。


生産減少という課題に向き合いながら、新品種の育成や自社農園での栽培など、未来へつなぐ挑戦も進んでいる。長い歴史や作り手の思いを知ったうえで味わえば、一粒のぶどうから感じられるものも少し変わってくるかもしれない。


旬を迎える岡山のぶどうを、この機会に楽しんでみてはいかがだろうか。


宗家 源 吉兆庵公式サイト:https://www.kitchoan.co.jp/

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