2012年9月からスタートし、今もなお放送中のNHK史上最長のコント番組『LIFE!』。今年で放送12周年をむかえ、2024年9月には2週連続で豪華特番「12 周年SP」の放送が予定されている。10年変わらず愛されるスタジオコント番組を支えてきたのは、内村光良座長率いる芸人たちと俳優たちによる異色の一座。「12周年SP」では、番組初期を支えたメンバー・ムロツヨシが約3年ぶりに帰ってくる。内村とムロツヨシが膝を突き合わせ、対談を実施し、『LIFE!』やスタジオコントにかける思いを語り合った。
コント番組をテレビで見てきたムロが内村さんとコント
――まず、二人が考えるLIFE!と他のドラマやコント番組との違いを教えてください。
内村:コント番組はテレビ局の違いみたいなのがありますね。フジテレビとNHKのスタジオコントでは違いがあって。何かというと……NHKの方がいろいろ細かい(笑)LIFE!は慎重派で、コツコツ構築していく感じがしますね。
ムロ:スタジオコントに参加させていただくのは『LIFE!』が初めてなのですが、出演者の皆さんが言うのは、このセットでコントができるのはすごいということ。国会のコントでは、大河のセットをそのまま借りてきていて驚きましたね。
僕は役者業を本業としていますが、ドラマや映画に参加した時に、共演者の方たちが「『LIFE!』に参加したい」「僕もいつかやってみたい」ということも多くあります。役者も興味が湧く世界なんだと思います。
――内村さん、ムロさんから見たスタジオコントの魅力を教えてください。
内村:暗いところでやってるところ(笑)汚くて暗いところで笑いを作るのが性に合ってるんです(笑)
多分『夢で逢えたら』の頃からこの世界観が好きだなと思ってたんでしょうね。『やるやら』(『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』)も『笑う犬』シリーズも、同じことを進化もなくやってます。
ムロ:スタジオコントは独特の緊張感・空気感があります。ピリピリとも違うし、楽しけりゃいいじゃんっていうのもまた違う。最初はその緊張感に負けていましたけど、経験を重ねて、緊張感のなかでも自分は何ができるかとチャレンジしていきました。僕はこの独特な緊張感が好きですよ。
――これまでの『LIFE!』で、 内村さんとムロさん二人が絡むくだりがたくさんあったと思うのですが、そのなかで印象に残っている出来事を教えてください。
内村:意外と以前は、僕とムロくんのコンビものがなかったんです。いや別にNGを出してたわけじゃないんですけどね(笑)
ムロ:言うとおかしいですよ(笑)
内村:遠ざけていたわけでもなく、本当になかったんだよね。
ムロ:なかったです。
内村:床屋さんのコント「三角関係」シリーズ、しずるの池田くんを巡る三角関係からどっぷりやるようになりましたね。ただ、あれも三角関係であって1対1ではなかった。そのうちに星野くんとムロくんというコンビが「妖怪どうしたろうかしゃん」や「オモえもん」でシリーズ化していったけど、意外にここのコンビものはなくて不思議です。
僕が今でもよく覚えているのは、DJのコント。僕がDJで、ムロくんとDJブースで向かい合って、思い出の曲を聞くみたいな設定で…。撮影の際、ムロくんがポロポロ涙を流したんですよ。
ムロ:え!?本当ですか(笑)。
内村:「あ、この人はお笑い芸人じゃなくて、役者なんだ」って改めて認識した記憶があります。
ムロ:うわ、思い出したい(笑)。
内村:僕は覚えてる。夢じゃないよ(笑)。
――ムロさんはいかがでしょうか?
ムロ:エレベーターの中でカップ焼きそばを眼鏡で食べるコントがあって、密室で2人きりでコントをした記憶はすごく残っています。
僕は、先ほど内村さんが挙げた番組をテレビの前で見てきた人間で、内村さんがレギュラー番組やってる時、大道具のバイトでフジテレビの球体のスペースで迷路を作ってたんですよ。 そんな人間が、NHKのセットでコントをやって、カメラでちゃんと撮ってもらって。内村さんとコント番組をやっているなと感動した覚えがあります。
「あっち側に行っちゃったな」と寂しい面も
――公私ともに知るような関係のお二人に、お互いの魅力をお聞きしたいです。12年間変わらず『LIFE!』の座長を務められてる芸人・内村光良の魅力はどういったところだと考えますか?
ムロ:内村さんは柔らかくて、怒ることや声を上げることは一切ない方なのですが、そのなかでもこの番組は続いていっています。番組のテイストと緊張感、クオリティが変わらないのは、内村さんが示す背中の大きさや感覚があってこそ。今回3年ぶりに参加して、継続の素晴らしさを再確認しています。
――内村さんから見た俳優・ムロツヨシの魅力はどういったところでしょうか?
内村:行っちゃったなって(笑)こっち側にとどめておきたかったんだよ。あっちには行かなくていいって。寂しかった。僕と田中と塚地だけですよ、ずっと卒業しないのは(笑)
今ではドラマの座長をやっていますからね。共演できて良かったなと思いますし、帰ってきてくれることも嬉しいです。いつまで『LIFE!』を続けられるのかわかりませんが、体が動くうちは、主演ムロツヨシを迎えたいですね。
ムロ:参加してもらいたいと思ってもらえるように僕も日々頑張ってます。『LIFE!』の経験がなければ、豊臣秀吉になってないですから。いろんな経験値を持って『LIFE!』に参加して、皆さんを支えられる人間になれたらいいなと。
――コント番組がどんどん減っていくなかで『LIFE!』が12年も続いた理由をどうお考えですか?
内村:どうでしょうね。一時期、毎週放送していた時期もありましたよね。あの頃は危なかったですね(笑)。2ヶ月に1回くらいのペースになってからは、質が維持されるようになったと思います。ネタを作り続けて生み出していく作業は大変なんですよ。
ムロ:準備力ですかね。台本や演出、企画、アイデアと準備してきたものに、僕たちが合わせていく。見てくれる人に、新しいチャレンジも含めて面白いものを届けようと、スタッフさんが意思を持って準備してくれているからだろうなと思います。
内村とムロのコンビは、数年後に評価される!?
――今後『LIFE!』を通して挑戦してみたいコントはありますか?
ムロ:まだ続いても良かったんじゃないかっていう「オモえもん」はまたやりたいですね。今回、内村さんとのコンビが実現しましたが、ストーリー性のあるコントを内村さんとやるのは痺れますので、新しいシリーズもできるように頑張りたいです。『笑う犬』の「てるとたいぞう」を見ながら、こんなことができたらと思ってましたから、そういうのをやりたいですね。
内村:ムロくんとこの前撮った最強コンビは、数年後に評価されるので、本番をやりながら感じました、このコンビはすぐには火がつかないって(笑)
ムロ:びっくりしました。収録中、僕の後ろで小声で「これは数年後に評価されるから」って(笑)。
内村:畳屋のコント「俺は継がない」が最近は自信があったのですが、人気投票をしたら西田尚美がフラフープを回して事件を解決する「女神探偵ナオミ」に僅差で負けました。あれが悔しくてしょうがない(笑)畳屋を超えられるコントができたらなと思ってます。
――最後に、今後の展望をお願いいたします。
ムロ:面白さは日々変化していきますが、それでもアンテナを立てて、コントを作っていくことが大事だと思います。時代の変化は怖いですけど、見て見ぬふりをしたり、受け入れたりしながらコントを作っていけたらなと。僕も参加させてもらう時はそんな怖さを忘れずにやっていきたいです。
内村:少しのことで叩かれてしまう時代ですけど、ギリギリを攻めていきたいですよね。加減が難しいですが、攻めの姿勢は恐れずにやっていけたら続ける意味があるのかなって。あと私の体力がいつまでもつか。健康であり続けなきゃいけないですね。
ムロ:内村座長にはこれからも水泳に通っていただいて(笑)、体力維持を応援しながら一緒に頑張っていきたいです。
■内村さんプロフィール
1964年生まれ、熊本県出身。南原清隆とお笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」を結成。『お笑いスター誕生』を経て本格始動。ショートコントという芸風を確立した第一人者で、88年の『夢で逢えたら』出演を機に爆発的な人気を博す。『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』など看板番組多数。近年ソロとしても、『LIFE!~人生に捧げるコント』などで活躍。『NHK紅白歌合戦』の司会や、コントで培った演技力を生かし俳優としての評価も高い。
■ムロさんプロフィール
1976年生まれ。神奈川県出身。ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』、『ドラフトキング』、『星降る夜に』、『ハコヅメ』、『親バカ青春白書』、映画『神は見返りを求める』、『マイ・ダディ』、『川っぺりムコリッタ』など。自身のプロデュース舞台「muro式」では演出も手掛けている。NHKではプレミアムドラマ『真夜中のパン屋さん』、連続テレビ小説『ごちそうさん』、『LIFE!~人生に捧げるコント~』、大河ドラマ『平清盛』『おんな城主 直虎』に出演。大河ドラマ『どうする家康』では三英傑のひとり、豊臣秀吉を演じる。