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「世の光であれ」を理念に据え、患者さんが頼れる「守侍医」でありたい


2012年に京都府城陽市で開業した腎・泌尿器科おおねクリニックは、一般的な泌尿器科疾患(前立腺疾患、膀胱癌、頻尿・尿失禁などをきたす過活動膀胱など)から、診られる医師が限られる夜尿症(おねしょ)、男性更年期障害まで幅広く診療。泌尿器疾患と密接に結びついている生活習慣病や、皮膚の疾患まで総合的に診ることで、地域の信頼をつかんでいる。院長である大嶺卓司氏の「泌尿器科に通うためのハードルを低くしたい」という言葉に表れているように、開業から現在に至るまでにさまざまな努力が積み重ねられていた。

泌尿器科を受診するまでのハードルを低くするために開業 

16歳の時に母を乳がんで亡くしたことをきっかけに、医療の道を志しました。医学生時代、内科医は手術を必要とする患者さんを外科に送らねばならず、反対に外科は初めから患者さんに関わることができないと思い込んでいました。患者さんを最初から最後まで診たいという思いがあったことから、当初は外科的治療も行う整形外科医や耳鼻科医を志望していました。ところが、泌尿器科であれば患者さんの治療を完結できるだけでなく、内臓や腹部まで広く診ることができると知り、泌尿器科に転向しました。

泌尿器疾患は、非常にデリケートな問題をはらんでいます。そのことから、受診をためらう患者さんも多い。勤務医として城陽市内の病院で働いていた時、症状がひどく悪化した状態で来院する患者さんをたくさん診てきました。「もっと早く来てもらえれば、ここまでつらい思いをさせなくて済んだのに」と、悔しく思ったことを今でも覚えています。

また、勤務していたその病院は市の中心からやや外れた場所にあり、高齢の患者さんが通院を負担に感じていることにも気付いていました。そのため、精神的にも地理的にも、気軽に通える環境が必要だと感じました。しかし、その当時は城陽市内に泌尿器科を専門に掲げるクリニックはありませんでした。そこで、病院で患者さんを待つのではなく、自ら地域に出ることを決意。駅からのアクセスがいい市街地にクリニックを開業しました。

2つの理念を胸に患者に寄り添った医療サービスを提供 

当院には2つの理念があります。1つ目は「世の光であれ」です。泌尿器科を受診する患者さんは、病状以外に、デリケートな部位の触診にも不安を抱いています。ですから、暗い気持ちになっている患者さんの気持ちを汲み、希望の光でありたいと考えています。そして、部位にとらわれず、さまざまな病気から患者さんを「守り」、身近な存在として側に「侍(はべ)り」たいという思いから、地域の皆さんにとっての「守侍医」(しゅじい) になることが、もう1つの理念です。

泌尿器科の診療では、必ず尿検査を行います。生活習慣病に付随して、泌尿器科系疾患が現れることも多いことから、中には患者さん本人が気付いていないだけで、糖尿病が発覚するケースも。そして、診察中に下着に隠されていた皮膚疾患に気付くということも多々あります。疾患ごとに診療科が異なる病院とは異なり、クリニックであれば、泌尿器科以外の関連した疾患もまとめて診療することができます。これは患者さんの負担の軽減につながると信じています。

さらに患者さんに寄り添うため、それぞれの患者さんに合わせた説明を心掛けています。患者さんがもっている医療知識にも人によって大きな差があるため、一律の説明をしたら、理解できない患者さんも出てくるでしょう。言葉以外にも、模型を使う、絵を描く、電子カルテの文字の表示を拡大するなどの視覚的な工夫も行っています。このように、患者さんが相談しやすい環境を整えることが、受診のハードルを低くすること考えています。

今後は泌尿器科の啓蒙と、新たな知識を意欲的に取り入れることにも注力

当院は2024年で開業13年目を迎えました。今後も地域の主治医として医療を提供し続けることはもちろん、泌尿器科の診療と疾患のさらなる啓蒙活動にも力を入れたいと考えています。この10~20年で、泌尿器科はかなり認知度を高めましたが、それでも泌尿器疾患を抱えながら、「どこの診療科で診てもらえばいいかわからない」と悩む人は少なくありません。

また、当院が長年にわたって診療をしている夜尿症、男性更年期、過活動膀胱などは、泌尿器科専門医の中でも診られる医師が限られていることから、周知が進んでいません。そのため、疾患として認識されづらく、病院に行くという発想が生まれづらいのでしょう。今まで以上に泌尿器疾患の周知を行うことで、人知れず悩んでいる人の生活の質の改善につなげたいですね。

啓蒙活動の一環として記事の執筆や監修などを行っていると、自分の持っている知識の見直しの必要性を感じる時があります。また、患者さんと話をしていると、当院の専門以外の疾患の相談にのることも。泌尿器科に限らず、幅広く新しい医療知識を吸収すれば、患者さんの相談を受けやすくなり、さらに不安を取り除くことができるでしょう。しかし、自然に新しい情報が入ってきた勤務医時代とは異なり、開業医は主体的に動かなければいけません。

新型コロナウイルス禍の影響により、医療業界も最新の情報の共有が制限されていましたが、今年は学会や勉強会などに積極的に足を運び、知識を更新していく予定です。

腎・泌尿器科おおねクリニック院長 医学博士
大嶺 卓司

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