多くの方が帰省したであろう今年の大型連休。久しぶりの再会を喜び、楽しい帰省になった方も多いかと思います。そして、相続などの親族会議(家族会議?)になった方も多いのではないでしょうか。相続は、スムーズにいけばいいのですが、ちょっとしたことから、トラブルに発展してしまうケースもあるようです。
今回は相続トラブルの解決の手段の一つである「相続放棄」について、相続問題に特に力を入れている川崎相続遺言法律事務所の関口英紀弁護士にお話を聞いています。
相続問題のトラブルの増加
令和2年の課税対象被相続人数は過去最高となっており、それに伴って相続に関するトラブルも多く発生しているようです。相続で揉めるのは相続財産が多いケースに限ったことでは無いそうで、相続に関して正しい知識を持っておく必要があるといいます。
関口弁護士「相続に関するトラブルにおいて、相続権を持つ法定相続人が被相続人の残した財産の一切の相続を拒否する『相続放棄』を行う場合、基本的に被相続人が亡くなった日から3ヶ月以内という期限があるため、スムーズに手続きを進めなければいけません。」
相続放棄とは
相続放棄とは家庭裁判所に対して「私は被相続人のプラスの財産を一切受け取りません。マイナスの財産(借金等)も一切負担しません」という申し出をすることを言います。
関口弁護士「一般的には、相続財産のなかでプラスの相続財産よりもマイナスの相続財産の方が多いことがはっきりしており、相続人が借金などの不利益を被ることが明らかな場合に相続放棄を検討します。ほかにも『相続争いに関わりたくない』という場合なども相続放棄を検討した方が良いかもしれません。」
相続放棄のメリット、デメリット
相続放棄を行うメリットは、相続による不利益を被らないこと。被相続人が残した借金を肩代わりすることを防げます。また、遺産分割などの相続人同士の争いに巻き込まれることがないというのも大きなメリットのひとつです。
一方で相続放棄を行うデメリットも。デメリットについて関口弁護士に解説していただきました。
関口弁護士「デメリットは、財産調査を十分に行っていない段階で相続放棄すると損をしてしまう可能性がある点です。『相続をしてもデメリットしかない』と考えて相続放棄をした場合、後になってプラスの相続財産が見つかったとしても相続は受けられません。相続放棄にはメリットとデメリットがあるため、相続放棄するかどうか判断する際は被相続人の財産調査が非常に重要です。」
「プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかはっきりしない場合は、『相続を受けた人がプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ』限定承認制度の利用を検討しても良いでしょう。万が一マイナスの財産がプラスの財産より多い場合でも、引き継ぐマイナスの財産はプラスの財産の範囲内に抑えることができます。」
相続放棄の手続きの流れ
次に相続放棄を行う際の手続きの流れを関口弁護士に説明していただきました。
①相続放棄にかかる費用を準備する
相続放棄には、収入印紙代800円と郵便切手代(裁判所によって金額が異なる)の費用がかかります。
②相続放棄に必要な書類を用意する
相続放棄では、「相続放棄申述書」、「被相続人の住民票除票または戸籍附票」、「申し立てる人の戸籍謄本」の3種類の書類が必要です。
③相続放棄の全体スケジュール
必要書類・費用を準備した後は、家庭裁判所に申述書等を提出して申し立てます。
④財産調査を行う
相続においては、被相続人の相続財産の調査が必要です。相続財産には、大きく分けて預貯金と不動産があります。預貯金は預金通帳や金融機関からの郵送物などで確認し、不動産は固定資産税通知書や名寄帳などで確認できるでしょう。
ほかにも、マイナスの相続財産についても調べなければいけません。この場合も、郵便物や預金通帳などで確認できます。特に、預金通帳に定期的な支払いがないかよく確認しましょう。
⑤家庭裁判所に相続放棄を申し立てる
財産調査の結果、プラスの相続財産よりもマイナスの相続財産が多ければ、被相続人の住民票の届出のある場所を管轄する家庭裁判所へ相続放棄を申し立てましょう。
⑥相続放棄申立後に照会書が届く
家庭裁判所に相続放棄を申し立てると、約10日後に家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されます。必要事項を記入して家庭裁判所へ再送しましょう。
⑦相続放棄が許可されれば相続放棄申述受理通知書が届く
家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。これにより相続放棄の申し出が受理されたことになります。
相続弁護士ナビについて
相続問題を相談できる弁護士を探す場合は、今回解説を行ってくださった関口英紀弁護士も掲載されているサイト「相続弁護士ナビ」がおすすめです。弁護士事務所へ直接、電話、メールで相談することが可能で、相続に関する基礎知識も身につけることができます。
相続弁護士ナビURL:https://souzoku-pro.info/
相続トラブル解決の手段の一つである「相続放棄」。自身が相続により不利益を被る場合などは、弁護士の方に相談することも検討してみてください。
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Fujisan.co.jpより