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『猫と竜』アニメプロデューサーが語る/診断コンテンツで狙ったファンや業界との新しい距離感



テレビアニメ『猫と竜』は、アマラ氏によるライトノベルを原作とした作品だ。ふわりとした異世界、ほどよいスローライフ、そして一匹一匹に確かな”猫生”を宿したキャラクターたち――。癒しと余韻が絶妙に溶け合う本作の放送を記念して、少し変わった宣伝施策が行われた。



エンタメ業界特化の転職サービス「エンターエンタ」とタッグを組んだ診断コンテンツだ。アニメ×転職サービスというあまり例のない掛け合わせは、なぜ実現したのか。今回はアニメ『猫と竜』のプロデューサーを務める松崎氏と普段アニメ宣伝プロデュースにも関わり、「エンターエンタ」の運営も手がける大貫氏に、企画の裏側と作品への想い、そしてエンタメ業界の”これから”について、じっくりと語ってもらった。


■対談者プロフィール

松崎 氏 アニメ『猫と竜』プロデューサー。ほぼ全てのアニメスタジオでの現場経験を持ち、制作進行からプロデュース業務まで、およそ10年にわたりアニメの企画・制作の最前線に立ってきた。


大貫 氏 ブシロードムーブ 代表取締役社長/ブシロードワークス 取締役/gamebiz 代表取締役社長。製作委員会組成・マーケティング・広報宣伝・音響プロデュースなどを主業務とし、これまでも多くのアニメ作品をプロデュース。エンタメ業界に特化した転職サービス「エンターエンタ」も立ち上げ、業界振興の一役にも尽力している。


——まずはお二人の自己紹介から。それぞれのご担当と、『猫と竜』へどのように関わっているのかを教えてください。

大貫氏:私はブシロードグループの所属で、普段は製作委員会側の担当ですね。権利周り、地上波・BSといった放送の出し方、代理店さんとのやり取り、あとは周辺の”設定物”――グッズや配信、コラボ含めて――が動くときに、全体を交通整理する立場です。『猫と竜』では、代理店として松崎さんや作品を広めるお手伝いをしています。


松崎氏:私自身はこれまではアニメスタジオを渡り歩いてきた人間で、制作進行から始まって、現場で10年ほどアニメを作ってきました。今回の『猫と竜』では、キャスティングやスタジオ選定、脚本会議まわりなど、作品を”作る側”のプロデュースを担当しています。



――お二人はまさに”外向き”と”内向き”の役割分担ですね。そもそも『猫と竜』という作品の魅力を、あらためて教えていただけますか。

松崎氏:原作の力で言えば、非常に間口の広いハートフル・ライトファンタジーだと思っています。異世界転生ものの流れを汲みつつ、派手なバトルや強い刺激で押していく作品ではなくて、”じわっと”心に来るタイプ。世界に疲れたおじさんが観てもいいし、いま生きづらさを感じている人が観ても、すっと入っていける優しさがあるんですよね。


大貫氏:私も企画のお話をいただいたのが3年ほど前だったんですが、世の中的にも、いわゆる”ゆっくり観られる”作品、安心して観られる作品の需要が確実に来ているな、と感じていたんです。タイトルに”猫”が入っていて、しかも一匹一匹にちゃんと個性がある。”あ、これは絶対いける”と、正直タイトルだけで決めた部分もあります(笑)


松崎氏:(笑)。意外とその直感、当たっているんですよ。人間関係とか、家族以外との緩やかなつながりとか、人が生きていく上で本当に大事なところが、猫たちのやり取りを通してさらっと描かれている。観終わったあとに、なんだか自分の毎日に対して”もう少し優しくやろうかな”と思える。そういう作品です。


――お二人それぞれから見た”推しポイント”はどこですか。

大貫氏:やっぱり猫の描き方ですね。制作をお願いしているスタジオさんも、”猫をちゃんと動かしてくれる”ところを最優先で選んでいます。猫って、少しでも描き方を間違えると”猫っぽくない”になってしまう。今回はそこに一切の妥協をしない座組で臨めたので、毎話、猫好きの方にはたまらない画になっているはずです。


松崎氏:私は”猫一匹一匹の個性”ですね。単に”かわいい猫がいっぱい出てくる話ではなくて、一匹ごとにちゃんと猫生があるんですよ。観ている人が自分の推し猫を見つけて、”うちの子と一緒だ”って思ってもらえるくらいの解像度で作っている。そこは自信があります。

 あともうひとつ挙げるなら、”猫と、その周りを生活している社会”の描き方ですね。人間との関わり合いが、優しすぎず、冷たすぎず、かといって過剰に劇的でもなく、ちょうどいい温度で描かれている。観終わって、じわっと温かいものが残る。派手なテンションアップではなく、”ここに来る”という感覚があるんですよ。

 ですので、スタジオさんに対しても、僕らは「猫が愛おしく見えるかどうか」という一点でスタジオさんにお願いに行きました。動きのタッチ、目の描き方、しっぽの表現――全部大事。”猫を丁寧に描けるスペシャリスト”じゃないと、この作品はダメになる。そこは制作に関わる皆さんと最初に約束した部分ですね。


――今回、アニメの宣伝施策として”診断コンテンツ”、しかもコラボ先はエンタメ業界特化の転職サービス「エンターエンタ」。なかなか珍しい組み合わせです。どういう経緯だったんですか。

大貫氏:製作委員会側の宣伝プロデューサーとしての正直な話をすると、普段の仕事は地上波・BSにアニメを届けるための代理店的な動きがメインなんですね。放送の枠を確保して、設定物を出して、決められた導線で観てもらう。それはそれで大事な仕事なんですが、今回の『猫と竜』については、”それ以外でも世間に届けられる作品じゃないかな”と感じていました。

 猫好きの方はもちろん、いままでアニメをあまり観てこなかった層にも届いてほしい作品なんです。でも通常の宣伝フォーマットのままだと、普段どおりの視聴者にしか届かない。”高視聴者側にいる人だけで完結しない打ち手”を絶対に混ぜたかった。


松崎氏:そこに、たまたま私のほうで大貫さんとお仕事をご一緒していたご縁があって、彼が代表と務めるゲームビズ社にて”エンターエンタ”というエンタメ業界特化の転職サービスをやっている、と。話を聞いてみたら、これがすごく面白かったんです。

 普通、この規模のコラボって、有名IPと大手ブランドがお金を積んで組む、みたいな話じゃないですか。それって、エンタメ業界の人間からすると正直”リアルじゃない”んですよ。でもエンターエンタさんは、現役のエンタメ業界プロデューサーが自分たちで運営しているサービスで、ロジックじゃなく熱量で動いている。”あ、これはちゃんとしたリアルの側の話ができる”と思って、すぐ大貫さんに相談しました。



大貫氏:私もお話を聞いた瞬間に”これはハマるな”と感じました。エンターエンタさんはターゲットが”アニメを含むエンタメ業界に興味がある人たち”なので、猫好きの視聴者層と、そこまで遠くない。しかもエンタメ業界志望の若い読者にとっては、診断を通じて業界のリアルに触れる入り口になる。”作品にとってのメリット”と”サービス側のメリット”が、両側からきれいに噛み合ったんですよね。


――企画立ち上げからリリースまでで、特に印象的だったエピソードはありますか。

松崎氏:診断コンテンツ自体の作り込みですね。作品の”猫キャラ一匹一匹にちゃんとストーリーを紐付ける”というのを、エンターエンタさんが本当に丁寧にやってくれた。変な話、コラボものって”タイアップした感”を出すために雑にキャラを差し込んで終わり、みたいなケースが少なくないんです。でも今回は、質問1問1問に対して、”あの猫ならこう答えるよね”という僕らの解像度でちゃんと詰めてくれた。

 本当にありがたかったですね。僕たちが「このキャラはこういう子で」と話すと、それを受けて診断のロジック側に落とし込んでくれる。ネコのキャラが立っている作品なので、そのキャラ性が診断結果にまでちゃんと乗ってきた。”ポジティブによく仕上げていただいた”というのが率直な感想です。



大貫氏:あとは、社内・関係各所を通すのが意外とスムーズだったのも今回の特徴でした。通常、こういう”ちょっと変わった”座組の企画って、委員会や関係各所を説得するのに時間がかかるんですよ。でも今回は、松崎さんが「これはメリットが取れる」と早い段階で腹落ちしてくれたので、一気に前に進んだ。


松崎氏:私からすると、”大貫さんが持ってきた”という時点で半分ぐらいはもう信頼していました(笑)。というのも、エンターエンタさんって、”アニメやゲームに関わる人々が運営している”という事実がすごく大きくて、「広告代理店の営業マンが何となく持ってきた企画」とは温度がまるで違ったんです。”この人たちなら、作品の中身をちゃんと理解して落としてくれる”と、最初の打ち合わせで確信しました。


――読者やファンには、この診断コンテンツをどう楽しんでもらいたいですか。

松崎氏:まず気軽にやってほしいですね。診断結果に自分の”推し猫”が出てきて、”あ、俺はこの子か”と思ってもらえるだけで嬉しい。そのうえで、SNS――ThreadsでもXでもInstagramでも――”私のネコみたいなやつが出た”って、みんなに気軽にシェアしてほしいです。自分の飼っている猫の写真と一緒に貼ってくれても最高ですね。


大貫氏:診断そのものが、実はけっこう本気で作られているんですよ。業界のリアルな用語も少し混ぜていて、アニメ業界の方が受けると”あ、これ現場のあるあるだ”と気づくし、業界に興味がある方は”こんな職域があるんだ”という発見になる。難しい部分もあえて残しています。


松崎氏:そうそう、ここは大貫さんとかなり議論したところなんです。本来なら、診断って”わかりやすさ最優先”で作るのがセオリー。でも今回は、業界特化の転職サービスとのコラボだからこそ、業界のリアルはあえて残そう、と。観るだけの人にはちょっと難しいくらいのほうが、”へぇ、こういう世界があるんだ”って興味を持ってもらえるはず、と考えました。


――”こんな遊び方をしてくれたら嬉しい”という理想の使われ方はありますか。

大貫氏:アニメ業界を目指している学生さんに、ぜひ触ってみてほしいですね。業界解説的なコンテンツって、堅くて眠くなりがちじゃないですか。でも診断だったら、遊びながら”あ、自分はこっち側かも”って考えられる。業界に入る前に、こういう遊びかたで温度感を掴んでもらえたら嬉しいです。



松崎氏:業界にすでにいる方には、”ちょっと横道の解説を見ながらニヤニヤしてほしい(笑)。”あるある、これウチもだよ”って盛り上がってもらえたら成功です。ファンの方は、自分の推し猫キャラで結果をシェアして、それを友達に見せて”次の話数、こんな感じらしいよ”って作品の話題のきっかけにしてもらえたら最高ですね。

 ファンの方はもちろん、業界の方々にも”面白い取り組みだな”と思って触ってもらえたら、企画としては大成功です。遊びのふりをして、実はちゃんと業界のリアルにも刺さっている。このバランスは、大貫さんとエンターエンタさんじゃないと作れなかったなと本当に思っています。


――松崎さんから、コラボ相手である「エンターエンタ」への期待は。

松崎氏:エンターエンタさんには、アニメ業界を盛り上げる存在でい続けてほしい、というのが一番の期待です。私は”エンタメ業界人の熱量をちゃんとリアルに発信する”サービスだと勝手に思っていて、それはこの業界に本当に必要なんですよ。コラボはこれで一度終わりですが、他のIPさんでも同じような取り組みをぜひ増やしてほしいですね。


 というのも、今のエンタメ業界って、人の出入りが激しいんです。急に入ってくる人が多い一方で、抜けていく人も多い。でも本当は、元々この業界で骨を埋めるつもりで頑張ってきた”熱量のある人たち”が、ちゃんと業界のなかで動き回りながら力を発揮できたほうが、絶対に日本のコンテンツは強くなる。エンターエンタさんは、その循環を回してくれる場所だと期待しています。


――大貫さんから、松崎さん、そして『猫と竜』への期待は。

大貫氏:まずは”猫好きにはみんな観てほしい”、これに尽きます(笑)。作品はもう本当に良いものになっているので、届く人にちゃんと届けきることが私の仕事。松崎さんには、これからもキャスト・スタッフの熱量を一番近くで受け止めて、現場のいい空気をキープしてほしいですね。

 あとは、『猫と竜』という作品を通じて、”アニメは派手なバトルや強い刺激だけじゃない”ということがもっと当たり前に受け止められる世の中になってほしい。じわっと来る優しい作品にも、ちゃんと居場所がある。僕らはそれを本気で作っているし、届けきりたいと思っています。


――最後に、『猫と竜』というIPを今後どのように育てていきたいですか。

松崎氏:やっぱり”長く愛される作品”にしたいですね。バズるかどうかではなく、”何年経っても、疲れた夜にふと観返したくなる”作品として残ってほしい。そのためには、放送が終わってからの展開も含めて、今回のようなちょっと変わった座組の企画をどんどん仕込んでいきたい。


大貫氏:僕らプロデューサーの仕事は、作品の”生きられる場所”を増やすことだと思っています。地上波に乗せて終わり、ではなくて、今回の診断コンテンツのように、”別の入り口”を作品のためにいくつも用意していく。『猫と竜』は、そういう作りかたが似合う作品なので、これからも面白い試みを続けたいですね。


――エンタメ業界全体に向けて、最後にひとことお願いします。

松崎氏:“リアルを、リアルに発信していこう”というひとことに尽きます。業界って、外から見ると華やかに映るけれど、内側は本当に地に足のついた、しんどい仕事の積み重ねです。でも、そのリアルにこそ次の担い手を惹きつける力がある。『猫と竜』もエンターエンタも、そのリアルを、それぞれのやり方で伝えていける存在でありたいです。


大貫氏:業界の人はもちろん、業界を目指す人にも、今回の診断コンテンツを”入り口”として使ってもらえたら嬉しいです。遊びながら業界を覗いてもらって、気になる猫を見つけて、そのままアニメ本編にも足を運んでもらえたら――作り手としては、これ以上ないハッピーな流れだと思っています。


松崎氏:最後にもう一つだけ。この作品って、”人生の主役が自分じゃないという感覚を、猫を通して優しく描いている気がするんですよ。みんな主役の人間関係の中に生きているわけじゃなくて、脇にいて、それでも大事な役割を果たしている人がいる。診断で”あなたはこの子タイプ”って出たとき、”あ、自分の役どころってこれかも”ってちょっと肩の力が抜けてくれたら嬉しいです。


――ありがとうございました。


◆ 作品・コラボ情報

■ アニメ『猫と竜』

https://nekoryuu-pr.com/


■ 『猫と竜』× エンターエンタ 診断コンテンツ

https://gamebiz.jp/enter-enter/shindan-nekoryuu/


(執筆者: sasuke_in)


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