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オオタヴィン監督が<在宅緩和ケア>を描くドキュメンタリー『ハッピー☆エンド』で伝えたいこと 「食べる、歩く、笑う。すべてが奇跡だと感じてほしい」


映画監督のオオタヴィンが手掛けた『ハッピー☆エンド』は、在宅緩和ケア医療をテーマに取ったドキュメンタリー作品です。医師の萬田緑平が指導する在宅緩和ケアでは、患者が自宅で自分らしく生きることを重視し、患者と医師の距離感が非常に近いことが描かれています。本作品は、患者が自分の希望に基づいて治療方法を選ぶことの重要性や、病院以外の医療選択肢としての在宅緩和ケアの可能性を強調しています。監督は、選択肢の広さを認識することが未来を大きく変える可能性があると述べています。このドキュメンタリーは、「尊厳を持って生きる」というテーマを伝える作品です。

今なお上映が続く『夢みる小学校』のオオタヴィン監督が、在宅緩和ケア医療に密着した『ハッピー☆エンド』が全国順次公開中です。

「在宅緩和ケア」とは、身体と心の苦痛をやわらげ、自宅で自分らしい生活を送れる希望の医療のこと。痛みのない日常生活を続けられる「在宅緩和ケアという選択肢」は、病院の面会が禁止されたコロナ禍を経て、さらに今、大きな注目を集めているそうです。

萬田緑平医師と5つの家族が教えてくれた「在宅緩和ケア」という選択肢、その希望あふれるハートフル・ドキュメンタリーについて、オオタヴィン監督にお話をうかがいました。

――本作を撮ろうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?

これまで何本か映画を撮ってきたなかで、お医者さんが出てくる作品もいくつかあったんです。ただ、それがメインになるということはなかったんですね。なので、いつかはお医者さんを軸にした作品を作りたいという思いがあって、いい方がいないかなと探していたんです。

そして、萬田先生に実際にお会いしてみたら、もうキャラが圧倒的に明るく面白い(笑)。希望が感じられて笑って泣けるドキュメンタリーをつくるのが信条の僕には、萬田先生はぴったりだなと直感しました。

――監督としては、「在宅緩和ケア」を選択する患者さんが増えたらいいなと思っているのでしょうか?

いいえ。患者さん自身が後悔しないように、病院医療か、在宅医療を選択をすることが大切だと思っています。でも日本の場合、「標準治療」っていうものがあって、それが「唯一の正解」みたいに扱われがちなんですよね。

――それって情報がないからなんでしょうか?

いえ、情報自体はあるんです。あるんですけど、病院側が積極的に出すことはあまりないんですよね。だから、患者自身が自分で探す、メディアは報道する必要があると思っています。

――出演については、どのようなお話をされたのでしょうか?

これはホームページにも載せていますが、そもそも、こういったポリシーで医療に向き合っているお医者さんって少ないんですよね。基本的には先生が上の立場で、患者さんは言われた通りに治療を進めていくのがスタンダード。でも最近では、セカンドオピニオンを求める人も増えてきましたし、自分で複数の医師の意見を聞いて選ぶ時代になってきています。

ただ、その中でも「在宅緩和ケア」までは、まだ選択肢が広がっていないというのが実情ですね。

――在宅緩和ケアが広がらない背景には、情報不足以外にどんな理由があるんでしょうか?

やっぱり、患者自身が主体的に関わらなきゃいけないというのが大きいんじゃないでしょうか。医療や病院にすべてを任せてしまえば、ある意味で楽なんですよ。細かい判断をしなくて済みますから。

日本人特有の「医療は専門家に任せるもの」という意識ですね。他のことはネットで検索したり自分で調べたりするのに、医療となると完全にお任せになってしまう。

結婚相手とかは見合いのプロに任せないのに(笑)、命に関わるがん治療になると、なぜか全部お医者さんに任せてしまうんですよ。

――なるほど。お医者さんとコミュニケーションを取ることすら遠慮しがちというか。

そうなんです。例えば大学病院に行っても、お医者さんとほとんど話せないことも多いですよね。先生もフランクな人ばかりじゃないですし、効率のためにはそっちの方が都合がいいという面もある。

――医師の側だけの問題ではなくて、患者側も主体的でないと。

そうですね。自分のことなんだから、「最後はどうしたいのか」という希望を伝えることも大事。でもそれすら言いにくい空気がありますよね。あとは、本人よりも家族の希望が強くなることもあります。本人は「迷惑かけたくない」という気持ちが先に立ってしまい、「延命治療は望んでいない」と本人が言っていても、家族の想いだけで延命を選ぶと、あとで「本当にこれでよかったのか」と後悔することにもなる。

――医療の現場はそこが難しいですよね。どちらが正しいという話でもないから。

おっしゃる通りです。どれが正解というのはないんです。だからこそ、「どうしたいか」を早い段階で話しておくことがすごく大切なんですよね。

――今回、映画として形にしていく上で意識されたことはありますか?

これまで、闘病ドラマってお涙頂戴的な感動が主軸になることが多かったんですよね。でも、今回の作品ではそれを前面には出したくなかった。「良い話だったね」だけで終わってしまうと、観た人にとって自分ごとになりにくい気がしていて。だから今回は、あえて客観的に描くように心がけました。

――だから登場人物の感情を強調しすぎないんですね。

そうです。登場人物の誰かの感動を押し付けるのではなく、観た人それぞれが、自分の状況に置き換えて考えられるような構成にしたいと思いました。人によって病気の進み方も違うし、価値観も違う。だからこそ、他人の話がそのまま自分に当てはまるとは限らない。でも、選択肢を知っているかどうかで、大きく未来が変わることもある。

――なるほど。あと印象的だったのは、お医者さんと患者さんの距離感ですね。すごく近く感じました。

在宅医療ってそういうところがあるんです。病院の中で診るより、患者さんの生活そのものが見える。ご家族も含めて、まるごと関わることになるので、どうしても距離が近くなるんですよね。カメラを通して観ても、人と人との距離の近さが自然と映ってくるんです。これは在宅医療ならではの魅力だと思います。

――この作品を通じて、どんなことを伝えたいと思っていますか?

大きく言えば、「人はどう生き、どう死んでいくか」ということ。

毎朝起きると、今日も生きてる!という奇跡。

食べる、歩く、笑う。すべてが奇跡だと感じてほしいですね。

この映画を、今後の人生や家族との関係に少しでも役立ててもらえたらと思っています。

――今日はありがとうございました!

■公式サイト:https://www.happyend.movie/ [リンク]

■ストーリー

在宅緩和ケア医師の萬田緑平先生の診療所は、いつも笑い声が絶えません。ジョークが好きな萬田先生の信条は、「患者本人が好きなように」「本人が望むこと」を全力でサポートすること。

「退院して家に帰ったら、“身体にいいこと”より“心にいいこと”を優先して考えましょう」とその治療で患者さんが幸福になっているかが全て。その萬田先生のもと、末期がんで余命宣告された患者さんたちは、住み慣れた我が家で「生き抜く」ことを選択します。

家族旅行を楽しんだり、愛するペットとともに暮らす。趣味のガーデニング、ゴルフ、お酒を満喫する。その笑顔に包まれた穏やかな日々は、病院での入院生活とはまったく異なる時間が流れています。最期まで自分らしく生きる、その輝き。感謝の言葉を贈りあうことで、前向きに歩きはじめる家族の姿が描かれている、“緩和ケアという希望”を描いたドキュメンタリー。

公開中

(C) まほろばスタジオ

(執筆者: ときたたかし)

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