
リーアム・ニーソンの集大成とも言うべき主演最新作。伝説の殺し屋が正義のために爆弾テロリストの壊滅に挑む、『マークスマン』監督×『アメリカン・スナイパー』製作陣による全世界待望のドリームチームが放つハードボイルド・アクション『プロフェッショナル』がTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中です。
シニアの円熟とタフなファイトを両立させる、唯一無二のアクションヒーローとして独自の座を築いてきた名優リーアム・ニーソン。自身の故郷である北アイルランドを舞台に、暗殺請負の仕事に長年従事していた男が引退し、別の人生を歩もうとした矢先、IRAのテロ集団と対決する。ハードな修羅場を幾度も潜り抜けてきた過去を持つ主人公が、その優しさゆえ、疲弊した心身を奮い立たせながら、最後の戦いに立ち向かっていく姿に、ニーソン本人の姿を重ねずにはいられません。
長年クリント・イーストウッド監督とタッグを組み、重厚な作品作りを続けてきたロバート・ロレンツ監督にお話を伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。アクション映画でありながら重厚な人間ドラマとなっていますが、監督はどの様なアクション映画を作りたいと考えられたのでしょうか。
まず、アクションよりもあくまでドラマとしてこの作品に取り組みました。登場人物たちが人間的で、私たちも普段感じる様な感情にあふれていますよね。観る人それぞれが感情移入が出来るのではないかと思いますし、映画というのは感情移入出来るか否かというのが鍵だと思っています。そこにアクションシーンが加わるわけですが、アクションがストーリーにすんなりと馴染んでいることが大事ですよね。
ストーリーテリングをする上で、飽きさせないためのスパイスと言いますか、エネルギーの発散や感情の高ぶりというのを見せる手段、という風に考えています。観客に映画に飽きずに没入してもらうために活用するものが“アクション”という理解です。
――まさに本作は、アクションだけが目立っていませんけれど、アクションが際立つ絶妙なバランスになっていますね。
僕は映画の本当に様々なジャンルが好きなんですね。この脚本に関しては読んですぐ「ウエスタンだな」と思いました。ロケーションはアイルランドですけれど、私がこれまで親しんできた西部劇に通じるものがあるなと。荒くれ者が小さな町にやってきて、警官だけでは手に負えない悪に立ち向かい、市民を守る、という構図がとても良いなと思いました。そういった西部劇的なストーリーを、アイルランドという土地で嘘っぽく見えない映画に仕上げるという部分が一番チャレンジングな部分でした。
――おっしゃるとおり人間として譲れない部分、ここは守らなきゃいけない、という心情の描き方が西部劇的ですね。
狭いコミュニティの中で全員が顔見知りで、繋がりは深いけれども、周りとは隔絶されている、そんな地域が舞台になっています。撮影した場所がアイルランド西部のドニゴール県というところなんですが、海と崖がある場所でしたから、街の喧騒と隔絶されている場所だということを強調していますよね。加えて、当時の北アイルランドとアイルランドの政治的な紛争が背景にありますから、そういった部分に僕の様な映画好きは惹かれるのではないでしょうか。

――パブでの乱闘シーンがすごく迫力があってカッコ良かったのですが、歴史を感じる実際に営業しているパブでしたよね。ロケーションを探すのは大変ではなかったですか。
おっしゃるとおり実在するパブなんですね。小さなパブでしたから、いわゆるバーカウンターの部分は作って大きく広げています。一晩では撮りきれなかったので、シーンごとに分けてなんとか撮影しました。ショットが繋がるように考え撮らなくてはいけなかったので工夫が必要でした。ちなみに、映画ではドアが爆発していますが、撮影用に別に入り口を作ったので、あのパブは今でもちゃんと経営されています!
――あんなに激しいアクションで、お店の人もハラハラしないのかなと思っていたので、無事に経営されていて良かったです(笑)。
皆さんの集いの場所が奪われないように、本当にケアをして撮影させていただきました。でも、リーアム。ニーソンをはじめとして皆さんがアイルランドのヒーローと言えるような国民的俳優たちなので、地元の皆さんはとても協力的でありがたかったです。
――リーアム・ニーソンさんとは本作が2回目のタッグとなりました。彼が素晴らしい俳優さんであるということは多くの観客も理解はしていますが、監督が特に惚れ込んでいるのはどんな所ですか?
リーアム・ニーソンはある意味最後の大物映画スターというか、長年に渡り観客を集めることが出来る稀有な俳優ですよね。もちろんそういった点を除いても、人間としても一緒にいて楽しい素敵な方です。何より映画を作るのが好きなんですよね。だからこんなに多作だと思うのですが、それはクリント・イーストウッドにも共通していることだと思います。とにかく映画の現場が好きなことは僕たち3人共通していることだと思います。
――凄腕ではありつつも、年齢を感じさせるアクションをされていて、そこも凄いなと思って拝見していました。
言葉で言わずとも、どういう演技を期待されているかということを彼はよく分かっていました。私自身も、彼も、この作品に惹かれた理由の1つが、「年相応で演じている」ということですよね。登場人物が壮絶な過去を背負っているというのが表情、身体から滲み出ていて、それが素晴らしく作用していると思います。

――ライフルや銃の使い方や、キャラクターによっての違いも印象的でした。
これは本当に脚本家のお手柄と言えますね。ライフルの種類なども細かく脚本に指定されていました。例えば、リーアム演じるフィンバーが車のトランクから取り出すライフルは銃器担当の専門家と話し合って、当時使っていても不自然ではない理に適ったものをチョイスしています。フィンバーのボスであるロバートが使っているルガーという銃はちょっと風変わりな選択ではあるんですが、ロバート自体が風変わりな人であることを表しています。ケビンが使っているライフルが見た目がカッコ良くて、若者はきっとカッコ良いデザインに惹かれるだろうという選択になっています。武器はそれぞれのキャラクターを反映する役割を果たしています。
――なるほど、ありがとうございます! 監督は「映画は感情移入出来るか否かが鍵」とおっしゃっていましたが、監督自身も自分の年齢が成熟してきて、本作のフィンバーの様に今後人生を考えることはありますか?
興味深い質問をありがとうございます。映画業界の仕事というのは常に挑戦ですよね。商業面と芸術面のせめぎ合いが常にあり、自分が表現したいこと、描きたい人間ドラマと、ビジネス的な成功も考えなければいけない。私個人としては思慮深い、またはユーモアがある人間ドラマが好きななのですが、自分自身が成熟していく中で、選ぶ題材にも変化があると思います。人の書いた脚本に自分らしさを反映する、自分の世界観を反映していくわけですから、フィンバーの描き方にも自分の考えが投影されていると思います。
――今日は貴重なお話を本当にありがとうございました。

『プロフェッショナル』
STORY: 孤高のヒットマンvs最凶の爆弾テロリスト集団。男の怒りは頂点へ――
1970年代のアイルランド。血塗られた過去を捨て去りたいと願う暗殺者フィンバー・マーフィーは、正体を隠し、海辺の田舎町で静かに生きていた。だが、引退を決意した矢先、凄惨な爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派が町に逃げ込んでくる。さらに、ある出来事が彼の怒りに火をつけ、テロリストとの殺るか殺られるかの壮絶な戦いが幕を開ける。避けられぬ宿命に導かれるように、フィンバーは過去に決着をつけるため、最後の死闘に身を投じる――。
監督:ロバート・ロレンツ フィリップ・リー 製作:フィリップ・リー 撮影:トム・スターン
出演:リーアム・ニーソン、ケリー・コンドン、ジャック・グリーソン、キアラン・ハインズ、デズモンド・イーストウッド、コルム・ミーニイ
2025|アイルランド|106分|シネマスコープ|5.1ch| 英題:In The Land of Saints and Sinners|字幕翻訳:西澤志保
配給:AMGエンタテインメント|映倫:G © FEGLOBAL LLC ALL RIGHTS RESERVED HP:https://professional-movie.jp/