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現代社会に埋もれている“特別な暮らしの一片”を描く『うってつけの日』岩﨑敢志監督インタビュー


第24回東京フィルメックスに出品された岩﨑敢志監督の初長編映画『うってつけの日』が、11月30日からシアター・イメージフォーラムで2週間限定公開されることが決定し、その後全国順次公開される予定です。この映画は、音響の仕事をする主人公の琴と、フィリピンから一時帰国した元恋人昭一が、かつて一緒に暮らしていた団地の一室を片付ける5日間を描き、現代社会の日常をリアルに表現しています。監督が自身の録音技師としての経験から着想を得た情景中心のドラマであり、自然光を意識した撮影が特徴です。

第24回東京フィルメックスに正式出品された、岩﨑敢志監督の初長編映画『うってつけの日』の公開が決定。11/30(土)よりシアター・イメージフォーラム にて2週間限定ロードショー。さらに以降は全国順次公開を予定しています。

本作は、フリーランスで音響の仕事をしている琴と、フィリピンから一時帰国した元恋人の昭一が、かつて一緒に暮らした団地の一室を片付ける5日間の物語。 日々のなかで少しずつ変化していく人間関係や暮らしの形を丁寧に掬い取り、 現代社会に埋もれている日常の一片をありのままに描きます。

監督を務めるのは第43回ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞した 『転回』(2021)や、宮崎大祐監督、山西竜矢監督と名を連ねたオムニバス映画 『テン・ストーリーズ』(2022)での3篇などでこれまで高い評価を得てきた岩﨑敢志さん。 『うってつけの日』も、東京フィルメックスで2021年から新設された、日本映画の なかから選りすぐりの作品を紹介する【メイド・イン・ジャパン部門】へと選出されています。岩﨑監督に作品へのこだわりについてお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました。本作の着想のきっかけになった出来事などはありましたか?

色々なことが着想のきっかけにはなっているのですが、まずカップルや友達といった関係性で同居している人がいて、一人が外国にしばらく行って戻ってきた後の話がつくりたいと思いました。それ以外には、「仕事をしている人」や「お金のやりとり」といった撮りたい要素がバラバラにあったのですが、最終的には本作のラスト、深夜に車に乗ってどこに行くのかよく分からないまま仕事に参加する琴のシーンを思いついた時に、この話を映画にしたいという気持ちが固まりました。

これは僕の実体験でもあるのですが、映画の録音だったりCMやMVの録音をすることが普段の主な仕事で。待ち合わせ場所と時間だけ言われて、深夜にハイエースに乗って仕事に行く。不安感もあるのですが、高揚感もある、そういう不安定な中にある自由みたいなものを映画にしたいなと思いました。

――映画のラストからの逆算だったのですね。

そうなんです。さっき言った「仕事をしている人を撮りたい」というのも、じゃあ、この内容だったら、琴の仕事は広告の録音にしようと。映画だったら台本を読めばどのシーンの撮影なのか分かりますが、CMやMVではこちらは何も聞かされていないこともあって、「俺は今日何の音を撮ればいいんだろう」と考えながら車に揺られている時間が、他には例えようの無い時間なんですよね。

――監督ご自身の経験もあってこその自然かつリアルな描写だったのですね。

この場面は実体験を活かせそうだなとか、こういうことが起こりそうだなということを映画用に少しだけ脚色する形で書きました。ずっと、普通に仕事をしている人を普通に撮って映画に出来ないのかな?みたいなことを考えていたんです。過剰に盛り上げたりドラマの要素を必要以上に持たせることなく、でも一本の映画として観ることが出来る。そんな映画が作れないかなと。そうすると知っている職業の方が描きやすいですよね。
それこそライターという仕事も選択肢にあったんですよ。でもライターの仕事を知らなすぎたので(笑)

――本作の中でもライターでは無いですけれど、インタビューしている描写が入っていますものね。

インタビューをする方って、作品のことを勉強してきて色々と話を聞いて、1時間後には別の現場行って、別の人に話聞くことが日常茶飯事ですよね。今日もそうですけれど、大体単独で行動していて、毎日では無いにしろ、そういう時間を過ごすことが多いって面白い仕事だなと思います。

――確かに私もずっとライターをやらせてもらっていますけれど、不思議ではありますよね。それこそ私もフリーの録音部さんがいるということも知らなかったので、すごく興味深かったです。

フリーの技術部って、カメラマンだと想像がつくと思うんですが、照明も録音もいるんです。そういう、自分が関わっていない仕事のことって知らないことが多くて純粋に面白いですよね。

――先ほど、「同居人の一人が外国に行って戻ってきた時の話」が着想の一つとおっしゃっていましたが、持ち物を片付けるという行為もこうして作品になるとすごく印象的でした。

この映画の中でいうと、「二人で使っていた車がどうなるか」という話が大きな展開で。結局誰の所有物であり、譲るとしたらそれはお金で解決出来るのか?これは誰の持ち物で、それは本当の意味でその人が所有しているのか?そういうことにすごく興味があるんです。

――確かに「車の所有」って不思議だなと思いました。気軽にあげられるものでは無いですし、もらったとしても保険とか駐車場とか準備がありますよね。

僕、保険の契約とか、約款とか読むのが大好きで、それだけを撮っている映画を作りたいくらいなんですよね。自分が知らない契約というのが世の中にいっぱい存在していて、みんながその上で生きて、社会が成立していることになっている。それがすごく面白いと思いますし、気になります。

――確かに、私たちの周りには驚くほど多くの契約とかやりとりがありますものね。いつかぜひ観てみたいです。また、本作で印象的だったのは自然光と思えるほどの優しい光だったのですが、撮影についてのこだわりはいかがですか?

照明の方に、撮りたい明るさを伝えて、良い塩梅で表現してもらっています。夜のシーンに関しては、個人的に明るく撮ることに抵抗があるのでこだわっています。日本映画の夜ってすごく明るいんですよね。なぜなんだろうといつも思っているので、「見えないのは夜なのだから、あまり明るくしなくて良いよ」と伝えていました。

――確かに夜の車の中も彼女の表情が見えないくらいの暗さで、そこに想像の余地がありますし素敵ですよね。監督が一番刺激を受ける映画はどんなものですか?

好きな映画はたくさんあるのですが、同世代の友達の映画が一番刺激になりますね。一緒に作ることもそうですし、劇場に観に行っても学びが多いです。竹内(里紗)さんもそうですし、清原(惟)さん、太田達成さんなど、それぞれ違うことをやっているのですが、同世代で同じ日本で生きてきて、触れてきているものも似ているというか。今社会で起きていることに対して、同じことを目の当たりにしているんですけど、描き方やアプローチが全く異なる所が面白く、刺激を受けます。

『うってつけの日』
11月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて2週間限定ロードショー
©2023「うってつけの日」

◉ビリング
村上由規乃
監督:岩﨑敢志
脚本:岩﨑敢志 梅澤舞佳
撮影:寺西涼 照明:西野正浩 録音:三浦一馬
助監督:梅澤舞佳 制作:山口真凛 音楽:寺西涼
配給:boid
2023年/日本/69分/

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