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映画『ネネ-エトワールに憧れて-』新鋭ラムジ・ベン・スリマン監督インタビュー 「フランスで上映された時とは、違う受け止め方をしてほしいと思います」


映画『ネネ-エトワールに憧れて-』が2024年3月のフランス映画祭に正式出品され、11月8日から全国公開されます。物語は、パリ・オペラ座バレエ学校でエトワールを目指す黒人少女ネネの成長を描いています。監督のラムジ・ベン・スリマンは、バレエ業界の言葉や文化を忠実に再現するために細部にまでこだわりを持ちました。また、映画中で、主人公ネネが人種差別や僻みによる試練を経ながら成長していく姿が描かれ、教育者マリアンヌの複雑なキャラクターにも注目しています。

世界最古の歴史と格式を誇るパリ・オペラ座のバレエ学校でエトワールを目指す少女ネネの物語を描く、映画『ネネ-エトワールに憧れて-』が公開になります。

2024年3月に横浜で開催されたフランス映画祭に正式出品された本作は、バレエの美しさと厳しさを鮮やかに描くと同時に、人種差別や才能への僻み妬みで苦しみながらも常に前向きに生きるネネの姿を通して、その周りの人々も成長していく感動作となっています。

脚本・監督を務めたフランス映画界期待の新星、ラムジ・ベン・スリマン監督にオンラインでインタビュー。劇中に本人役でも出ているパリ・オペラ座バレエ団のエトワールであるレオノール・ボラックが本作を観て動揺した話など、さまざま語ってくれました。

■パリ・オペラ座とは?(公式サイトより)

パリ・オペラ座バレエ学校は、国王ルイ14世が設立した王立舞踊アカデミーに起源を持ち、300年以上の歴史と格式を誇る世界で最も古いバレエ学校。世界最高峰のバレエ団の一つであるパリ・オペラ座バレエ団の団員の95%は、このパリ・オペラ座学校の出身者であり、毎年数百名の応募者の中から、20人程度が入学できるという狭き門。入学してから卒業するまで毎年選抜試験が行われ、選ばれた者だけが残っていくという厳格なシステムでパリ・オペラ座バレエ団に入団できるのは毎年数人に過ぎない。

●本作は、どのようなきっかけで制作が始まり、完成を迎えたのでしょうか?

スリマン監督:前提として、パリ・オペラ座のバンジャマン・ミルピエの第三舞台がきっかけになっています。バンジャマン・ミルピエが、インターネット上で誰でも無料で観られる5~10分くらいの動画を作るということで、わたしに依頼をしてくれました。その5~10分がダンスであったり、音楽であったり、歌であったり、とにかく新しい才能を発掘したいということ、みんなが無料で観られるようにしたいということ、その第三舞台で撮っていた作品が、今回の『ネネ』という作品につながりました。

撮影については、非常に順調に進みました。パリ・オペラ座のバレエ学校での撮影は許可されなかったので、スタジオでバレエ学校を再構築する必要がありましたが、細かいところまですべて再現しました。たとえば床には商標があるような特殊な床材でしたが、これも再現しました。あとは教室の中のバレエのバーも同じような木製のものを使ったり、ディテールまでこだわりました。オペラ座のバレエ学校では実際には撮影出来なかったのですが、バレエ学校を細部に至るまでスタジオに再現したことによって、演技をする人たちが実際のバレエ学校にいるかのように演技をしてもらう環境が出来たと思っています。

ネネが自分のバレエシューズを買うシーンが劇中に出て来ますが、これはパリ・オペラ座の目の前にあるレペットという象徴的なブティックなのですが、実際の店舗を借りて撮影しました。重要なシーンだったので、撮影出来たことは大きかったです。撮影は全体的に順調に進みました。

●本作を撮る際、気をつけたことは何でしょうか?

スリマン監督:脚本の段階からすごく気をつけていました。バレエ業界で使われる用語、バレエ学校で講師が使うフレーズなどは、こちらで勝手に考案したものではなくて、本物のバレエ学校の先生が使っている言葉をそのままセリフにしました。というのも実際とは異なるセリフや表現を入れてしまうと訴えられる可能性があり、「事実とは違う!」と裁判になったら大変なので、非常に細かいところまで気を使いました。

それからネネと同期にあたるバレエ学校の同級生の俳優さんたちのチョイスに関しても、演技力だけではなく、バレエ学校の入学試験に行く基準を満たしている――たとえば体重や身長とか、体形とか、こういう子ならバレエ学校の入学試験に行くだろうと、そういう基準を満たしてる子から選びました。すべてに渡って細かく決めて、念入りに準備してわたしたちは撮影に臨みました。そのことが実際に作品にどう出ているかは分かりませんが、撮影する段階ではすみずみまで気を配りました。

パリ・オペラ座のバレエ団のエトワールであるレオノール・ボラックがこの作品を観た時に、動揺するくらい自分が小さい時に体験したバレエ学校そのものだと言ってくれました。

●本作が日本で上映されることについて、日本の映画ファンにはどう受け止めてほしいですか?

スリマン監督:公開されること、とてもうれしく思っています。フランスで上映された時とは、違う受け止め方をしてほしいなと思います。フランスで上映された時は主人公のネネという人物像に注目が多く集まったのですが、本当はマイウェン(ネネに立ちはだかる校長マリアンヌ)が演じた役が非常に複雑なんですね。その役柄に注目してほしいです。ネネがこの先30年どういったキャリアを送るのか占っているようなところもありますので、真の意味でわたしの作品を観ていただくならば、マイウェンのことも注目してほしいなと思います。

■公式サイト:https://neneh-cinema.com/

■ストーリー

パリ郊外の団地で育った労働者階級の12歳の黒人少女ネネ。

何よりもダンスが大好きで、自宅近くや郊外線RERの駅で伸びやかに踊る喜びを感じさせる彼女のダンスには人を惹きつける“華”があった。ネネはパリ・オペラ座バレエ学校の入学試験に見事合格、毎日時間をかけて髪をシニヨンにまとめ、熱心にレッスンに励むネネは才能を花開かせていく。

だがネネが憧れている、パリ・オペラ座の最高位“エトワール”だった校長マリアンヌは伝統を守ることに固執し、「バレエは白人のもの」とネネを邪険に扱う。またネネを羨み、あるいは妬む同級生たちの嫌がらせも始まる。
このままバレエを続けるか苦悩するネネ…そんな最中、マリアンヌの隠された秘密が明らかになる――。

11月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

(執筆者: ときたたかし)

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