映画『陰陽師0』(ゼロ)が公開中です。呪術の天才と呼ばれる若き日の安倍晴明を演じる山﨑賢人をはじめ、晴明と衝突しながらも徐々に友情が芽生えバディになる貴族・源博雅(みなもとの ひろまさ)を演じる染谷将太、博雅の幼馴染であり、のちに帝の目に留まる皇族の徽子(よしこ)女王を奈緒さんと豪華キャスト陣が集結している本作。
夢枕獏の小説「陰陽師」は、平安時代に実在した《最強の呪術師》安倍晴明の活躍を描いた大ベストセラーシリーズ。1988 年に刊行され、35 年たった現在でも定期的に新刊が発売されており、シリーズ累計発行部数は680万部を超え、アジア・ヨーロッパなど世界でも人気を集めるなど、長きにわたり世界中を賑わす大人気コンテンツ。“陰陽師”というコンテンツは TV ドラマ、アニメ、舞台、歌舞伎、ゲームなど多種多様に扱われてきましたが、本作では安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代が描かれます。
本作のメガホンをとった佐藤嗣麻子監督と、呪術監修の加門七海先生に本作の魅力や、呪術へのこだわりについてなどお話しを伺いました!
※山﨑賢人さんの「さき」は立が正式です。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。「蠱毒」などもそうですが、呪術のシーンがかなりしっかり出てきて驚きましたし、素晴らしかったです。まずは呪術へのこだわりを教えていただけますでしょうか。
加門先生:まず、正確なものを出さないことですね。資料などに残されているものに少しアレンジしたものをしないと、何かあった時が怖いなと考えました。この呪文を唱えたせいで体調不良になった、カメラが壊れた、映像に不具合があった、などということになったら困りますからね。本物を基にしていますけれども、印も呪文も若干フェイクを入れている所はヴィジュアルとは別の部分ですごくこだわった所です。
――なるほど、唱える側も危険ですし、映画という媒体で多くの方が観るものというのも怖いですね…。
加門先生:実際には関係が無くても、何かあった時に「もしかして」と思うのって嫌な気持ちになりますしね。
――監督は加門先生の監修された呪術をどの様にとらえられましたか?
佐藤監督:まずかっこいい!やったー!って思いました。さすが加門先生だなと。それだけ完成度の高いものでしたから、山﨑さんも普段言わない言葉のオンパレードで大変だったと思います。手の動きも複雑なので、「この印の時は、この手」と覚えるためにすごく一生懸命練習してくださいました。
加門先生:山﨑さんの動きを見て、さすがだなと思いましたよね。普段ののらりくらりとしている晴明が印を組んで呪文を唱える時はガラッと変わりますから。
▲晴明と博雅の劇中衣装。
――安倍晴明はこれまでもたくさんの俳優さんが演じられてきましたが、山﨑さんの晴明がまた新鮮で美しかったです。
佐藤監督: 本作の原作となっている夢枕獏先生の安倍晴明って長身の美形なんですよね。その他の印象が強すぎて皆さんもしかしてもう忘れているかもしれないですけれど、晴明って美形なんです(笑)。山﨑さんはピッタリですし、最近山﨑さんがやられている役柄も「ストレートに美形」設定のものが少なかった印象でしたし、そういう意味でも山﨑さんの晴明って良いなあと私自身も感じました。
加門先生:初めて試写を観た時にピッタリだなって思いましたね。美しいのはもちろんのこと、不思議な感覚がありました。山﨑さんが呪術を行っているシーンは、魂をそっと隣に置いている様に感じたんです。「呪術を扱う時には感情的になってはダメ」という話をしたんですね。感情に流されて、怒ったりすると呪術の効力は無くなるので。山﨑さんはずっと冷静を保ちながらお芝居をされていたので、あそこまで体現出来るなんてすごいなと思いました。
佐藤監督:よく、呪術をテーマにした作品で「絶叫しながら呪文を唱える」みたいなシーンってあるじゃないですか。あれは、呪術オタクとしては違うなと感じていて超能力発動みたいな描き方にはしたくなかったんです。山﨑さんはそんな晴明の冷静さと所作を見事に演じてくださいました。
――染谷将太さん演じる源博雅とのバディも素晴らしかったです。
佐藤監督:晴明と博雅のやりとり良いですよね。ある意味“妖怪探偵”、“幽霊探偵”というか、2人で謎解きをしていく過程がすごく好きなんです。博雅ってすごく徳が高い人物ですよね。晴明の方が終始引っ張っている様で、実は晴明の方が博雅に色々なことを教わっている。獏先生の人間描写が素晴らしいので、染谷さんが博雅を演じてくださって良かったです。獏先生もこの2人の姿を観て泣いたそうです。
――小林薫さん、北村一輝さん、國村隼さんらの博士たちも凄みがあって。博士たちのファンもすごく増えそうな気がしました。
佐藤監督:全員悪役に見えるんですよね。素晴らしい俳優さんたちが演じてくださったこともあって、誰が本当に悪いのか分からないミステリー要素も高まったと思います。加門先生は博士推しです!
加門先生:博士いいですよね。本当に大好きで、試写で観た時から虜になりました。
――願わくば博士たちのグッズも欲しいです…(笑)。また、美術も素晴らしかったです。全てセットですか?
佐藤監督:室内は大体セットですね。出来るだけ本物である方が撮影しやすいですし、編集作業が大変なのでブルーバックはなるべく無い方が良いと思っていました。龍などのシーンでどうしてもCGは必要になりますし、もうすでに多すぎてパンク状態だったんで、なるべくセットで。印象的だったのは、徽子女王の部屋です。花びらを蒔く巻くところは私も決めていたのですが、美術さんがさらに女性らしさを演出するべく、華麗なセットを作ってくれました。
――晴明が本を読んでいる図書館の様な場所も好きです。
佐藤監督:占い師の鏡リュウジ先生も、あの部屋にすごく萌えていましたね。
加門先生:私もそのセットに入らせていただいて。こんなところで暮らしたい!というくらいカッコ良かったですし、本にも短冊も全部実在する呪術関係のタイトルが入っているんですよ。まさに“呪術図書館”みたいな空間でした。美術スタッフの方がよく調べてくださっていましたし、やっぱり呪術オタクだったみたいで。印をスタッフ陣も覚えてしまうほど、呪術好きが多かったですね。
佐藤監督:素晴らしい呪術オタクたちが自然と集まってきて。
加門先生:さらにこの現場に携わることで、どんどん好きになって知識が増えていって。
▲実際に使用された小道具たち。
――素晴らしいですね。呪術オタクが呪術オタクを呼び寄せるといいましょうか…。ちなみに、佐藤監督の旦那様である山崎貴監督も呪術関連はお好きなのですか?
佐藤監督:全然好きじゃ無いんです。山崎貴監督はタイムトラベルとかロボットとか戦闘機とかが好きですね。ただ、時々私が言っていることや、呪術オタクとの会話が少し作品に取り入れられていることはありました。私も『陰陽師-1.0』作ろうかな…(笑)。
――ぜひ、続編も観たいですし、いちファンとして楽しみにしています!お2人は、昨今の呪術をテーマにした作品の人気についてはどう感じられていますか?
佐藤監督:私は歴史に基づいた呪術が好きなので、今のブームとは好みの路線が違いますね。
加門先生:派手なアクションの道具として呪術が使われていることが多くて、私たちが好きなものとは少し違いますよね。でも、楽しめればそれはそれでオッケーだと私は思います。必ずその世代によっての呪術の“ファーストインパクト”というものがあって、その作品に触れることで「じゃあ本当の呪術ってなんだろう」とか、「どうやって扱われたのだろう」と調べるきっかけになる。100人いれば、1,2人はそっちの沼に入るんですよ。沼の入り口として、様々な作品が出てくるのは面白いなと思います。そして、「もっとこっち側にこい」と(笑)。
――良いことも悪ことも、人の思い込みとか想いによって呪いになってしまうんだなということを、本作で見せつけられました。
佐藤監督:そうなんですよ。あと、「本当」のことを見る時って、「良い」「悪い」という観点もなくて。
――なるほど、良い・悪いとジャッジしている時点で既に…。
佐藤監督:人って反射的に判断してしまうので、それも軽い呪いですよね。良い・悪い無しで物事を見る訓練をすると良いですよ。どうしても良い・悪い、好き・嫌いでジャッジしちゃいますからそうならないように「本当」を見れる様に私もトレーニングしています。
――今お話をしていてハッとしました。私もそうですが現代にこそ必要な力ですね。本作で呪術の世界に沼った方にオススメの本はありますか?
佐藤監督:まずは加門先生の本を読んでください。『呪術講座 入門編』という素敵な本も出ています。
加門先生:ありがとうございます。日本の呪術だけではなくて、様々な国に呪術はありますし、古典も膨大にあります。まずは表紙のデザインでも良いので気になった本があったら手にとってもらうことですかね。そこからずっと深掘りしていくと最後は1つになるかもしれないので、とっかかりは楽しく読めそうなものを選んでください。
佐藤監督:あとはダスカロスという人の本が面白くて……。
加門先生:この話をはじめたらあと何時間もかかります(笑)。
――本当に深い沼である世界ですね。本作も皆さんがどの様な感想を抱かれるか楽しみです!
佐藤監督:呪術ファンには、もういっぱい呪術に関してツッコんで欲しいですし、恋愛作品が好きな方には切ない恋愛模様を楽しんで欲しいです。イケおじファンには最高の博士を堪能してもらって、原作のファンには晴明と博雅のバディを見守っていただきたいです。
――今日は素敵なお話しをありがとうございました!
映画『陰陽師0』大ヒット上映中!
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