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11月23日、京都・上七軒歌舞練場で「Nothing Design Talk コンセプトから製品へ:Nothing流デザイン哲学」と題したイベントが開催。完全ワイヤレスイヤホン「Nothing Ear (2)」やスマートフォン「Nothing Phone (2)」の開発に携わったデザイナーとクリエイティブディレクターによる講演が行われました。
日本からの影響
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Nothingでデザインディレクターを務めるアダム・ベイツ氏は、テクノロジーとデザインに触れた過去の経験として「ゲームボーイ」と「ウォークマン」を挙げました。ゲームボーイは同氏が8歳の頃、フロリダへ家族旅行に行った際に他の子供が持っているのを目にして、ディズニーワールドのお土産を買ってもらう代わりに貯金して購入したのがきっかけ。ここから日本のテクノロジーとデザインへの愛が始まったと語ります。ウォークマンはお姉さんのおさがりでもらった物を愛用し、ベッドで自分のためにビートルズがコンサートを開いてくれる想像をして楽しんでいたとのこと。
子供時代に触れた日本のテクノロジーや製品に共通するポイントとして、「今までにない革新的な製品であること」、「市場調査によって生まれたものではなく、少数の集団によって人生や生活がより良くなるアイデアを形にしたこと」を挙げます。
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同氏が大学を卒業して入社したダイソンの製品開発も、市場調査には投資せず、試作品を繰り返し作って改良しながら開発を進める点、自分たちが思い描いた将来を思い切って形にしていく点が特徴で、「失敗を恐れるな」という社風は任天堂にも共通していると分析します。こういった手法で生まれたダイソンの製品がドライヤーの「スーパーソニック」で、同氏も誇りに思っているとのこと。
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ちなみに、この日登壇したNothingのグローバルブランド・クリエイティブディレクターを務めるライアン・レイサム氏も、日本製のシンセサイザーやドラムマシンから生み出されたエレクトロニック・ミュージックに強く影響を受けたとして、日本の音楽技術に刺激され、力を与えられていると語りました。
透明デザインの理由
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Nothingといえば、完全ワイヤレスイヤホンもスマホも、中のパーツが見える透明デザインを採用しているのが特徴です。講演では、透明デザインを採用する理由についても明らかにされました。
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Nothing製品のデザインでキーワードとなる「Transparency(透明性)」は、プラスチックやガラスといった素材を示すことではなく、アイデアに関してオープンであること、すべてを開示して秘密にしないという信条やモットーを示しているとベイツ氏は語ります。実際、開発拠点となるロンドンのスタジオに一般人やジャーナリストを招いて開発中の製品を見せたり、発表会を実施しているとのこと。さらに、レイサム氏はマーケティングや製品開発、ブランド、コミュニケーションのすべてにおいて透明性が大切だと語り、ユーザーコミュニティと意見を交換し、共同で開発していることを明らかにしました。
Glyphインタフェースが生まれた背景
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Nothing Phoneの大きな特徴である、背面の「Glyphインタフェース」。着信や通知の際、背面にライン状に配置されたミニLEDが点灯して、古代の象形文字からインスパイアされた独自のデザインパターンが浮かび上がるというNothing独自のインタフェースです。講演ではこのGlyphインタフェースが生まれた背景についても説明されました。
レイサム氏は、スマホを今どのように創生できるのか、すべてを問い直し考えた結果、ユーザーを中心に置いてユーザー体験を最高のものにする観点からGlyphインタフェースを生み出したと語ります。ユーザーが画面を見つめる“スクリーンタイム”を減らすことが狙いのひとつ。スマートフォンを伏せて背面を見るだけで通知の種類や発信者が分かるので、クリエイティブなユーザーが長時間、集中を切らすことなく作業できると考えました。
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有機的で使い勝手のよい機能も。Glyphインタフェースの弧が伸びる様子から、Uber Eatsのドライバーが到着することを確認できる機能も用意されています。いちいちスマホを手に取ってアプリを起動し、画面を確認することなく、家の近くまで来たことを背面で確認したら玄関で待てばよい、という仕組み。
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Glyphインタフェースの発光や音のパターンを自分でデザインできる「Glyphコンポーザー」も利用可能。こちらには、Nothingの共同出資者であるエレクトロニック音楽グループ、Swedish House Mafiaが音源を提供しています。
テクノロジーにワクワクを取り戻す
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レイサム氏がNothingのビジョンとして示したのが、「テクノロジーにワクワクを取り戻す」という言葉。テクノロジーの「冷たい」「非人間的」「無味乾燥」というイメージから離れて、純粋なテクノロジーと人のぬくもりが交差するところがNothingであるとして、「テクノロジーのぬくもり」をNothingのデザイン哲学と定義しました。
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封を破って開ける製品のパッケージや、フィジェットトイのようにクルクル回して遊べるケースも、ワクワク感や楽しさを演出するもの。
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テクノロジーのぬくもりを表現する姿勢は、製品のビジュアルコミュニケーションにも表れています。Nothing Ear (1)では、「小さなマシン」をイメージした昆虫が製品と戯れるビジュアルをフィーチャー。Nothing Phone (2)では、Glyphインタフェースの光にうっとりしたタコが一緒に遊んでいる様子を表現しています。
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グリッドを用いたデザイン、ドットを使ったロゴのデザインなど、体系的でミニマルなデザインも大きな特徴。
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Nothing Phone (2)では背面のデザインは対称性や総合性、一体感を考え、ソフトウェアやユーザー体験も同様に重視して考えた結果、アイコニックで唯一無二の製品になったとしています。
このように、遊び心と実験的な精神を重視した結果、画期的な製品を世に送り出せる環境が確立したと説明。さらにテクノロジーをワクワク感のあるものにする事例として、ロンドンのソーホー地区にオープンした実店舗、缶ビール、アパレルなどの事例を紹介し、「自分の可能性に自分で制限をかけるのをやめよう」「楽しいことはどんどん、できることはやろう」とメッセージを発して講演を終了しました。
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イベントはこの後、第2部としてゲストを迎えたトークショー、庭園での交流会が実施され、製品を手に取ったり登壇者と参加者が交流する姿が見られました。