東欧を代表するアニメーションスタジオ・Animagradが制作の、騎士に憧れている俳優ルスランと王女ミラの身分違いの恋、そして2人が悪の魔法使いに立ち向かう姿を描くファンタジー・ラブストーリー、『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』。
「少しでも日本の映画業界から出来ることを」という想いを共にし、日本語吹替版で主人公・ルスラン役に抜擢されたのは、グローバルボーイズグループ・INI のメンバー髙塚大夢さん。声優初挑戦でありながら、愛するミラを救うために不器用でも困難に立ち向かう主人公・ルスランを等身大に演じています。また、ヒロインである王女ミラを演じるのは、人気声優の高橋李依さん。主演の2 人を取り巻く個性豊かなキャラクターの吹替を、岡本信彦さん、多田野曜平さん、森久保祥太郎さん、NON STYLEのお2人、別所哲也さんなどが担当し、超豪華声優陣が脇を固めています。
この、『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』はElles Films 株式会社代表の粉川なつみさんが、ウクライナの映画業界への貢献を目的にほぼ全財産を費やし日本上映権を購入。ウクライナ制作のアニメーション映画として、日本初の映画館での上映作品となります。全国規模の劇場公開と日本語吹替版の制作を目指して開始したクラウドファンディングでは、約700人もの人々の賛同を得ることができ約950万円の資金が集まりました。
昨日発表された「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024」を受賞した粉川さん。今回のチャレンジから得たもの、感じたものとは?お話を伺いました!
◆ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024発表! | 日経WOMAN
https://woman.nikkei.com/atcl/column/22/111000047/112400001/ [リンク]
――本作、私も楽しく拝見させていただきました! まだまだ全国に広がっている中ですが、改めて、粉川さんが一人で始めたプロジェクトということが本当に凄い事だと思います。
ご覧いただきありがとうございます。ウクライナの紛争を知った時に、数万円など少額の寄付をしていました。その金額は自分にとっては安くない額ですが、もっと違う支援してが出来ないかなと考えた時に、映画を上映し、その興行収入を寄付すれば良いのではないかと思い立ちました。
元々「チームジョイ」という配給会社にいたのですが、中国作品を中心に買い付けている会社でした。そこで中国に限らず全世界のアニメ作品をリサーチするという業務をしていて、その中でたまたま『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』を見つけました。ウクライナへの支援を考えた時にその事を思い出し、取り寄せました。英語字幕のみで、私は英語が堪能ではないのですが、それでも純粋に楽しめて。これを日本で上映したい!と。
――ワクワクドキドキしながら子供たちも楽しめる作品ですよね。
主人公のルスランは最初自分に自信を持てないキャラクターですが、ヒロイン・ミラのために命をかけて戦う感じが、今のウクライナの方々とリンクしているような感覚もありました。動物のキャラクターも可愛いですし、子供たちから大人まで幅広い方が楽しめる映画ですよね。
――ウクライナのアニメ制作事情はどの様な感じなのでしょうか?
本作を手がけているオレ・マラムシュ監督が言うには、ウクライナでは日本のアニメがすごく人気らしく、監督自身も好きだそうです。ロディーの声を担当してくださっている、ウクライナ出身の工藤ディマさんも日本のアニメがとても好きだとおっしゃっています。
――ハリウッドの3DCGアニメーションに比べると荒削りな部分もあるかもしれませんが、2018年にこのクオリティーのCG作品を作っていたんだと思うとすごいですよね。
ウクライナ・キーウにあるStudio Animagradというアニメーション・スタジオが手がけているのですが、本作が初の長編だそうです。2013、2014年は2Dアニメーションとして企画していたそうですが止まったり無くなったりして、その後も原型を少しずつ変えながら2018年に3Dアニメーションとして完成しました。
日本では作品を完璧に作ったり、ある程度の目処がついてから「公開」の発表をしますけれど、ウクライナでは途中でも「映画を公開するよ!」と発表しちゃう。それが面白いなと思いました。私も完璧なプロデューサーでは無いから、「とりあえずやってみよう」というウクライナ方式でやってみようと! 例えば、英会話に行こうと思って、英単語を覚えてから行こうかなとか考えていると結局行かなかったりしますよね。
――これは本当、どの仕事や勉強、趣味にも通じる話ですね…! 「とりあえずやってみよう」というウクライナ方式、素敵です。
私は新卒で映画宣伝会社に入社して、その時に映画のビジネスなどについて色々学びました。その後チームジョイに入社した時に、映画業界に関わってこなかった方々が同僚になって「これは何でこうなんですか?」とかストレートに質問をしていて、なるほどと思うことがあったんです。何となく「これはこうするのが当たり前だよね」とルーティンでやってしまうのではなく、純粋な質問にハッとさせられることもあって。日本の映画の慣例みたいなものに囚われないチームジョイのおかげで新しいことへチャレンジするハードルが下がったと思います。
――まずはチャレンジすること、とても勇気をもらえます。
そこからは英語での契約書のやりとり、製作委員会を仕切ったり、やれるところまでは自分でやりとりして進めていきました。最初は本当に気合いだけというかガッツだけでやっていたプロデューサー仕事ですが、周りの方が本当にあたたかく手を差し伸べてくれて。こうして日本で劇場公開出来ていることが感慨深いですし、ありがたいです。多くの方に感謝の気持ちでいっぱいです。
――改めて、この作品の魅力をどこに感じていますか?
大切な人のために頑張ることの大切さというストーリーにまず惹かれましたし、テンポがすごく早くてガーッと進んでいく感じが面白いと思います。子供の頃の記憶ってすごく残るから、ぜひお子さんにもたくさん観て欲しいです。私自身、初めて観た映画が『ハリー・ポッター』で、両親が読みきかせしてくれた本の中で自分が想像していたものと映画が違いすぎて印象に残って、そのことがきっかけで映画業界に入ったので。
この作品からウクライナのことを知ってもらえたら、少しでも気にかけてもらえたら。監督も「ウクライナの人は日本のアニメしか知らなかった、自国のアニメを知らなかったんだ」とおっしゃっていて、日本のアニメ文化とウクライナのアニメ文化、双方向のコミュニケーションが取れたらそれが一番幸せな事だと思います。
――これからの『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』の広がりが楽しみですね。
ジャストアイデアではありますが、いつか野外上映などのイベントも企画して観たいなと思っています。あとは畳の上で上映とか。ウクライナと日本の文化のコラボレーションを楽しく続けていきたいと思っていますので、ぜひ応援していただけたら嬉しいです!
――今日は素敵なお話をありがとうございました!
監督:オレ・マラムシュ/制作年:2018年/制作国:ウクライナ/制作スタジオ:Animagrad/上映時間:94分
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