『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』刊行記念対談の「後編」は、前編から引き続き多彩な顔触れの脚本家の面々や、京都映画スタッフ座談会についての興味深いメイキング話をご紹介する。
今年(2023年)は『必殺仕置人』放送開始50年というアニバーサリーイヤーゆえに、本書刊行記念のトークイベント(5月27日/西荻窪・今野書店)や、ラピュタ阿佐ヶ谷&ザムザ阿佐ヶ谷での必殺シリーズ上映イベント「必殺大上映 仕掛けて仕損じNIGHTS」(6月17日~8月19日)開催、そして「『必殺仕置人』タイトルロゴ入りTシャツ」や、人気キャラクター「念仏の鉄(演:山﨑努)」の精密フィギュア商品化(アワートレジャー/予約受付中)など、ファンの興奮をさそう出来事がいくつも用意されている。50年の時を超え、多くのファンを魅了し続ける「必殺シリーズ」の醍醐味を、『必殺シリーズ異聞』および『必殺シリーズ秘史』から感じ取っていただきたい。
高鳥都(『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』著者)
秋田英夫(ライター/必殺党)
「必殺を支えた9人の脚本家(その2)」
秋田 高鳥さんが直接取材をされた松原佳成さん、保利吉紀さん、田上雄さんのインタビュー&特別寄稿も、必殺ファンにとってかなり新鮮な内容で楽しめました。必殺シリーズでは、主に東京で活躍されていたライターさんを京都に呼び寄せ、“かんのんホテル”に集めてシナリオを書いてもらっていたという話を以前からよく聞いていましたが、保利さん、田上さん、そして亡くなられた中村勝行さんたち「後発組」のライターさんは、大阪の“ホテルプラザ”に宿泊して『必殺必中仕事屋稼業』や『必殺仕置屋稼業』を書かれていた……なんていう話が飛び出ると、嬉しくなってきます。
高鳥 保利さんは「もう高齢だし、会って話すのはしんどいから、質問を送ってくれたら原稿で答えるよ」とおっしゃられたので、A4の紙に質問を5~6枚くらい書いてお送りしたんです。そうしたら、戻ってきた原稿に「質問事項が多すぎる。めまいがしそうだ」みたいなことが書かれてあって(笑)。しかし、いただいた原稿はペラで50枚以上ありまして、さすがの面白さでした。
秋田 原稿のあと、高鳥さんは京都での取材中に保利さんと直接お会いしてるんですよね。寄稿文のあとにご本人の短いインタビューまであって、嬉しいサプライズでした。
高鳥 原稿のやりとりをしているときから保利さんが「櫻井さんに会いたい」とおっしゃっていて、櫻井さんも「保利さんに会いたいなぁ」……両想いだったので、僕と山口さんが京都へ行ったとき「この日に櫻井さんに会うので、もしよろしければご一緒しませんか」とお声がけしたんです。ですから、本の中では保利さんがおひとりで語っていますけれど、実は横に櫻井洋三プロデューサーがいるという(笑)。もう会うなりワーワー盛り上がってましたから。その合間に聞いたお話を、さも単独のインタビューっぽくまとめたんです。
秋田 そんな裏事情があったとは!
高鳥 京都映画出身の都築一興さんにもご同席いただきましたが、「元気やなぁ」と感心していました(笑)。ほんと老人ふたりが手を叩いてキャッキャしてましたから。取材をきっかけにそういう再会がいくつもあったのは嬉しかったですね。
秋田 愛のキューピッドである高鳥さんの功績は、はかりしれないですね(笑)。野上龍雄さん、村尾昭さん、安倍徹郎さんたちは京都の岡崎にあるかんのんホテルに泊まる一方で、後発組の保利さんたちは朝日放送の対面にあるホテルプラザにいて、急な呼び出しにも数分で駆けつけられるとか、ライターさんによってグループ分けがされているあたり、とても興味深かったです。そして、どちらのホテルにも属さない、仲川利久プロデューサー直属の松原さんが第三勢力的に存在するという。
高鳥 まさに「三人目の仕置人」という感じ(笑)。このあたりは、『秘史』での佐生哲雄さんのインタビューと合わせて読んでいただくと、より面白くなると思います。松原さんはインタビューのあと、お手紙で「あのときはああだった」という補足が便箋30枚くらい届きました(笑)。そのあと、原稿チェックの戻しと一緒にさらに15枚くらいの追加が来て、驚きました。やっぱり脚本家の方だけに筆が乗ってくるのでしょうね。松原さんも保利さんも、文章だけでなく字の読みやすさが段違いでした。
秋田 早坂暁さんのエッセイ(再録)は必殺シリーズとは直接関連はないものの、独自のシナリオ作りに対する考え方が明かされる興味深い内容でした。その後に続く、奥様の富田由起子さんによる寄稿文は、必殺シリーズを執筆されているころの早坂さんの心境がうかがえる内容で、とても面白く読めました。
高鳥 富田さんはTwitterでも「早坂暁のことば」というアカウントを立ち上げ、早坂さんの生前のお仕事を広く伝える活動を続けています。本書でも、早坂さんが必殺シリーズの歴代ナレーションや『必殺からくり人』を執筆されていたころのお話を掘り起こしてくださり、非常にいいページになったと思います。大映出身の南野梅雄監督も、京都映画とは異なる視点のお話がうかがえるかなと思ってアポを取ったら、昨年お亡くなりになっていました。ご子息である九州大学の南野森教授のホームページにエッセイが掲載されていたので、そちらを再録させていただきました。5000字ほどある長文なんですが、やっぱり映画人の文章ってユーモアがあって面白いんですよね。
「必殺仕置人第1話を石原興、園井弘一と一緒に観る幸せ」
秋田 『秘史』のときには単独でガッツリとインタビューをされた撮影・石原興さんと編集・園井弘一さんが『異聞』ではそろって必殺シリーズを語り合うという「京都映画座談会」もよかったですね。石原さんと園井さんが『必殺仕置人』第1話「いのちを売ってさらし首」を観ながら、当時の思い出を語るという「オーディオコメンタリー」的な趣向もあって、サービス満点でした。
高鳥 前回お話をうかがった京都映画のみなさんは、単独インタビューと違った切り口でお話をしてもらおうと、3組の座談会形式にしてもらいました。映像を流しながらお話してもらったのはすごくよかったですね。やはり映像作品のインタビューですから、いくらあのときはこうだったと口で説明しても伝わりづらいですが、映像そのものを観ればパッと思い出してくれるんです。ところどころ『秘史』と同じ話になる部分もありましたけど、少し使いどころをズラして新しいエピソードを入れたりしています。「いのちを売ってさらし首」は、僕にとって必殺シリーズの中で一番好きな話、ベスト・オブ・ベスト・オブ・ベストのエピソードでしたから、あれを石原さん、園井さんと一緒に観ながらお話を聞けたのは最高でした。まさに「俺得」という感じ(笑)。
秋田 まあ、高鳥さんの俺得がそのまま、「必殺ファン得」にもなっておるわけです(笑)。映像を観ながらのインタビューで、たいへんだったなってことはありましたか?
高鳥 けっこう難しかったんですよ。DVDのオーディオコメンタリーみたいに流しっぱなし、喋りっぱなしじゃなくて、1シーン観るたびに話題があっちゃこっちゃ行きますから、一回映像を止めて話を聞き、また再生するというのを繰り返していました。しかもそれを再構成しないといけないので……。
秋田 オーディオコメンタリーなら上映時間内に収めなければならないので、話を途中でぶった切ったりすることもありますが、今回は文章だから話が膨らめばそのまま語りあえばいいってわけですね。DVDのオーディオコメンタリーの中には、話が脱線したまま元に戻りきれず、聞いているほうもかなり混乱したままENDまで行ってしまうケースがありますからね。よーいドンで出発したら、ゴールとはかけ離れてあらぬ方向に着いちゃったという(笑)。
高鳥 こちらも、このときはどうだったんですか? みたいに話をフリますし。どうしたって画面の進行どおりに進まない。基本的に僕のインタビューはお話ししてもらった流れをそこまで細かくは変えないスタイルなんですが、このコメンタリー風対談のところはかなり手が入っています。
「生きたインタビュー」
秋田 京都映画座談会は石原さん+園井さんのほか、記録の野口多喜子さん+演出部の高坂光幸さん、そして照明の林利夫さん+録音の中路豊隆さん+演出部の都築一興さん、どれも活き活きとしたトークが繰り広げられて、とてもよかったです。都築さんの発言で「藤田まことさんはネギが嫌いで、“つたや”のうどんもネギ抜き」というのがありました。藤田さんがネギ嫌いという話は『秘史』でも出てきましたが、このような俳優さんの知られざる一面を拾い上げてもらえると、改めて映像を観返したとき、また印象が違って見えるような気がします。まさに、生きたインタビューという感想です。
高鳥 僕もネギが嫌いなので、その一点に関しては藤田まことさんにすごく感情移入できました(笑)。藤田さんたちが愛した大映通り商店街の“つたや”はもうありませんが、林さん、中路さん、都築さんの座談会は“つたや”の後にできた中華料理屋の“菜館Wong”でやったんです。食べるラー油で有名なお店です。最初は撮影所の会議室でやって、続きはお店で合計6時間(笑)。当時、藤田さんは関係者用の出入り口から奥の座敷へ入って……と都築さんたちの説明を聞きつつ、同じ場所でご飯を食べながら座談会をやっていたという。
秋田 「なんにも覚えてない」という照明の林さんが、いちばん喋っていた……というオチがとてもいいですね(笑)。前回『秘史』でも歯に衣着せぬ発言で話題を集めた、記録の野口さん……おタキさんもノリノリでお話されていたのが文章からうかがえます。そして高坂さんとの2ショット写真も、とっても滋味深くてジーンときましたね。
高鳥 あの夕暮れの写真、リテイクしたんですよ。何パターンかオープンセットで撮ったあと戻る途中に「あっ、こっちのほうが光がいい!」と。あと、これは自論ですが「AP話にハズレなし」というのがあって、前回の佐生哲雄さんに続いて今回の田中浩三さん、松竹の製作補(アシスタントプロデューサー)の取材も貴重でした。おふたりとも経験豊富なプロデューサーなのに、助手時代の話を聞くという……ある意味ぜいたくな取材で、どのパートも下積みのエピソードは現場を客観視されていて、おもしろいですよね。
「俳優インタビューも充実」
秋田 『秘史』では『仕置人』『新仕置人』で念仏の鉄を演じられた山﨑努さんのロングインタビューが大きな評判を呼びましたが、『異聞』では『仕事屋稼業』のお春、『仕業人』のお歌、『新仕置人』のおていを演じた中尾ミエさん、『仕業人』の赤井剣之介、『うらごろし』の先生を演じた中村敦夫さん、『新仕置人』『商売人』の正八、『うらごろし』の正十を演じた火野正平さんと、シリーズを通じても非常に人気の高い3人の俳優さんにインタビューをされたのが目をひきました。
高鳥 音楽の比呂公一さんにもインタビューができましたし、どういうわけか『うらごろし』にとても優しい本になりましたね(笑)。
秋田 みなさん最高のインタビューでしたし、火野さんの近影のポーズも印象的です。
高鳥 『秘史』では山﨑さんに、恐れ多くも念仏の鉄の「指ボキボキ」の構えをしていただいたので、正平さんにも何か正八っぽいポーズをお願いしようと思いました。正ちゃんといえば、よく頭を掻いて「困ったなあ」みたいにしているイメージが自分の中に強くありまして、ぼんやり正平さんにお願いして、頭に手を置いてもらったんです。
秋田 これはぜひ、本書を手に取って正平さんのポーズをぞんぶんに味わってもらいたいですね(笑)。
「大熊邦也、必殺を語る」
秋田 本書のトリを飾るのは、『必殺仕掛人』から監督として参加している朝日放送のディレクター・大熊邦也さんですね。同じく朝日放送の松本明さんは『秘史』に掲載されているとおり2022年7月に亡くなられました。大熊さんは『仕掛人』の監督で唯一ご存命の方で、そういう意味でも貴重です。
高鳥 撮影所ではなくテレビディレクターの立場から、『必殺仕掛人』および必殺シリーズを総括していただこうと思いました。この本では、インタビューのアタマの部分はみなさん実際の「喋り出し」の言葉をなるべく使っているのですが、大熊さんだけは「自分はテレビのディレクターとして参加したのであり、映画界の人間ではありません。あくまでディレクターの話として聞いてください」と、ご自身の立ち位置を改めて確認するような言葉を取材後の電話でいただいたんです。映画監督ではなく、テレビの世界の人間であることを強く念押しされていたのが印象的でした。しかし、大熊さんのお話もなかなかすごいので、お電話をいただいたときにはドキッとしましたよ。
秋田 確かにすごかったですね。あえてこの場では触れませんので、ファンのみなさんはぜひ本書を実際に読んで確かめてほしいところです。僕が読んでいて面白かったのは、大熊さんが撮影所のロケバスの運転手さんにいきなり「1万円貸してくれ」と言われた話。いくらなんでもフリーダムがすぎるだろう! と(笑)。そして高鳥さんがそのネタを別な方たちの対談で振るという。こういったアクロバットなやりとりも最高でした。
「題字・糸見溪南」
秋田 『秘史』ではサブタイトルやエンドクレジットを手がけた竹内志朗さんに取材されましたが、今回の『異聞』では歴代シリーズのメインタイトルで知られる書道家の糸見溪南さんがご登場されました。竹内さんのタイトル文字にもシビレますが、なんといっても番組タイトル文字=『必殺〇〇人』の迫力は、多くの人たちの心をつかみましたね。そしてインタビューを読んで驚いたのは、糸見さんが山内久司プロデューサーの幼なじみだということでした。これって、今までの書籍やムックでは一度も語られていなかったと思います。
高鳥 ですよね。僕も知らなかったので、のっけから衝撃を受けました。大阪のご自宅でインタビューさせていただいたのですが、倉庫からめっちゃデカい「仕事人」と書かれた看板を僕と山口さんと糸見さんの3人で引っ張り出し、拝ませていただくなど、いろいろ楽しい取材でした。
秋田 『異聞』は大熊邦也さんのインタビューでラストを迎えますが、次のページをめくると見開きでドドーンと糸見さん直筆による「必殺」の二文字が躍っていたのにはたまげました。
高鳥 ご自宅で、筆や紙の話をうかがっているうちに「糸見さんによる2023年の“必殺”が見てみたい」という思いが強まってしまい、覚悟を決めてお願いしたら、ほんとうにすんなりと「ほな、書いてみましょうか」とおっしゃられて、とてもありがたかったです。
秋田 高鳥さんと山口さんの誠意が伝わったんでしょうね。本書には糸見さんお気に入りの題字『必殺仕掛人』『助け人走る』『必殺仕事人』という、ファンも納得の3作の書体が掲載されているのも嬉しいです。ちなみに、『必殺からくり人』の『必殺』は『必殺仕掛人』と同じ書体が使われてるそうですね。
高鳥 えっ、何ですかそれ! そういうの取材に行く前に教えてくださいよ(笑)。
秋田 そう言われても、高鳥さんが糸見さんに取材するなんて聞いてなかったし(笑)。
高鳥 必殺シリーズという番組自体は観ていても、かなり遅れてきた再放送世代なのでファン同士の意見交換などを通ってなくて、そういう細かな情報はぜんぜん知らないんですよ。ひとりでテレビに向かってブツブツ言ってただけなので……。マニアの方でもコレクションがすごい人とかたくさんいますよね。本当に感心します。
秋田 いやいや、必殺ファンでもみんながみんな、そんな細かいところばっかり見てるわけじゃないですよ。むしろ知らなくても差し支えないというか、知らないくらいでちょうどいいというか(笑)。話を戻して、最新の「溪南筆・必殺」のおかげで『異聞』という本がビシっと締まりましたね。冒頭の『仕置人』オープニングナレーションとか中村主水の渋い写真もそうですが、紙の本ならでの「演出」が随所に施されたこの本、必殺ファン必携の書がまた一冊増えたという感じです。
「必殺シリーズの底知れぬ魅力」
秋田 改めて『異聞』の取材・執筆の日々をふりかえり、本を手にしたときの高鳥さんの思いを聞かせてください。
高鳥 前回の『秘史』は松竹撮影所の会議室中心でしたが、今回の『異聞』ではより取材範囲が広がり、京都から大阪、兵庫を駆けめぐりました。実は、京都で『異聞』のインタビューをすると同時に、空いた時間を活用してわが人生のベストワン映画『狂った野獣』の中島貞夫監督にも別媒体の取材を行なったんです。その直後にマイベスト必殺の『仕置人』第1話を石原さん、園井さんの生解説入りで観るという、まさに「盆と正月が一緒に来た」状態。まだ今年、半分も行ってないのにこんな幸せな体験ができるとは。後半はもうやることないんじゃないかなと思っています。
秋田 いやいや、まだまだ何かあるでしょう。2023年後半もよろしく頼みます。一度このシゴトに手を染めてしまったら、二度と普通には戻れませんよ(笑)。
高鳥 『新必殺仕事人』の加代みたいなことを言いますね(笑)。前にも言いましたが、『秘史』『異聞』とは別に、必殺シリーズに出演した俳優さんたちのインタビューをまとめた本とか、どこかから出てくれたらファンも嬉しいし、必殺そのものが盛り上がると思うんですけどね……。最近『国書刊行会50年の歩み』と『東映ビデオ50年の歩み』を立て続けに読んだので、やはり「必殺50年のあゆみ」という総まとめ本も必要でしょう。
秋田 僕は25年くらい前から必殺シリーズの書籍やCD解説、映像ソフトなどに携わりましたが、あれ以来文章書きとしていろんな経験を積んできたつもりなので、力のかぎりをつくして『必殺シリーズ作品解説』の決定版を作ってみたい気持ちになっています。まあ注文が来るかどうか、すべてはご縁次第なんですけどね(笑)。ちょうどいいタイミングで『ぱちんこ新仕置人』が盛り上がっていて、『仕置人』のTシャツや念仏の鉄のフィギュアまで発表されて、なかなか楽しい状況ですから、高鳥さんの必殺インタビュー本も次につながるといいですよね。でも、まずは『異聞』をたくさんの人たちに楽しんでもらいたいです。京都映画の「仕事人列伝」という趣の『秘史』もよかったですが、『異聞』はプロデューサー、脚本家、音楽、監督といったオーソドックスなスタッフの証言が詰まっていて、必殺ファンとしては非常に愛着がわいています。
高鳥 ありがとうございます。いや~、やっぱり『秘史』のほうがビギナー向けだと思うんですが、秋田さんが言うように『異聞』もそうです! と押したほうが宣伝になりますよね。ちなみに『秘史』と『異聞』なら、どっちが好きですか。
秋田 テレビ番組でも映画でも、「新しい作品」に惹かれる傾向があるので、今だと『異聞』が好きですかね。でも、高鳥さんの「こういう本を作りたい!」という強い念がこもっているのはやっぱり『秘史』だと思いますから、こちらにも魅力を感じ続けています。『秘史』が良質なドキュメンタリー番組だとすると、『異聞』は内容盛りだくさんのバラエティ番組なんじゃないですか。
高鳥 うまいこと言いますね(笑)。『必殺シリーズ異聞』を全世界の必殺ファンに楽しんでもらいたいのは当然なのですが、今何かを“作っている”人……たとえば脚本や小説を書いている人、書こうとしている人たちにとって、何かしら創作のヒントになるものが詰まっている本だと思うので、そういう人にも読んでもらいたいですね。そして「必殺シリーズ」に触れ、その面白さを体感していただければと思います。各種配信や再放送もありますし、観ようと思えば、こんなに簡単にアクセスできる時代はない。
秋田 必殺ファンは、水面下ではものすごくたくさんいらっしゃるわりに、想像以上にヨコのつながりがない(個人の感想です)から、再放送の録画を失敗したりすると後で観返すことのできないエピソードとか、10年くらいまでは普通にありましたね。テレビ埼玉で平日の朝やっている『仕掛人』から『仕事人・激突!』までの全シリーズ再放送をはじめ、他の地上波、BS、CSでここ数年、絶えず必殺シリーズがオンエアされている環境はほんとうにすばらしい。サブスク配信でほとんどの作品を観ることができるというのも、昔のことを思うと夢のようです。
高鳥 あと、6月半ばからは東京の名画座・ラピュタ阿佐ヶ谷で必殺シリーズの特集上映が始まるので、こちらもチェックしていただければと思います。2か月で24本という史上最大の狂った企画ですが、なかなかスクリーンで見る機会はないと思うのでぜひ。
秋田 『必殺シリーズ異聞』を読むと、必殺シリーズが観たくなりますし、必殺シリーズの面白さにハマると、また『秘史』や『異聞』を読みたくなること間違いありません。
高鳥 なんか昔の日本酒CMで、そういうフレーズありましたね(笑)。
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いつまでも止まらないおふたりの『必殺』トークですが、今回はとりあえずここまで。お楽しみいただけたでしょうか?
2023年は『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』の刊行以外にも、『必殺仕置人』50周年Tシャツ発売や、ぱちんこ 新・必殺仕置人Sの登場、さらには念仏の鉄(山﨑努)の1/6フィギュアの予約開始と、必殺シリーズの話題がもりだくさん。各テレビ局やサブスクでの放送・配信も途切れなく行なわれているので、どんどん必殺ワールドにはまっていきましょう!(立東舎編集部)
タイトル: 『必殺シリーズ異聞 27人の回想録』
著者:高鳥都
定価2,750円(本体2,500円+税10%)
発行: 立東舎
(執筆者: リットーミュージックと立東舎の中の人)