アニメ制作の現場の低賃金や就労環境が問題視されて久しい中、『スレイヤーズ』『ロスト・ユニバース』『灼眼のシャナ』などで監督を務めた渡部高志氏(@TkashiWatanabe)が「本気で転職を考えた」結果、「63歳では絶望と悟った」とTwitterに投稿。将来への不安を赤裸々に綴ったツイートは、約5800のRTと23700以上の「いいね」を集めて おり、「世知辛い」「これほどの人でも厳しいのか」といった反応が多数寄せられています。
2年ほど前、もうアニメなんかやめようと思い立ち本気で転職を考え、人材登録サイト経由で応募したがことごとくだめで、シルバー人材センターに行けと言われ、求人が軽作業、夜勤の守衛、ぐらいしかなく手取り12万程度。63歳での転職は絶望と悟った。厳しい世の中だ。結局転職できぬまま今に至る。—渡部高志 (@TkashiWatanabe) June 13, 2022
2年ほど前、もうアニメなんかやめようと思い立ち、本気で転職を考え、人材登録サイト経由で応募したが、ことごとくだめで、シルバー人材センターに行けと言われ、求人が軽作業、夜勤の守衛、ぐらいしかなく、手取り12万程度。63歳での転職は絶望と悟った。
厳しい世の中だ。
結局転職できぬまま今に至る。
渡部氏は続けて、将来への展望がない事や、定年退職をしているであろう人に思いを馳せて、「60歳定年は早すぎるな」とつぶやいています。
高校時代の同級生はみんな定年退職して悠々自適・・・なのか?俺にはそうも見えんのだが。しかし60歳定年は早すぎるな。俺はまだかろうじて現役だ。—渡部高志 (@TkashiWatanabe) June 13, 2022
卑下するわけではないが、自分からアニメを消したらほぼ無価値の人間だ。
だがいつまでもこの仕事は続けられない。
やがて大きくステージが変わるだろう。
その時どうすればいいのかまだ見えていない。高校時代の同級生はみんな定年退職して悠々自適・・・なのか?
俺にはそうも見えんのだが。
しかし60歳定年は早すぎるな。
俺はまだかろうじて現役だ。
スタジオジブリの前身であるトップクラフトでアニメーターとしてのキャリアを始めて、1989年に放映された『ミラクルジャイアンツ童夢くん』が初監督作品の渡部氏は、近年でも『閃乱カグラ』『タブー・タトゥー』などに関わっており、2021年夏と2022年冬に放映された『現実主義勇者の王国再建記』でも監督を務めています。
「衝撃しかない」「『スレイヤーズ』の監督にこんな事を言わせるなんて」「日本のアニメ業界は冷遇されすぎ」といった声のほか、「何が人生100年時代だよ」「クールジャパンとは一体何?」「インボイス制度が導入されたらどうなるのか」といった政策への不満も見られた渡部氏のツイート。さらに、真面目にアドバイスをする少なくない数のリプライが寄せられていることについて「びっくりする」といった反応も上がっていました。
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が発表した『アニメーション制作者実態調査報告書2019』によると、アニメ制作に従事する人の年収平均は約441万円。20〜24歳では150万円を切っており、フリーランスが全体で過半数を占めています。1ヶ月あたりの就業時間は「160時間超240時間以下」が44.9%と最も多く、作業終了時刻で24時以降との答えが40%近くで、長時間労働が常態となっていることが窺えます。
この調査によると、「老後の生活」に不安を抱えている人が60%超。一線級で活躍するアニメ制作の現場の人たちが、今後もキャリアを続けていける環境を整備することが求められるのではないでしょうか。
※画像はACより