2020年代を代表する大ヒット恋愛映画『花束みたいな恋をした』の製作プロダクション・リトルモアが贈る『はい、泳げません』が6月10日より公開となります。
これは、泳げない男と泳ぐことしかできない女の、希望と再生の物語。NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」以降、初の主演作品となる長谷川博己が、頭でっかちな言い訳ばかりするカタブツな哲学者・小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)を演じ、そんな主人公に水泳を教えるコーチ・薄原静香(うすはらしずか)を綾瀬はるかが演じています。
本作で、小鳥遊の恋人である奈美恵を演じたのが、阿部純子さん。シングルマザー役を演じての感想や、本作への想いを伺いました。
――本作、大変楽しく拝見させていただきました。タイトルからは想像のつかない広がりを見せるあたたかな作品ですよね。脚本を読んだ時はどういった感想を持ちましたか?
最初は明るい気持ちになるコメディ作品なのかな?と思ったのですが、実際に脚本を読んでみると考えさせられる部分もあって。楽しい部分と考えるべきテーマを投げかけられる部分の両方を持つ映画だなと思いました。
――奈美恵という役柄については率直にどう感じましたか?
まず、衣装合わせに行った時に、髪型について相談がありました。「パーマをかけてほしい」と言われて、最初のフィッティングで用意されていたカツラがものすごいアフロで(笑)。それを見た時に「奈美恵さんって面白い人だな!」と。今まで演じたことの無い役柄なんだなって分かって、ワクワクしました。あの髪型で街に出ると、皆さんにチラッて見られるのも新しい体験でした。
――アフロ姿も見てみたいです(笑)。役作りはどの様に紐付けしていったのでしょうか。
脚本を読んだ時に、自分の息子とも友達というか、バディというか、そういった空気感を持っている女性だなと感じました。「子供だから」と接するのではなくて、「2人で協力して生活している」雰囲気が出ると良いなあと思いました。街中で歩いている親子の方々を観察しました。すごくおしゃれなお母さんが、ちょうど順也と同い年くらいの男の子を連れていて。その空間がすごく素敵だったので、少し参考にさせてもらいました。
――本当に、奈美恵さんと順也くんの関係って素敵ですよね。
奈美恵さんは昼も夜も働いているので、実際には寂しい思いをさせている部分もあると思うんです。でもそれを見せずにいつも明るく接しているので、素敵な女性だなと感じました。これまでも母親役というのは何度か演じさせていただいたのですが、今回は「母親、シングルマザー、恋をしている」という3つの要素があったので、どういう風に恋をして良いのか?という事はすごく迷いました。
――色々な要素を持っているキャラクターですものね。
シングルマザーの奈美恵さんがどうやって、小鳥遊先生の様な人と恋をするのだろうと、想像が至らなくて、もっと解りたいと思って何冊か本を読みました。川上未映子さんが出産した時のエッセイ『きみは赤ちゃん』や、北村薫さんの『月の砂漠をさばさばと』という本が印象的でした。『きみは赤ちゃん』は、お子さんへの愛情や育児の葛藤が赤裸々に描かれていて。そういう女性の力強さみたいなものが、この役柄には必要だと思ったので、とても面白かったです。
――小鳥遊先生よりも奈美恵さんの方がずっと年下なのに、奈美恵さんの方が大人に見えますよね(笑)。
冷静ですし、しっかりしていますよね。でも、その感じは私は完成した映画を観るまで気付かなくて。「小鳥遊をじっと見ている」というカットが結構多かったなと。「こんなに冷静な顔をするんだ、私」って新鮮でした(笑)。
――小鳥遊先生が辛い過去を告白するシーンでの奈美恵さんの姿がすごく印象的でした。とても難しい表現方法だと感じたのですがいかがでしたか?
監督がなぜこの作品を作りたいと思っているのかを伺って、あのシーンは監督が「この映画を撮りたいと思った、最も大切なシーンの一つ」と聞いたので、大切に演じたいと思いましたし、難しくもありました。シーンの一つで、私は役柄を演じている立場ではあるのですが、「小鳥遊先生に、ああ言って良かったのだろうか」と、ずーっと考えていて。観てくださった方がどうとらえてくださるのか心配をしてる部分もあります。
――とても素晴らしいシーン、素晴らしい表情でした。
そう言っていただけるとありがたいです。監督は脚本も書かれているので、撮影をしている途中でも何か感じたこと、これは違うなと思ったことを変更しながら作り上げていく印象がありました。「本当に大事な事は登場人物がイキイキとしていることなんだ」という考え方なのかなと思います。そんな監督が作る、この素敵なお話の中で自分が何を出来るだろうとずっと考えていました。
――長谷川博己さんとのシーンが多いですが、共演されていかがでしたか?
とても気さくで色々と話しかけてくださって。かと思えば、小鳥遊先生という役柄もあったので、時にはすごくまじめな顔をされていたり。仕事への向き合い方を学びました。現場の雰囲気って映像に出てしまうものだと思うのですが、現場の雰囲気を明るくすることは、しようと思っても難しいことだと思うので、本当に長谷川さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
――改めてこれから映画をご覧になる方にメッセージをお願いいたします。
これまでの自分と、これからの自分を一緒に考えてくれる様な映画だなと思います。軽い気持ちで映画館に行っても楽しめる作品だと思いますし、とても素敵なメッセージがつまっている作品ですが、あまり身構えずに楽しんで、笑っていただいて。何か残るものがあれば嬉しい限りです。
――本当に幅広い年齢の方にご覧になっていただきたいですし、年齢や環境によっても抱く感想が違うと思うので、たくさん感想を聞いてみたいですね。
本当にそうですね! 観た方はぜひ感想をSNSなどに書いていただけたら嬉しいです。
――今日は本当に素敵なお話をどうもありがとうございました!
撮影:オサダコウジ
『はい、泳げません』6月10日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー
大学で哲学を教える小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)は、泳げない。水に顔をつけることも怖い。屁理屈ばかりをこねて、人生のほとんどで水を避けてきた雄司はある日、ひょんなことから水泳教室に足を運ぶ。訪れたプールの受付で、強引に入会を勧めて来たのが水泳コーチの薄原静香(うすはらしずか)だった。静香が教える賑やかな主婦たちの中に、体をこわばらせた雄司がぎこちなく混ざる。
その日から、陸よりも水中の方が生きやすいという静香と、水への恐怖で大騒ぎしながらそれでも続ける雄司の、一進一退の日々が始まる。
泳ぎを覚えていく中で雄司は、元妻の美弥子との過去や、シングルマザーの恋人・奈美恵との未来など、目をそらし続けて来た現実とも向き合うことになる。それは、ある決定的な理由で水をおそれることになった雄司の、苦しい再生への第一歩だったーー。
(C)2022「はい、泳げません」製作委員会