コロナ禍による外出制限は緩やかになりつつあるが、まだ外食よりも自宅での食事を選ぶ人は多いだろう。ここで考えたいのが日本における食品ロス問題である。
日本における食品ロスの現状や発生要因
農林水産省が公表した2017年度の食品ロス量の総数は612万トン。そのうち、事業系食品ロス量は328万トン、家庭系食品ロスは284万トンであり、2016年から事業系食品ロスは24万トン、家庭系食品ロスは8万トンが減少した。
数字を見ても、事業系食品ロス対策は順調であり、家庭系食品ロスはもっと力を入れる必要がある。
「家庭での食品ロスを抑えるためにはどうすればいいか」専門家に聞いてみた
人間総合科学大学人間科学部ヘルスフードサイエンス学科学科長・時光一郎教授に「家庭での食品ロスを抑えるためにはどうすべきか」をモトタキ記者が聞いた。
――家庭での食品ロスが起きる原因として可食部を捨ててしまう調理法がよく挙がります。ロスを抑えるためにはどうすべきでしょうか。
時光教授:「可食部を調理で捨ててしまいがちな食材には2種類あります。まずは皮を剥いて食べることが多い野菜であるニンジンやダイコン、ジャガイモなど。そして、どこまで食べられるか分かりづらい野菜である、ブロッコリーやカリフラワー、シイタケ、シメジ、エノキなどです」
――皮を剥いて食べることが多い野菜の対処テクニックをお聞かせください。
時光教授:「これらの皮は食べられないわけではないです。ジャガイモの目の部分や緑になっている皮や実の部分は有毒成分が含まれている可能性があり、取り除く必要があります。しかし、食べられる皮の場合は、しっかり洗って皮ごと食べることができます。
例えば通常より細かく切る。ミキサーを使ってジュース状にしてシチューやカレー、スープのベースに使う。長時間の煮込み料理や、揚げ物料理、炊飯器を使えば美味しく食べられるのではないでしょうか。
また、皮だけを食べる場合は、細かく切って上げてきんぴらや野菜チップスにする。あるいは干し野菜にしてしまうのもよいでしょう」
――確かにそれなら無駄が無くなりそうです。どこまで食べていいかわかりづらい場合はどうしたらよいでしょうか。
時光教授:「これは私個人の方法ですが、食材を触ってすごく硬い部分のみを切り捨てるようにしています。ちょっと硬い程度なら、細かく切って長めに加熱すれば食べやすくなります。後は、糠床に入れたり、味噌で漬けたり、干網にいれてみるなど微生物や自然の力を借りる他力本願法です。
楽しく美味しく食べきることが大事です。食べきれない場合は、ある程度処理して冷凍してしまってください」
とにかく細かく刻めば何でも食べられる気がしてきた。
第2回食のアイデアコンテストの実施中
人間総合科学大学では、高校生を対象に食のアイデアを募集する「第2回 食のアイデアコンテスト」を2020年6月1日から7月31日まで開催。講師が審査して、受賞作品を決定する。
テーマは、「保存食材を使った簡単アレンジレシピ」か、「家庭で『食品ロス』を減らすにはどうすればいいか?」のどちらかを選ぶ。ここで言う保存食とは「市販されているもので、今現在あなたのお家にあり、残り期限が3か月以上あるもの」となる。
「保存食のおかずに合う主食は何がいいか」専門家に聞いてみた
コンテストでは、簡単アレンジレシピも募集する。コロナ禍のスーパーでは、「パスタが消えた」「米が消えた」と話題にもなった。実際、主食としてはなにがいいのだろうか。時光一郎教授に再び聞いてみた。
――保存食の相性が良いのは、パスタと米、あるいはパンなどいろんなものがありますが。どれが一番よいのでしょうか。
時光教授:「これは難しい質問です。その人の好みや年齢、ライフスタイルはもちろん、健康状態やどんな保存食があるのかによって変わってしまうからです。現在の日本は非情非常に食のバラエティが豊かであり、日本にいながら他国の料理、調味料、食材を簡単に手に入れられる環境です。ですので、ご自宅にある保存食も多岐にわたり、個人の嗜好がかなり反映されていると思います。
それでも、あえてどれかを選ぶのだとしたら、日本であれば“米”です。理由は、米は日本の主食だからです。つまり、各種食品の開発にも当然影響しており、制作陣が意図しておらずとも、米に合うかどうかを考えて作られていると思われます。
さらに、日本人は“形を変えた米”に対しても抵抗が少ないです。ジャムなどの甘い保存食と組み合わせる時、米粒そのままのごはんでは抵抗を示しても、潰して餅状にしたごはんとジャムなら和菓子風として受け入れることもあります。
こういう状況を踏まえてみても、やはり日本では米が有利です。どの国でも主食として国民に認識されている食材は、その国において圧倒的に有利だと思います」
やはり日本の米は世界一。おかずのチョイスは無限大だからこそ、食べない手は無いのだ。
昨年の受賞例
昨年の第1回最優秀賞は、「冷蔵庫のアレンジでこんなに変わる!」だった。冷蔵庫の奥にしまった食材を見つけやすくすることで、消費期限が切れる前に食材を使う工夫や、家族の意識も高める効果などが評価されたようだ。
「コンテストのアイデア提案する上の心得」専門家に聞いてみた
コンテストでより評価されるためには何を意識すればよいのだろうか。おもいきって時光教授に聞いてみた。
――アイデア提案をする上で抑えておきたいポイントはありますか。
時光教授:「まず、食品ロス低減の『成果の見える化』と『目標設定』が重要です。食品ロスを簡単に把握する指標は難しいですが、廃棄食品量にこだわらず、食費でも、冷蔵庫の空きスペースでもよいでしょう。簡単に評価できる指標を提案していただきたいです。
あとは、家族とのつながりを強めて、楽しく継続して楽しめる食品ロス対策を提案してほしいです。家庭での食品ロス対策は、家族全員で取り組んでいただきたいです。そのため、家族で話し合っていただくことが重要です。家族メンバー対抗による残り食材活用レシピコンテストなどもよいかもしれません」
最優秀賞は表彰状の他、副賞として図書カード3万円が用意されている。優秀賞なら図書カード5千円で、特別賞なら図書カード3千円。狙ってみるのはありだろう。時光教授のポイントを抑えて、最強の食品ロス対策アイデアを提案してみてほしい。
(取材:モトタキ記者)
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