先週、ノルウェーの沖合に出ていた漁師が、1頭のシロイルカに遭遇した。そのシロイルカはとても人懐こく、自らボートに寄って来て、手を伸ばせば触れるほど近くを泳ぎ始めた。奇妙なことに、その胴体にはストラップのようなヒモが固く括り付けられていた。どうやらストラップを外してもらいたくて人を頼っているように見えたという。
View this post on Instagram Jørgen Ree Wiigさん(@wiiiig)がシェアした投稿 –2019年 5月月1日午前4時19分PDT
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通報を受けた沿岸警備隊と漁業総局、漁師たちによるシロイルカ救出作戦の結果、取り外されたストラップには「EQUIPMENT ST.PETERSBURG」(サンクトペテルブルクの装備品)と刻印されていて、GoProカメラのアタッチメントも見つかった。
イルカとストラップの写真を見たトロムソ大学の海洋生物学者らは、このシロイルカはロシア・ムルマンスクの海軍基地から逃げ出してきた可能性が高いと推測する。研究でイルカにGPSを装着することはあってもこのタイプのストラップを使うことはなく、連絡を取り合っているロシアの研究者たちも、このようなシロイルカが研究に使われている例は知らないということだった。
イルカやクジラ、アシカといった海洋哺乳類の軍事利用は、米軍では1959年に始まった。海軍では80頭のイルカと40頭のアシカをサンディエゴの海軍基地で訓練していたことが明らかになっていて、湾岸戦争とイラク戦争の時にはペルシャ湾の機雷発見に役立てられたとされる。その後、動物の権利運動の高まりと共に2012年に海洋哺乳類プログラムは廃止され、同様の任務を水中ドローンに代行させる試みが進められているが、「今のところロボットは動物にまったくかなわない」のだという。また、ソ連でも1960年代から知的海獣の軍事利用研究が始まり、現在も黒海沿岸の基地とムルマンスクの海洋生物学研究所で、機雷やダイバーを探知する目的でイルカやアザラシを訓練しているとの報告がある。
恐らく軍事基地から逃げ出し、ストラップを外されて完全な自由を得たこのシロイルカだが、今後、野生で生きていけるかどうかは分からないという。あまりにも人に慣れすぎていて、自力で餌を取る術を知らないように見えるからだ。解放されてもなお人に頼らないと生きられない野生動物を生み出すとは、なんと罪作りなことか。
画像とソース引用:『Instagram』及び『nrk.no』より
https://www.nrk.no/finnmark/hval-med-seletoy-observert-i-finnmark-1.14528765[リンク]
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