直木賞・本屋大賞受賞作家の三浦しをん先生の箱根駅伝を舞台にした名作青春小説『風が強く吹いている』がTVアニメ化。10月2日より日本テレビ他にて放送がスタート。
TVアニメ『ハイキュー!!』シリーズを大ヒットさせてきた東宝×Production I.Gという、期待しかない組み合わせの本作から、城 太郎(通称、ジョータ)、城 次郎(通称、ジョージ)の双子を演じる榎木淳弥さんと上村祐翔さんにインタビュー。
取材中も同時に喋りだしてしまうほど、息がピッタリの2人。収録現場の雰囲気からお互いの印象までたっぷりとお話を伺いました。
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双子のように息ぴったり!
――まず、作品の印象を教えてください。
榎木:タイトルは以前から知っていて、映画化されていたり、有名な原作なので、その作品に出られることになりとても嬉しかったです。いざアフレコが始まって台本を読んでみたら、1人1人に走る理由があって、その走ることを通じて自分に必要なものだったり、何が自分にとって大切なものなのかを見つけていく、成長ストーリーなんだなという印象を強く受けました。
上村:僕も台本を読んだときに、それぞれのバックグラウンドがきちんとあって、走ることを通して、1人1人が変化していく。その変化の過程も、いわゆるスポーツ青春ものというような感じではなく、大学生なりの悩みなどが描かれていて、人間ドラマとしての部分が大きいんだなという印象を受けました。なので、そこは繊細に演じていきたいな、と感じました。
――1人1人のバックグラウンドがしっかりあるということですが、どのキャラクターの背景に魅力を感じますか?
榎木:僕はキングですね。キングはちょうど就職活動真っ最中の時期なんです。僕も昔大学に通っていたとき、ちょうど就職活動をし始める時期に声優の職業を目指し始めたので、キングが感じるような、社会に対しての不安みたいなものが共感できます。就活しなければいけないキングにとって、駅伝は少し余計なものだと思うので。そんな彼が今後どう変化していくのかが楽しみです。
上村:僕はニコチャンとカケルが話している場面。ニコチャンのかつて選手として陸上をやってはいたけれど、自分はあまり向いていないんじゃないか、といった葛藤の部分は、カケルにどこかさり気なくアドバイスしていくような感じが出ていて。ハイジがいなかったときのサブリーダー的なところもあるので、ニコチャンとカケルの関係性が好きですね。あまり多くを語ることはないけれど、諭すような、自分の経験があるからこそ言えること、みたいな描写が素敵だなと思いました。
――ジョータとジョージは双子のキャラクターですが、演じる上で意識していることは?
榎木&上村:そうですねえ……。
――息ピッタリですね(笑)。
榎木:双子のキャラクターなので、自分1人で作るというよりは、上村くんがどう演じてくるのかをまずはしっかり見てから自分もそこに合わせて調整していこうかな、と第1話の収録のときから意識していました。
上村:僕としても榎木さんとは初共演でしたし、喋り方やニュアンスの部分でシンクロがあったらいいね、と音響監督の菊田さんからも言われていたので、本当に聴きながら「どういう言い回しをするのかな?」と調整をしながらやっていきました。今は本当に良い感じに双子らしさが出てきたと言っていただけているので、良かったなと思っております。
――お兄ちゃんと弟として意識する部分はありますか?
榎木:セリフ自体が兄と弟の関係になっているような気がします。少しジョータの方が落ち着いていて、ジョージの方がどちらかというとグイグイ前にでるような感じがしますね。
上村:僕と榎木さんの実際の年齢のバランスもあって、声質やお芝居の方向性は同じかもしれないんですけど、その積み重ねてきたものの差が良い具合に作品に投影されているんじゃないかなと思います。
注目は興津和幸演じるユキのアドリブ!?
――ジョータとジョージの魅力や演じていて面白い部分を教えてください。
榎木:やっぱり双子なので、同時に同じセリフを言うシーンがかなり多いんですけど、そこが本当の双子のようにバチッと息があってハマると気持ちいいので、それをオンエアで見るのがとても楽しみです。逆に揃いすぎて1人の人間に聞こえると言われて、それで録り直しになったことが何回かあって。
上村:あれすごいですよね。
榎木:どれだけ同じに聞こえたんだろう?って(笑)。
上村:あと、アドリブもかなりありますよね。
榎木:あるね~。
上村:当初の予定では、次のシーンは少しセリフをこぼすくらいだったのに、実際に現場に行くと、さらに「そのシーンいっぱいまで延ばしてください」などあるので、裏の部分でも一生懸命にぎやかしている、その空気感が伝わったらいいなと思います。先程、人間ドラマという話もしましたけど、それぞれの苦悩とか葛藤とかがある中でそれが良いスパイスになっているというか、そこでちょっとフフッと笑ってくれたら嬉しいですね。
――他のキャラクターもアドリブが多いんですか?
上村:けっこうありますね。
榎木:みんなでどんちゃん騒ぎをしているシーンがよく出てくるのですが、そこはなんとなく組み合わせみたいなものがあって。そのメンバーでアドリブをやってください、という指示があります。
――笑ってしまったアドリブは?
榎木:ユキは普段は割と理路整然とした発言で参謀というか、頭の良いキャラなんですけど、そういった騒いでいるシーンでは、ものすごく強烈なツッコミを入れるので、演じる興津和幸さんが全力で叫んでいて、普段のユキとのギャップが面白いです。ユキは普段からツッコミ役ではあるんですけど、その全力さが面白くて、つい笑ってしまいますね。
上村:興津さんすごいですよね(笑)。どんちゃん騒ぎをするような打ち上げみたいなことは双子の部屋でやっているんです。双子は1年生で未成年なんですけど、たまたまそのアドリブのときに、僕と興津さんが同じマイクに入ってアドリブをしていたので、なんとなく会話みたいな感じになって。少し酔いがまわったユキだと、ジョージに酒を強要してきたり(笑)。だから、「それはちょっと本当に無理です」みたいに、ジョージがまともに対応するっていう(笑)。
榎木:未成年がお酒飲んだらダメだからね、放送できなくなっちゃうから(笑)。
上村:お酒が入るとそういったギャップがあったりするので、アドリブは毎回楽しいです。
――では、メインではない裏のセリフも聴きどころですね。
榎木:どれだけ聴こえるか楽しみです。
子役出身者が多いアフレコ現場
――アフレコ現場の雰囲気を教えてください。
上村:自由ですね(笑)。
榎木:バラバラという感じではないんですけど、各々が好きなことを話して、そこにのっかっていってみたいな。
上村:すごく居心地の良い空間ですね。
榎木:すごく楽で居やすいです。
――盛り上げ役みたいな方はいらっしゃるんですか?
榎木:話題をよく提供してくれるのは入野自由さんとか、内山昂輝さんですかね。
上村:その2人がよくお話されていて、豊永利行さんがツッコミを入れる。
榎木:それで豊永さんがイジられる。
――あ~、もうその光景が目に浮かびますね。
上村:でも一体感はある感じですね。
榎木:チーム感はすごくあります。
――今回お二人は初共演ということですが、お互いの印象を教えていただけますか。
榎木:初共演なんですけど、上村くんのことは今すごく活躍されている若手の方と認識していたので。
上村:いやいやいや(笑)。
榎木:その上村くんと双子を演じるということで、どんな双子になるかすごく楽しみにしていきました。実際に上村くんはものすごくしっかりしていて、年齢にそぐわぬ落ち着きがあるので、それに負けないように毎回必死について行こうと思っている次第です(笑)。
――上村さんは子役からご活躍されていることもあって、とても落ち着いているイメージがあります。
榎木:でも、他の子役出身の方ともまた違う雰囲気をもっています。この作品はキャストに子役出身者が多いんですよ。入野さん、豊永さん、内山さんと、上村くん。
――たしかに、多いですね。
榎木:だけど前者3人とはまた違う雰囲気が上村くんはあって。その3人はもう収録現場が家みたいな感じなんですよ。
上村:すごい的確な表現ですね(笑)。
――どういうことですか(笑)!?
榎木:収録現場にいても本当にその3人はとてもリラックスしていて、良い意味でホーム感がすごいんです。すごく自然体というか。そんな中で上村くんは、真面目という言い方も変ですけど、自分の中で頑張るぞ!という気持ちを強く持っている人なのかな、と思います。だから、その3人に比べると、“収録現場が家”感はない(笑)。
上村:収録現場は家じゃないですからね(笑)。
榎木:だけどその3人からはすごく感じるんですよね。なんというか、百戦錬磨感?
上村:あ~、百戦錬磨感。なるほどね(笑)。
――良い感じにリラックスされて、まさに作中の寮の竹青荘にいるような感じなんですね。上村さんは榎木さんの印象は?
上村:僕はこれまで兄弟設定の役は演じたことはありますが、双子って初めてだったんです。しかも初共演の榎木さんで、榎木さんと僕は年齢は多少離れていて。双子役をやるなら同じくらいの年齢の方になるのかな、と思っていたので、どんな感じになるんだろう?というワクワク感と双子を演じる上での不安もありました。収録前に顔合わせがあって、そのときに少しお話させていただいたら、榎木さんはとても落ち着いていらっしゃって。僕も割りと落ち着いていると言われるタイプなので、そこの根底のところはもしかしたら一緒なのかもしれない、と感じました。
――一緒にアフレコをされていかがでしたか?
上村:第1話の収録にのぞんだときに、ジュータとジョージって「女子にモテたい!」と言っているのでチャラい感じなのかと思っていたんですけど、可愛らしい部分や真面目な部分も持っているキャラだということが垣間見えたので、そこが僕らと共通して最初の段階でガチッとハマって、すごくホッとしました。自分がやろうと思い切り出したものが榎木さんにも通じる部分があるのかもしれない、とその時点で可能性が見えたので、本当に榎木さんで良かったなと思いました。最初は不安でしたけど、今は不安はまったくなくて、もう信頼しかないです!
榎木:僕も同じ気持ちです(笑)!
上村:本当に今は1人の声に聞こえちゃうくらいで、「それだともったいないから」という理由でNGになったりして。双子で喋るところは場合によってはそこだけ別で録ることもあったんですけど、今となっては流れを大事にするということで、「2人で一緒に喋るところはもう空気感が合うと思うから大丈夫だよ」と音響監督さんと監督さんにも信頼していただいている双子になっています。それはやっぱりこのキャスティングが絶妙だったんだなと思うので、本当にありがとうございます。
榎木:こちらこそ、ありがとうございます。
上村:こちらこそ嬉しいです。
――似ているなと感じる部分はありますか?
上村:良い意味でそこまでガツガツはしていないですよね?
榎木:そうだね、一緒にいて和やかです。
上村:けっこうゆるい2人です(笑)。
榎木:あと、あんまり怒ったりしない?
上村:そうですね、あまり怒ることはないかもしれない。
榎木:僕もあまり怒ったりしないので、そういうところが似ているかもしれないですね。
――ジョータとジョージはちょっとはしゃいでいる2人なので、そこは少しタイプが違いますね。
上村:収録現場でジョータ、ジョージほどのはしゃぎ方はしていないですね。家じゃないですし(笑)。
榎木:あはは、そうだね(笑)。
2人の今繋ぎたいものとは?
――では、作品全体としての見どころを教えてください。
上村:陸上と駅伝がテーマになっている作品なので、けっこう息遣いにこだわって録っています。ついこの間の収録の際に、陸上の専門の方に来ていただいて、息遣いのレクチャーをしていただきました。あとは、キャラクターそれぞれの体力や能力値みたいな部分で息遣いを分けていたりもします。後半にかけて、よりチーム感が出て走ることに積極的になっていくんですけど、最初の段階は本当にまだバラバラな状態で始まっていくので、その初期設定の息遣いから今後どう変化していくのかも面白いところかなと思います。何より、第1話のカケルの走ってくるシーンは、それだけですごく惹き込まれるので、走りの部分に注目していただきたいです。
榎木:ほとんど上村くんと一緒なのですが(笑)。本当に息遣いや細かいところが、ものすごく臨場感があって惹き込まれます。他には、メンバーはみんな竹青荘という寮に住んでいてみんなで共同生活をしているんですが、そこを見ていると僕は大学生活を思い出すんです。僕は寮ではなかったんですけど、大学のときって友達の家に泊まって遊んだり、みんなで課題をやったりした思い出がすごく印象に残っていて。『風が強く吹いている』を見たときに、その学生時代を少し思い出しました。そんな懐かしい気持ちにもなったので、友人関係や共同生活の空気感など、学生生活も楽しめるようなアニメになっているんじゃないかなと思います。でも、一番は息遣いです!
――最後に、繋いでいくスポーツ「駅伝」にちなんで、2人が今繋ぎたいものを教えてください!
榎木:これを機に日テレさんたちとは仕事を繋げていきたいです。
上村:たしかに、貴重な機会ですよね。
榎木:みなさんとこれからも一緒にやっていきたいですね。ガジェット通信さんとも繋がっていきたいです。
――ありがとうございます! 実は以前、映画『スパイダーマン:ホームカミング』の吹き替えのときに、別の記者が榎木さんをインタビューさせていただいたんです!
榎木:そうですよね! ああ、たすきは繋がっているんですね!
――その時もとても反響があったので今後もよろしくお願いします! 上村さんは?
上村:先程お話した竹青荘のメンバーとの時間もそうですけど、この一瞬一瞬の出来事って本当に貴重な経験だなと思いますし、まずはすべてが完成できるように、それぞれの話数でちゃんとたすきを繋いでいきたいと思います!
――ありがとうございます! 楽しみにしています。
音一つ一つにこだわった作品になっているというTVアニメ『風が強く吹いている』は10月2日より日本テレビほかにて放送スタート。
TVアニメ『風が強く吹いている』作品概要
日本テレビ BS日テレほかで2018年10月放送スタート!
<STAFF>
原作:三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫刊)
監督:野村和也
シリーズ構成・脚本:喜安浩平
キャラクターデザイン:千葉崇洋
キーアニメーター:高橋英樹 向田 隆
音響監督:菊田浩巳
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:Production I.G
企画協力:新潮社
<CAST>
蔵原走:大塚剛央
清瀬灰二:豊永利行
杉山高志:内山昂輝
柏崎 茜:入野自由
城 太郎:榎木淳弥
城 次郎:上村祐翔
岩倉雪彦:興津和幸
ムサ・カマラ:株元英彰
坂口洋平:北沢 力
平田彰宏:星野貴紀 ほか
<公式サイト> kazetsuyo-anime.com[リンク]
(C)寛政大学陸上競技部後援会
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