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“乗りたい”と“乗せたい”をつなげる相乗りアプリ『CREW』への期待と課題 実際に利用してみて思ったこと



観光地として注目を集めているけど移動の手段が少ない。クルマを手放した高齢者が買い物や通院に利用できる交通手段がない。そんな交通インフラの問題を抱える地方中小都市を中心に今後さらに注目を集めそうなサービスが、“乗りたい”と“乗せたい”をつなぐモビリティプラットフォーム『CREW』だ。


同サービスを運営するAzitがメディア向けのサービス説明会を開催。8月に鹿児島県の与論島で実施した実証実験の結果も報告された。


『CREW』とは



2015年10月にローンチした『CREW』は、クルマに乗って移動したい“ライダー”と、マイカーに人を乗せたい“ドライバー”をアプリ上でマッチングする相乗りコミュニティサービス。ドライバーは事前の審査が必須の登録制で、対面での面接のほか、免許証・自動車保険・自賠責・車検証等の書類審査によってスクリーニングを徹底。安全性の担保に努めているという。後述する“謝礼”のモデルを採用することにより、法律で禁止されている白タク行為には当たらないとされている。



アプリを起動すると地図上に現在位置が表示されるので、乗車したい場所を選択。その際、近くにいるドライバーとお迎えまでの時間も表示される。




目的地と乗車人数を入力すると、あとは自動でドライバーとマッチングしてくれる。




お迎えを待つまでの間は、クルマの現在位置やドライバーのプロフィールを確認したり、アプリ上でドライバーとメッセージをやり取りしたりすることも可能だ。



待つこと5分、マッチングした女性ドライバー・Yuccaさんのクルマがやって来た。ベンツで来た!


謝礼は乗客が決める



『CREW』最大の特徴は、目的地に到着後、ライダーが任意で支払う“謝礼”のシステムを採用していること。自家用車を使った有償運送は道路運送法によって禁止されているが、Azit代表取締役の吉兼周優氏は、「事前に対価の支払い合意がなく、自発的な謝礼の支払いであれば有償にあたらないため、『CREW』はこの道路運送法の適用外となります」と説明している。法令の遵守にあたっては国土交通省と適宜やり取りをしながら、慎重にサービスの開発を進めているという。


ライダーはこのほか、ガソリン代や高速道路料金などの実費をドライバーに、手数料(20円/マッチ+20円/分)を『CREW』に支払う必要がある。支払方法はアカウント作成時に登録したクレジットカード決済のみとなっている。


実際に乗ってみた



筆者も上記でマッチングしたYuccaさんのクルマに乗車してみた。出発前にはアプリ上でシートベルトの着用が促される。



車内にはドリンクが用意されており、タクシーとは違ったホスピタリティを感じることができた。このあたりはドライバーごとに考え方が違う部分だろう。


Yuccaさんは、「もし都心部で災害が起きて公共交通機関がマヒしてしまった時に、何か自分が役に立てることはないか。『CREW』に登録しておけば、ドライバーとして何か社会貢献できるのではないか。『CREW』というサービスを介して乗車してもらえれば、お互いに安心して移動手段を提供できると思いました」と、『CREW』のドライバーになったきっかけを語ってくれた。普段は本業の仕事に就き、空いた時間に『CREW』のドライバーをしているという。「ライダーから“至福でした”、“また乗りたいです”といった言葉をもらう時が最もやりがいを感じる」そうだ。




車内では会話を楽しみながら、乗り心地バツグンの環境で快適に目的地までたどり着くことができた。降車の際にはドライバーを5段階で評価。ドライバーの印象や乗り心地をアプリ上で入力できる。




最後に謝礼の設定……なのだが、適正の価格が分からないため、「少ないと思われたらどうしよう……」という小心者マインドが働いてしまった。「距離によってまちまちですが、100円の方もいれば、タクシーよりも高い料金を支払う方もいます」(吉兼氏)というが、もちろんドライバー側から金額を提示するのはNG。チップ文化に不慣れな日本人は、ここで悩んでしまう人も少なくないはずだ。


“安く移動したい”という考えは当然だが、どちらかというとドライバーとのコミュニケーションをとりながら“楽しく移動したい”という考え方にマッチしたサービスなのかもしれない。ドライバー側も、もしかすると「稼ぎたい」の気持ちが先行しない方がよさそうだ。実際、収入目的よりも「クルマの運転が好き、人との交流が好き、というドライバーに多く登録いただいている」(吉兼氏)という。


地方中小都市の交通インフラとして期待



Azit は2018年8月1日~8月31日の期間、鹿児島県の与論島で『CREW』の実証実験を行った。


人口5250人、面積20.6kmの与論島は、毎年7万人の観光客が訪れる一方で、バス1路線、タクシーは島に8台という移動手段の不足が課題となっているそうだ。


『CREW』を利用したライダーからは、現地の人と交流できる機会となって良かったという声があった反面、ライダーとドライバーの双方からマッチングできるか不確定なので不安だったという声もあった。また現在はリアルタイムのマッチングのみとなっているが、事前の予約システムがあるとより便利になるという意見も。Azitは今後の検討課題として改善を目指すとしている。



「自家用車の事業に限らず、日本の交通手段を新たにアップデートし、日本ならではのモビリティの未来を形作っていきたい」「都市部と地方部、両方の交通課題を解決するサービスにしたい」(吉兼氏)という『CREW』だが、現在マッチングできるエリアが都内の山手線南半分からの乗車のみに限られていることや、近くにドライバーがいないケースもあるなど、現状は発展途上にあるサービスだ。登録しているドライバーの数は非公開としているが、まずは安定したドライバーの確保が急務となるだろう。


都心部はもちろん、移動手段が不足する地方や離島で交通インフラとして定着すれば、地域活性化につながっていくかもしれない。


『CREW』公式サイト:

https://crewcrew.jp/


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