合格したときや優勝した際によく行われる“胴上げ”。華やかでおめでたい感じがするが、胴上げをする意味を考えたことはあるだろうか?
素朴な疑問に答えるNHK新番組『チコちゃんに叱られる!』の4月13日放送で、胴上げの意味についてとりあげた。
胴上げをする理由は諸説あるが、一言で言うと「異常な状態の人をシラフにするため」。
國學院大學文学部・新谷尚紀教授は、「胴上げは本来おめでたいときにやるものではない」ときっぱりと言い放つ。民俗学的には、空中に物をなげるという行為は悪いものを取り払うためだという。
古来、日本の農家では、稲のモミなどの実を選別する際、モミをザルに入れて上下に振って選別していた。それは、空中に上げることで、中身があまり詰まっていない“悪い実”が風に流され、取り除かれるから。
そこから、日本では古来から“空中に物を上げると悪いものが取り払われる”という考えになった。そして、胴上げも悪いものを取り払うために行うようになったのだ。
それを裏付ける文献として、江戸時代後期の町の人々の様子を描いた東都歳時記(1838年)には、大みそかの大掃除のときに胴上げをしている様子が描かれている。
この時代、汚れは「悪いもの」と考えられていたため、“大掃除で汚れた人は1年の悪いものをすべて持った人”とされ、胴上げをすることで、すべての悪いものを取り払い新年を迎えようとしていたようだ。
その考え方を反映した行事がまだ全国には残っており、新潟県では厄落としのための「裸胴上げまつり」、福井県では「殿上まいり」などが行われている。
今はなんでお祝いごとに胴上げ?
では、なぜ元々悪いものを取り払うために行われていた胴上げが、良いことがあったときに行われるようになったのか?
新谷教授によると、昔は興奮した人は、通常の状態とは異なるので、“悪霊などに取り憑かれた異常な状態”と考えられていたという。そこで、良いことがあって興奮した状態の人から、悪いものを取り除いて通常の状態に戻すために胴上げをするようになった説を述べた。
実際に新潟県魚沼市では、「美しいお嫁さんをもらい興奮しているお婿さんを冷静に戻すため」という理由で、新婚男性を胴上げする行事「婿の胴上げ」が行われている。
新谷教授は、厄年や結婚した人を胴上げしていく中で、「お疲れ様」「おめでとう」など、お祝いの意味に変わっていたと思われる、と説明した。
昭和40年代に東京駅の新幹線のホームで、そして昭和50年代の成田空港でも、新婚旅行に行く前の新婚男性を胴上げする映像が残っている。
悪いものを取り払う意味の胴上げが、時代を経て「お祝い」の意味に変化していったようだ。
ちなみに、プロ野球で初めて胴上げが行われたのは、1950年セ・リーグで初代優勝チームとなった松竹ロビンズで選手が監督を胴上げしたのが最初と言われている。
現在では、たまに海外でも見られる胴上げシーン。日本の胴上げ文化がメディアを通じて広まったのでは?と言われているが、真意は定かではない。
NHK『チコちゃんに叱られる!』
毎週金曜午後7時57分/再放送 毎週土曜 午前8時15分
http://www4.nhk.or.jp/chikochan/
―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』