starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

『素敵なダイナマイトスキャンダル』で映画初出演! 菊地成孔インタビュー「尾野真千子さんが歌う主題歌が演技をする条件だった」



母親が不倫相手とダイナマイト心中したという、壮絶な過去を持つ雑誌編集者・末井昭氏の人生を映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』が3月17日より公開中。この末井さんの人生、心中事件のみならず、工場勤務からピンサロの看板作り、伝説のエロ雑誌創刊、幾度かの発禁を乗り越えるエピソードなど、「これ本当の話?!」と驚きの連続なんです。


本作の音楽、歌曲制作を担当し、なんと映画初出演を果たしたのが、ミュージシャンや文筆家として様々な分野で活躍する菊地成孔さん。監督、脚本を務めた冨永昌敬監督とは『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』以来3回目のタッグとなります。「冨永君はデビュー前に僕が通ってたジャズ喫茶の店員だった」など、作品作りの枠を超えた盟友エピソードにもご注目を。



――本作で映画初出演ということで、貴重な菊地さんのお姿を見させていただきました! まず、出演するに至ったきっかけを教えてください。


菊地:企画自体はすごく昔からあって。震災前とかじゃないかな。冨永君はいつもそうっちゃそうなのですが、今回の作品にはとりつかれた様な情熱を持って、断っても断ってもお願いしますって言ってきて。あんまり断り続けるのもこっちとしても気悪いし、本当にカメオ出演くらいの少ない時間だったらいいよって。実は初稿ではね、準主役っていうくらいの出番の多さだったんですよ。


――ええっ、そうなんですか?!


菊地:そうなんですよ。僕と荒木先生は、付き合いが長いんですよ。僕の本の表紙の撮影もしてくれているし、飲みに行ったりもしているし。まあ、作品ではどういう事情なのか、明確に<荒木経惟>役じゃなくて「荒木さん」って役柄になってるんだけど。「音楽はやるけど出るのは嫌だよ」ってずっと言い続けてたんですけど、あまりにもお願いしてくるから、このままだと刺し殺されるんじゃないかって思って(笑)、こちらからも「シーンを少なくすることと、原作者の末井さんと出演している女優さんが主題歌を歌うこと」を交換条件にして、もう、ほぼ嫌々ですね(笑)。


――尾野真千子さんと末井昭さんのデュエットですね。


菊地:撮影の前にあの話(『素敵なダイナマイトスキャンダル』)をやるんだったら、末井さんと末井さんのお母さん役の女優さんのデュエットをい実現させてくれ。そこは制作会社がクリアして欲しいとお願いして。まず、映画の原作者が映画の主題歌を歌うっていうのは、世界的にも珍しいと思って。北方謙三さんとかやっているかもしれないですけどね(笑)。末井さんのお母さんは心中しているので、もうこの世にはいませんけど、お母さんを演じた女優さんとのデュエットはね、実現出来て良かったです。



――そこまで監督がしつこくしつこく、菊地さんにオファーを出し続けた理由って何だと思いますか?


菊地:話が来たのは似てるからだと思います。僕も荒木先生も下町弁を喋るんですよね。自分のことを「アタシ」って言いますしね。声も甲高いし、早口だし。僕は千葉県の銚子出身なので東京では無いんですけど。後、身の丈も似ているんですよね。こんな事を役者じゃない自分が言うのも恥ずかしいんですけど、役作りを、荒木先生に寄せたほうがいいのか、本当にオリジナルのカメラマン役を演じたほうがいいのか、って迷いましたね。それに関しては、質問しても監督もプロデューサーもしどろもどろになるんですよね(笑)。


後は、僕のパブリックイメージで、たくさんの女性をラブホテルに連れ込んで裸の写真を撮ってるんじゃないかっていう。そんな事してないんですけどね、そういうイメージもあってお願いしますって感じで。


――映画の撮影は楽しめましたか?


菊地:全く楽しめないですね(笑)。待ち時間は長いし、慣れないことだから疲れるし。決まった言葉を喋りながら、決まった動きをするということをやったことないから。なので、デ・ニーロ・メソッドで体型を似せることしか出来ないので、末井さんにもソックリだって言われました。後は、カメラマン役でフィルムカメラを扱っていますから、12枚撮ったらカメラを交換しないといけない。喋りながら、動きながら、撮った枚数を数えてっていうのも難しかったですね。この映画って、銀杏BOYZの峯田さんも出てらっしゃいますけど、すごく達者で。そういうアーティストの方もいるんですよ。僕はつくづく役者って仕事は無理だな、と思いました。



――では、役者・菊地成孔が見れるのもこれが最初で最後になるかも、と。


菊地:そうですね。実はもう次が決まってるんですけどね。


――ええっ?! そうなんですか(笑)。


菊地:残念ながらそうなんですよ(笑)。一本出ると、どこからか噂を聞きつけた人が頼んできて。ピラニアっていうか。


――完成した映画をご覧になった時の率直な感想を教えてください。


菊地:映画は僕が出てるってだけで客観的には評価できないですよ(笑)。ただ、音楽はマジでいいんですよ。音楽はいいんですよ。主題歌はもちろん、劇中曲もかなり実験的な事をやっていまして、小田朋美さんとご一緒して、音楽作っている時は最高に楽しかったです。後、好きなシーンはたくさんあるんですよ。柄本佑さんの演技も素晴らしくて、出ずっぱりなのに柄本さんのシーンは全く飽きないし、世代ごとの末井さんを見事に演じているし。そして、前田敦子さんっていうのはやっぱりすごい女優さんですね。前田さんが一番エイジングが変わるじゃないですか。若々しい女の子から、年取ったおばさんまで。歌の才能も踊りの才能も、芝居の才能もあってすごなって思います。


そして、末井さんが作っていた雑誌『ウィークエンドスーパー』なんかは、冨永君は最近知ったんだろうけど、僕は直撃世代ですから。僕から見ると冨永君はにわかなんですよね。だから、主題歌も映画の企画が通った時点で、ほぼ完成していました。


――リアルタイムでご存知だったんですね。


菊地:買ってましたね。『写真時代』はガッツンガッツンに買っていました。80年代のサブカル・アングラカルチャーとしか言いようの無い雑誌で。ああいうビニ本とかね、失われた日本の文化ですよね。末井さんは以前僕の本の書評を書いてくださったこともあるし、対談もしたことがあるし、末井さんはジャズもお好きなので交流はありました。


――荒木経惟さんもそうですけど、人と人とのつながりが素晴らしいですね。ちなみに冨永監督の交流も長いと思うのですが、最初のきっかけはどんな事だったんですか?


菊地:彼は僕が良くいっていた「い〜ぐる」ってジャズ喫茶のバイトだったんですよ。僕は上智大学のジャズ研だったんですけど、帰りにい〜ぐるは上智大出てすぐの場所にあって、冨永君はそこでコーヒー淹れてたんです。冨永君もジャズが好きで、僕のこともマークしていて、言ってみればファンだったみたいなんですよね。


その後に、冨永君がデビューするきっかけになった「水戸短編映画祭」というのがあって。僕の友達の女の子の作品が同映画祭に出品されていて、池袋で上映されるというので、行ってみたら、グランプリ作品が冨永君だったんです。そうしたらその映像を観て、これはすごいぞと衝撃を受けまして。ロビーでジュース飲んでたら、冨永君がやってきて「菊地さんですよね?」って。「僕、あの最後の作品の監督なんです。菊地さんのファンでい〜ぐるでバイトしてました」って言われて。それで、「すごいね、君才能あるね」って話になって。まあその才能も今ではすっかり枯渇してますけどね(笑)。そんな事がきっかけで『パビリオン山椒魚』(2006)の音楽を担当することになったんです。


――そんな偶然だったんですね。末井さんはもちろん、冨永監督も菊地さんも素敵な出会いをお持ちだなあと思いました。今日は楽しいお話どうもありがとうございました!



『素敵なダイナマイトスキャンダル』現在公開中!

http://dynamitemovie.jp/



(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会


―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.